表記標題の初出は「探蕎」会報第24号(平成15年11月29日発行)で、「敬蔵」へ出かけたのは平成15年(2003)11月12日で、この日は開店して6ヵ月と21日目にあたる。 「晋亮の呟き」に転載する。
「敬蔵」が休業日の11月12日の水曜日に、通常の営業日の営業時間帯である「午前11時半~午後2時半と午後5時半~午後8時のお好きな時間に、新そばを差し上げますので御来店下さい」との案内状を頂いた。案内状一葉でお二人様までとあって、家内や2,3の人に声をかけたが、小生の空いている昼時は都合が悪いとかで、結果として独りで出かけることになった。
当日の献立は、「新そばの相盛り」と「旬の盛合わせ」、お目当ての越前丸岡産のそばの方は、細打ちは、抜き実の30メッシュ篩いの粉、太打ちは、玄蕎麦を同様に挽いて篩った粉による、いずれも生粉打ち、新そばは打ちやすいとかで、細打ちは極細とまではいかないが、いつもよりかなり細めの仕上がりであった。選択は「相盛り」と「大盛り」のみ、私は「相盛り」を選んだ。
信楽焼きの大皿に、仄かに淡い緑色をした細打ちの堆い盛りと田舎そばの盛りとの相盛り。そして、同じ焼きの角皿に、和紙に載せた可愛い新そばの蕎麦掻きの天麩羅2個と一摘まみの天塩添え、笹の葉を敷いた蕎麦豆腐のみそ漬け3切れの蕎麦芽添え、銀杏のそばつゆ炊き2粒2連、それに地物秋摘みの春菊の胡麻和えの4品盛り合わせ。
そばつゆの薬味は、辛味大根の下ろし、葱の小口薄切りと下ろし生山葵。丸岡産の在来種の玄蕎麦は小粒であり、その磨かれたものを仕入れたとか。また抜き実の方は、甘皮の淡緑色が眩しい位、若干早めに収穫したものだろう。新そばの細打ちは、味・香りとも申し分がない。また細めとあって喉越しも良い。つゆはなくてもよいくらいだ。太打ちの方は、しっかりと噛んで味わえ、これが田舎そばだという感じだ。私はこの田舎そばの太打ちだと、いつも「おろしそば」として食するが、それは正解のようだ。蕎麦猪口に浸して食べるより、冷えた片口に入った冷たいつゆに、辛味大根の下ろしと葱の薄切りを薬味に加えて、三具足の鉢に入った太打ちの田舎そばにぶっかけて食べるのが似つかわしい。
終りに蕎麦湯が出たが、敬蔵の蕎麦湯は蕎麦粉を溶いたもので、かなり濃いものだ。これは人により好き好きだが、私はそばの茹で湯の方が好きだ。もっともこれにもそれなりの良さはあるのだが。
呆気なく、相盛りは私の胃の腑に納まってしまった。客が次々と訪れる。主人との会話の中で、今度の日曜日、丸岡の蕎麦生産者の処へ行くと話した。それにしても今回の細打ちは、これまでで最も良かったように思う。「ご馳走さま」と礼を言って外へ出る。帰り際に「祝儀はどうしましょう」と言ったら、笑っていた。玄関に入る時はなかったようだったが、入口には「今日はお休みです、案内状お持ちの方のみお入り下さい」との張り紙がしてあった。
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