2011年8月23日火曜日

濃霧・雨・風で再び石徹白への下りを断念

 別山からさらに南へ延びる美濃禅定道(南縦走路)は一部を除いてまだ走破したことがなく、今年はどうしても踏破したいと願っていた。急いでいるのは一つは年齢の壁であり、年々体力とバランス感覚の衰えが進行しているように思えるからである。幸い宮川さんという一回りも若い助っ人を得、かつ前田さんの協力もあり、何とか成就できないかと願っている。今年の最初のチャレンジは7月18日、これは16・17日の土日は満員で宿泊できなかったからで、実は後の祭りになるのだが、今から思えば18日を15日にしておけば、台風6号の影響も受けずに、成就できたのではと思っている。それが判断ミスで18日としたものだから、台風の影響をもろに受けてしまった。天気予報では北陸への影響は20日以降とのことだったが、高山では2日前からも大きな影響が出ていた。こうして初回のチャレンジは特に風の影響でもって不首尾に終わった。
 次いで計画したのが8月7~9日の日~火、結果的にこの期間は天気が安定していて申し分なかったのだが、石徹白はこの週全村挙げての体験ツアー受け入れがあり、宿泊は全く駄目とかで断念せざるを得なかった。お盆は空いているとは言われても、こちらも旧盆でいろいろ都合があり、リベンジは盆明けの土~月の8月20~22日を予定し、協力していただけるお二方の了解も得た。
 当日4時半に家を出立、家内運転で1時間程で市ノ瀬へ、5時20分発のシャトルバスで別当出合へ、天気は曇り、でもガスで視界は悪い。天気図では、日本列島に停滞している秋雨前線が幾分北寄りだったのが南下したため、北陸も大きく影響を受けることになった。でも少々の悪化ならばリベンジには特に大きな障害とはならない。6時10分前に歩き出す。高度が上がるにつれガスは濃くなり、甚之助小屋辺りではもうミルキーホワイト、何にも見えない状態だった。ところが更に高度が上がると、このガス帯を抜け、別山の山並みがくっきりと見えるようになり、眼下にはミルキーホワイトの雲の層が広がっている状況に。しかし空には厚い高層雲があり、陽の光はない。
 南竜山荘には8時過ぎに着く。何時もだと受付は午後からなのだが、山荘へはもう入れますとのことで、部屋に荷を置き御前峰へ向かうことに。今日は120名の宿泊とか、やはり土曜はほぼ満員のようだ。主任の方に聞くと、予報では午後には雨になるとか、昼食と雨具を持って出かける。出掛けに小母さんと話していると、植生されたコマクサを除去する話が持ち上がっているとか、どんどん繁殖するオオバコと同一視されては叶わないのだが。小母さんは植生した御仁も知っていた。また雷鳥の居場所は御前でなく大汝だという話を聞いたとか。私は御前のような気がするが、でもそれは単なる勘でしかない。小母さんは上馬さんに聞いて見ないととも言う。彼は雷鳥をビデオ撮りした当人だが、彼は現在県の白山自然保護センターの次長でもあり、彼は話すことはないだろう。ひとしきり話をして室堂へと向かう。トンビ岩コースを辿る。この前通ったときはこのコースにはかなりの残雪があったが、もう雪は全くない。雪が溶けるのが遅かった斜面には、コイワカガミやアオノツガザクラが丁度満開、ピンクとホワイトグリーンの絨毯を形成している。御前坂の上部ではもうベニバナイチゴが赤い熟れた実をつけている。ミヤマリンドウも青紫の花を咲かせている。
 室堂前の広場で食事をする。何時もは登山者で一杯になる広場も、この日は半分程度の入り、旧盆が済んでピークが過ぎた印象を受ける。雨がポツリときた。ガスも少しだがかかり始めた。雨具を着け頂上へ向かう。今室堂平はハクサンフウロとイブキトラノオ、オンタデが丁度花盛り、特に濃いピンクのハクサンフウロは圧巻だ。頂上への径で、60ℓのピンクのザックカバーを付けた人が前を歩いている。こちらはほとんど空身、なのに中々追いつけない。とうとう頂上まで追いつけなかった。頂上でご対面したら小柄な女の子、これからどちらへと聞いたら南竜のテン場とか、その荷物を持ってまた下りるのですかと言うと、これはザックカバーだけなのですと、道理で追いつけなかったわけだ。ガスも次第に濃くなってきた。
 予定どうり展望コースを下る。ガスで視界は全く利かず、ただ黙々と下るのみ。展望台からの下りで、子供を含めた中年男性の一団、室堂泊まりとか、お天気が好ければ素晴らしい展望が開けるが、この雨とガスでは余りお勧めできるコースではない。雨も次第に強くなる。4時間半余りの周遊、濡れたものを乾燥室で乾かす。一段落し、これから食堂で、この前のように一杯しようと思ったら、大勢の人数の弁当作りとかで2時には食堂はシャットアウトになり、部屋飲みになる。5時に夕食、気温の低下もあって、ビールでなく熱燗にする。ガスは次第に濃くなる。別棟ではギターのコンサートとか。お陰で8時消灯が8時半に、この間食堂でテレビを見ながらの飲み、主任と副とバイトの学生5人、お酒と焼酎をお相伴になる。話の中で主任はまだ独身とか、お客の8割方は女性というのに、勿論ペアあり、中高年ありだが、若い山ガールも結構多いというのに。アルバイトは古くは女子短大生だったが、ここ10年ばかりは金沢工大のスキー部員だとか。山荘に常駐は5人、バイトは土曜の午前に来て、日曜の午後に帰るパターン、速い人は山荘から中飯場まで下り30分とか、驚くべきタフさだ。そう言えば、新しい甚之助小屋の建設にあたって、あそこの現場主任は、中飯場から長靴履きで毎日30分で通う野々市の人だった。
 コンサートは終わり、飲みも終了。窓には明かりを求めて沢山の白い翅の蛾が、主任では明日は雨は大したことはないと言う。雨になる日はこの蛾は来ないと言う。でもガスはますます濃くなったようだ。隣の小舎がもう見え難い。
 夜中に起きてベランダに出ると、ガスは濃く、ホワイトアウトとまでは濃くはないものの、それに近い状態、小雨が降っている。風も混じってきて、時々ヒューという息が聞こえてくる。今日の夕方の雨とガス程度なら決行しようと、夕食後、前田さんにも、石徹白の民宿「おしたに」へも、家内へもその旨伝えたところだが、こう視界が悪いと、別山越えは難しいかも知れないと思うようになる。でもこんな状態の中、3時にペアが、3時半には6人のパーティーが出発していった、昨晩おしたにさんには別山まではよく通い慣れた径ですのでとは言ったのだが、こうも状態が悪いと断念しなければならないのではと思い直した。予定では5時の出立だが、もう1時間だけ様子を見ることにする。もう1晩泊まって様子をみようかとも思ったが、昨晩の気象衛星画像を見ると、前線の雲が日本列島をすっぽり覆っているようで、明日快方に向かうという保証はない。濃いガスと小雨、それに風も出てきて、終に断念することにした。6時に民宿「おしたに」へ電話、やはり無理でしょうとのことだった。家内にもその旨伝える。前田さんには明日のことなので、市ノ瀬へ下りてから宮川さんに伝言してもらうことにする。ほとんどの方が市ノ瀬へ下るようだ。私たちも7時に山荘を出た。
 南竜分岐から標高が下がるにつれて、ガスの濃さは段々薄れてきたが、雨粒は大きくなり、本降りの様相になる。甚之助小屋に着くまでは余り上りの人とは会っていない。小屋では数人がシュラフに包まっていた。新しい小屋は実に快適、トイレもきれいで気持ちが良い。しかし小屋を過ぎた辺りから、この雨の中、続々と沢山の登山者が、そしてその8割近くが女性、妙齢の若い方も多い。何が彼女らを駆り立てるのか。天候が少しでも快方に向かうことを願わずにはおれない。40人近くの団体も2パーティー。上る人をやり過ごしたり、またお喋りもしたりで、ゆっくりと下る。以前だと旧盆を過ぎると登山者はぐっと少なくなったものだが、これもブームだからなのだろうか。私たちが2時間10分もかかって別当出合に着いてからも、登山者がシャトルバスで上がってくる。下ではガスは薄れているが、まだ雨は間断なく降っている。
 シャトルバスは9時半に市ノ瀬へ、金沢駅行きのバスは、8月20日を過ぎると午後1時30分1本のみに、時間があるので、永井旅館の日本の秘湯にでも浸って疲れを癒すことに。この温泉は掛け流し、食塩・炭酸泉、源泉は48℃だが、掛け流しの方は加温なしなので、気温によって湯温が異なりますという断り書きがしてある。一方大きな浴槽は加温循環式なので熱い。我々がトップ、ゆっくり温泉に浸れた。旧の本館にあった浴槽は小さかったが、新館の浴槽は明るくてきれいで気持ちが良い。上がってお決まりのビール、まだバス出発まで2時間以上、カップラーメンで腹ごしらえをする。この頃から続々と入浴客が、女性も多い。浴場は芋の子を洗うが如き状態だろう。助っ人の宮川さんからは、昨晩に引き続いて山の話をいろいろ聞く。年に50日も山へ行っているとか、近場の山も、また積雪期にも、でも写真での記録はあるものの、それ以外の記録は極めて少ないのは勿体ない。私はどんな小さな山行でも記録を取るが、彼は一切しないようだ。また文章にも残していない。聞くと実に素晴らしい山行もあり、写真のみでなく、ほんの印象だけでも書き記すように勧めたのだが。でも写真は玄人はだしの作品もあるようで、コンテストに出さないかと言われているとか、本人も意欲はあるようだ。
 別当出合を13:30に出た金沢駅行きバスは満員、市ノ瀬を10分遅れで出発した。このバスには生まれて初めての乗車。びっくりしたのは白峰車庫で5分間のトイレ休憩、その後白峰の街中の旧道を経由し、何故か尾口瀬女の道の駅へ立ち寄り、鶴来でも街中の旧道に入り鶴来駅へ、それから鶴来街道を野々市へ。金沢駅への急行バスとあったが、とんだ寄り道だらけの急行バスだった。
 こうして石徹白へのリベンジはまたも敗退となった。

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