2010年3月16日火曜日

平成22年春一の探蕎は越中へ

 2月の探蕎会総会での久保さんからの平成22年前半の行動計画と3月の事務局からの行事出欠案内とで、前半の行事日程と行き先が決まった。3月は14日(日)に越中の「達磨」へ、4月は18日(日)に丹波篠山の「ろあん松田」へ長駆日帰り、5月は29日(土)30日(日)に信州の何処かへ探蕎、6月は恒例の会員そば打ちを湯涌みどりの里でということになった。なお、これまで毎年春と秋に出かけていた海道さんの丸岡蕎麦道場へは、昨年秋の蕎麦不作もあり、春は割愛することに、事務局の案内では、これからは秋のみにということになりそうだ。お世話して頂いた新鮮な春山菜、タラやコシアブラやシャクなどが懐かしい。file:///Users/kimuranobuaki/Desktop/IMG_0885.JPG
 前半初の探蕎は富山市の「達磨」、以前は別の場所(今の場所とは比較的近い根塚町小松割)にあって、二度ばかりお邪魔したことがある。前は親父さん?がいて、出されたそばをすぐに食べないとのびてしまうと言われ、びびった記憶がある。明るい感じの店だったが、何か気を配って食べないといけないという印象が強かった。かなり前のことで、一度は波田野先生の教室の方達と出かけたように思う。久保さんが推奨される「達磨」は以前の古い店とは違っていて、私も移ったとは聞いていたものの、迂路聞きで、富山駅の北側という印象だったが間違っていた。
 車4台に分乗、一行は18人、富山ICを下りて国道41号線を富山駅の方へ北上し、掛尾町交差点を左折、少し進み黒瀬交差点を右折、二本目の小路を左折して土川沿いの道に出ると、左に見えてくる。入り口はコンクリートで囲ってあり、川の土手に上がって見下ろすと一軒家だ。入り口に紅梅が咲いている。店の前には丁度4台が駐車可能。久保さんでは、本来11時30分からの営業だけれども、11時20分には開けますとのこと、でも暫くの待ちがあるので、天気もよく、堤防をぶらつく。石黒さんがカンゾウがあるとか、新田さんが確認すると、ほかに摘む人もいる。ノカンゾウだ。
 程なく店が開いて中へ、玄関は狭いが瀟洒、板張り、明るく感じがよい。入って右手に外が見通せるカウンターがあり4人掛け、フロアには5人掛けのテーブルが2脚、奥の小上がりには4人掛けの座机が2脚、相席だと22人入って満席となる。二人での切り盛り、これでは人数が多い時は、注文を出してから品が届くまでに時として時間が掛かりそうだ。注文は私達のテーブルが最も早かった。その時はもう1軒、できたら東岩瀬へ行く算段をしていたものだから、お酒(〆張鶴純米吟醸のみ)と季節の天ぷらともりそばを所望した。皆さんもいろいろ注文されている。お酒は私と新田さん、お酒のお盆にはそばみそが、粒は未熟な緑色、味噌の色も味も濃くなく淡くて爽やか、小振りでこんなのは初めてだ。お酒がすすむ。次いでもりそば、最後に天ぷらが、蕎麦前と思っていたが、こうも立て込んでいては文句は言うまい。お客が次から次と訪れるが、何せ満員、暫く待つか諦めるか、大挙押し寄せて申し訳ない気持ちだ。そばは「もり」と「田舎」の二種で、すべて自家製粉で手打ち。中細でしっかりコシがあり、高橋さんのお弟子とあって勿論二八、喉越しがよい。それにしてもそばの量がやや多いのが嬉しい。田舎を新田さんから少しお裾分けで頂いたが、こちらの方が香りもあり、美味しい。同席の寺田会長は鴨南せいろ、副会長の久保さんは田舎にぜんざい、松川さんは天せいろ、新田さんは田舎と天ぷら、清算は個々人、だからお店の方は注文を聴くのも清算も大変だ。
 ここ富山達磨は富山では久保さん推奨の店、師匠高橋邦弘さんの達磨グループの店舗だが、その高橋さんをして、前の店を「本家より前に達磨を名乗った店」と言わしめたそうだ。しかし「そば」もさることながら、店の雰囲気も、若い主人の山崎利春さんの感じも中々好く、また一度ゆっくり出かけたいものだ。
 [おしながき] ●冷たいそば:もり、田舎、おろし、とろろ、鴨せいろ、天せいろ など
 ●温かいそば:かけ、鴨南ばん、天ぷらそば など
 ●一品:そばがき、ぜんざい、天ぷら盛合わせ、季節の天ぷら など
 [住 所] 〒939-8216  富山市黒瀬北町1ー8-8  電話076-492-3989
 [営業時間] 午前11時30分~午後3時 
 [定休日] 毎週月曜日(祝日の場合は翌日)

 [後時談] 達磨を出た後、東岩瀬へ出かけたものの、小塩さん推奨の「利賀ごっつぉ館」が森家土蔵で利賀そばを提供するということだったが、既に昨年閉めていて、今は予約制のレストランになっていた。また丹生庵は品切れで、この日の探蕎は本命だけで終いとなった。

2010年3月5日金曜日

探蕎会総会での寺田会長の講演「水・三題」 その3

[3] 資源としての水
1.淡水の存在割合
 地球上に存在する水の総量は、算定する人によって若干の出入りはあるが、資料の数字に従えば、総量は約13.9億立方kmということになる。このうち海洋の水(海水)が占める割合は97.2%、13.51億立方kmである。したがって全体から海水を引いた陸水の割合は2.8%、3900万立方kmとなる。陸水のうち、氷床、氷河、氷山等の氷に貯えられた水は全体の2.15%に当たる3000万立方kmで、陸水の76.9%を占める。陸水で次に多いのは地下水で0.62%の862万立方kmで、陸水の22.1%を占める。このうち伏流水のように浅い部分にある地下水が半分の0.31%の431立方km、地下の深部に貯えられた地下水も0.31%の431立方kmで、以上で陸水の99.0%となる。
 残り1.0%を占めるのは、淡水湖・池が全体の0.01%の140千立方kmで陸水の0.36%、次いで塩水湖で全体の0.008%の110千立方kmで陸水の0.29%、次は土壌水(地下水面より上にある土壌の水)で全体の0.005%の70千立方kmで陸水の0.18%、そして大気中に貯えられた水(水蒸気)が全体の0.001%の14千立方kmで陸水の0.04%、最後は河川水で全体の0.0001%の1.4千立方kmで陸水の0.004%である。
 以上のうち、人が直接利用できるのは浅い地下水の伏流水、淡水湖の水と河川水で、総量の0.32%にしか過ぎない。ここでいう淡水とは、塩分濃度が0.05%未満の水を指す。なお汽水は0.05~3.5%、塩水とは5.0%超を指す。

2.日本の水資源 賦存量と年間使用量
 国土交通省土地・水資源局水資源部は、毎年水の日(8月1日)に合わせて、年次報告書「日本の水資源」を取りまとめている。ここでは平成21年版から日本の水資源について概観する。以下の数字には報告書の数字を用いた。したがって資料の数字とは若干差異がある。
 地球上に存在する水の量はおよそ14億立方kmといわれている。そのうちの約97.47%は海水等であり、淡水は2.53%である。この淡水の大部分(1.76%)は南・北極の氷や氷河として存在しており、地下水や河川・湖沼の水として存在する淡水の量は、地球上の水の約0.77%で、そのうちの0.76%は地下水で、人が利用できる淡水の量は地球上に存在する水のわずか約0.01%、約10万立方kmでしかない(この数字は2003年資料を基に水資源部が作成したもので、この数字には南極大陸の地下水は含まれていない)。
 日本は世界でも有数の多雨地帯である。モンスーンアジアの東端に位置し、年平均降水量は1690mm(昭和51年~平成17年の平均)で、世界の年平均降水量(約810mm)の約2倍となっている。しかしこれに国土面積(378千平方km)を乗じ、全人口(1278百万人)で除した一人当たり年降水量でみると、日本は約5000立方mとなり、世界の約16400立方mの3分の1程度となっている。
 日本での昭和51年(1976)から平成17年(2005)の30年間の水資源賦存量(水資源として、理論上人が最大限利用可能な量であって、年間降水量から蒸発総量を引いたものに当該地域の面積を乗じて求めた値)の平均水資源賦存量は約4100億立方kmである。また10年に一度程度の割合で発生する少雨時の渇水年水資源賦存量は約2700億立方kmで、平年の67%となっている。
 [算定の基礎となった数字:日本の国土面積=前出、年間平均降雨・水量=前出、日本の年間総降雨・水量=6400億立方km,年間蒸発量=609mm、年間総蒸発量=2300億立方km、平水年水資源賦存量=前出]
 一人当たりの水資源賦存量を海外と比較すると、世界平均である約8400立方m/人・年に対して日本は約3200立方m/人・年と2分の1以下である。また日本の地形は急峻で、河川の流路延長が短く、しかも降雨が梅雨期や台風期に集中するため、水資源賦存量のかなりの部分が洪水となり、水資源として利用されないまま海へ流出する。
 水資源賦存量4100億トン/年のうち、平成18年(2006)に人が利用した水資源使用量は、水資源賦存量の約20%に相当する831億トンで、うち河川水が727億トン、地下水が104億トンで、約80%は洪水などで海に流出したり、地下水として貯えられたりしている。用途別にみると、農業用水547億トン(河川水514+地下水33)、工業用水127億トン(90+37)、生活用水157億トン(123+34)となっている。

3.バーチャル水(仮想水・間接水)
 バーチャル水とは、食料の輸入国(消費国)において、もしその輸入食料を生産するとしたら、どの程度の水が必要かを推定したもので、ロンドン大学名誉教授のアンソニー・アラン氏が初めて紹介した概念である。そして農産物・畜産物の生産に要した水の量を農産物・畜産物の輸出入に伴って売買されていると捉えたものである。東京大学の沖大幹は、同じ産品を輸入国側で生産した時に必要な水の量を「間接水」、輸出国側で実際に投入された水を「直接水」としていて、これは農産物の場合には気候等の条件によって水の所要量が異なるため、一致するとは限らないからである。
(1)食品を生産するのに必要なバーチャル水の量
 農作物のバーチャル水は、主に灌漑で使った水で、天水(雨水)は同じ量を使っても影響はほとんどない。また降雨の豊富な地方で生産すれば、バーチャル水は少なくなる。畜産物はとりわけ使用する飼料により大きく変わり、穀物飼料を用いる場合は非常に高くなる。牛肉は牛の飼育期間が長いこと、飼料に穀物を使うことから高い数値となる。食品1トンを生産するのに必要なバーチャル水の量(トン)は、穀物の米3300、小麦2000、大麦1900、トウモロコシ1900、豆類の大豆2500、畜産物の牛肉20700、豚肉5900、鶏肉4500、鶏卵3200(1個当たり190ℓ)である。
(2)日本のバーチャル水輸入
 輸入品目別内訳をみると、多い順に牛肉45.3%、小麦18.6%、大豆16.0%、トウモロコシ12.4%、豚肉4.3%、その他3.4%となっている。
 輸入国の内訳と量(億トン/年)は、アメリカ 389、オーストラリア 89、カナダ 49、ブラジルとアルゼンチン 25、中国 22、デンマーク 14、タイ 13、南アフリカ 3、その他 36で、総輸入量は640億トン/年である。
 この数字は2000年のデータを基に算出されたものだが、2005年には約800億トンともいわれ、この数字は日本国内で使用される年間水資源使用量に匹敵するもので、自国で使用する水により生産される分と同じ量の食料を輸入していることになる。

2010年3月2日火曜日

探蕎会総会での寺田会長の講演「水・三題」その2

[2] 美味しい水とは
1.美味しい水
 おいしい水とは何か。観念的には雨水や雪解け水が地中深くに浸透して、長い歳月をかけて湧き水として地表に現れてくると、その間に地中のいろんなミネラルを溶かし込み、その土地その地域に独特な味わいを持つ美味しい水が生まれることになると思う。また谷川の表流水であっても、その水源が単なる雨水や雪解け水でなく湧水であれば、やはり美味しい水と言えよう。いわゆる各地の名水とはそういう類のものだと思う。
 ところで美味しい水には共通した科学的条件があるのだろうか。寺田先生は「美味しい水研究会」がまとめた資料を基に、おいしい水の水質条件について話された。資料から転記しよう。
 水をおいしくする要素としての水質項目としては、「蒸発残留物」「硬度」「遊離炭酸」が、水の味を損なう要素としての水質項目としては、「COD」「臭気度」「残留塩素」「水温」が挙げられる。
 (1)蒸発残留物(ミネラル分):主にミネラルの含有量を示し、量が多いと苦味、渋味等が増し、適度に含まれると、こくのある、まろやかな味となる。おいしい水の要件は30~200mg/lである。
 (2)硬度(カルシウム・マグネシウム):今日本で使われている硬度の表示は、ミネラルの中では量的に多いカルシウム塩とマグネシウム塩の濃度を炭酸カルシウムの量に換算したものである。一般に硬度100未満の軟水はミネラル分が少なく淡白でくせがなく、こくがない味で、日本の水に多い。また硬度100以上の硬水はミネラル分が多く、硬くてしつこい味がするとされ、ヨーロッパの水に多い。またマグネシウムが多いと苦味が増す。おいしい水の要件は10~100mg/lで、これは軟水に該当する。
 (3)遊離炭酸(二酸化炭素):炭酸ガスが含有すると水に爽やかな味を与えるが、多いと刺激が強くなる一方で、少ないと気の抜けた味になる。おいしい水の要件は3~30mg/l。
 (4)COD(化学的酸素要求量):水中に含まれる有機物を過マンガン酸カリウムで酸化する際に消費される量を酸素量に換算したもので、BOD(生物化学的酸素要求量)とともに有機物汚濁の指標となる。多いことは汚染がひどいことを示し、水の味も不味い。また多いと塩素消費量も多くなり、水の味を損なう。おいしい水の要件は3mg/l以下。
 (5)臭気度:微量でも感じる有機物の臭いや、原水を汚染していた藻類の臭いなどの強度を示す。数値が大きいと味を悪くするだけでなく、成分によっては健康を害する。おいしい水の要件は臭気度3以下。
 (6)残留塩素:水源の水質が悪いと、塩素の投入量が増える。水にカルキ臭を与え、水の味を不味くする。おいしい水の要件は0.4mg/l以下。
 (7)水温:適温は10~15℃で、これは体温より20~25℃低い温度である。水は冷たい方が美味しく感じられる。また低いと発臭物質の揮散が減る。おいしい水の要件は20℃以下。
 (8)その他:鉄イオンやマンガンイオンが含まれると水が不味くなる。水道法に基づく基準では、鉄及びその化合物は0.3mg/l以下、マンガン及びその化合物は0.05m,g/l以下となっている。
2.水の硬度
 資料の「世界の水の硬度範囲」の表示では、軟水は硬度180未満、硬水は180以上350未満、きわめて硬水は350以上となっている。そして日本の水は概ね200以下、アメリカの水は50~350、中国の水は200~600、ヨーロッパの水は100~700に分布する。
 また資料の「世界の水ー硬度スペクトル」では、10~50未満を「軟」、50~100未満を「やや軟」、100~200未満を「やや硬」、200~1000を「硬」としている。
 表で「軟」に該当するのは、都市では日本の仙台、神戸、京都の水、米国のニューヨーク、豪州のメルボルン、シドニー、欧州のマドリッド、エディンバラの水、湖沼ではネス湖(硬度10)や琵琶湖の水、河川では信濃川、鴨川、利根川、ハドソン川、アマゾン川の水、ミネラルウォーター類では南アルプスの天然水など。
 「やや軟」には、都市では日本の大阪、東京、北欧のヘルシンキ、北米のホノルル、サンフランシスコ、ロスアンゼルス、ヒューストンの水、河川ではミシシッピー川、セントローレンス川、欧州のロアール川、アフリカの青ナイル川の水、ミネラルウォーター類ではフランスのボルビック、日本の六甲のおいしい水、神戸ウォーターなど。
 「やや硬」には、都市では北米のワシントン、シカゴ、セントルイス、トロント、豪州のブリスベン、北欧のストックホルム、東欧のブカレスト、エジプトのカイロ、インドのニューデリーの水、湖沼ではレマン湖、河川では中国の長江、黄河、アフリカのナイル川、欧州のライン川、ドナウ川、セーヌ川の水、伏流水では灘の宮水など。
 「硬」には、都市では中国の北京、欧州のアムステルダム、コペンハーゲン、パリ、ロンドン、グラナダ、ミラノ、ソレント、マジョルカ、ミュンヘン、米国のラスベガスの水、河川では米国のコロラド川、中東のヨルダン川の水、ミネラルウォーター類ではフランスのエビアン、ベリエ、ヴィッテルなどが該当する。
 ちなみにWHOの基準では、軟水は0~60未満、中程度の硬水(中硬水)は60~120未満、硬水は120~180未満、非常な硬水は180以上となっている。
 日本酒の仕込み水に軟水を用いると、甘口で口当たりがやわらかな酒ができ、伏見の御香水などがそうである。一方硬水を仕込み水に使うと、辛口ですっきりした酒に仕上がる。灘の宮水などがそうである。またビールの仕込では、一般に淡色ビールには軟水を、黒ビールには硬水を用いるという。
3.農水省品質表示ガイドラインによる容器入り飲料水の分類
 現在市販されているペットボトル入りミネラルウォーター類は、地下水などのうち飲用適の水を容器に詰めたもので、ガイドラインでは次の3種に分けられる。
 ①ナチュラルウォーター:特定の水源から採った地下水(深井戸など)を、沈殿、ろ過、加熱殺菌以外の物理的・化学的処理を行わずにボトリングした水で、ミネラル含有量の規定はない。
 ②ナチュラルミネラルウォーター:前記①のうち、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム等のミネラルが溶け込んだ地下水、すなわち鉱化された地下水(地表から浸透し、地下を移動中または地下に滞留中に地層中の無機塩類を溶解した地下水で、天然の二酸化炭素が溶解し、発泡性を有する地下水も含む)を原水としたもの。
 ③ミネラルウォーター:②を原水とし、品質を安定させる目的などのため、ミネラル調整、ばっ気、紫外線・オゾン殺菌のほか、複数の水源から採水された②の混合などが行われているもの。
 ④ボトルドウォーター・飲用水:原水が地下水でない(前記①~③以外の)飲用可能な水で、飲用水の基準を満たしている水道水、河川水、純水、蒸留水などで、ミネラル含有量表示の規定はない。
4.生活排水による水質汚濁
 水の汚れの最大の原因は、台所、風呂、洗濯、洗面、掃除雑用等から排出される「生活雑排水」である。この資料に記載されている「生活排水」とは、「生活雑排水」と「し尿排水(水洗)」を併せたものである。まずBODについてみる。BODとは、水中の有機物などの量を、その酸化分解のために微生物が必要とする酸素の量で表したもので、特定の物質を示すものではない。通常mg/lで表示される。一般にBODの値が大きいほど、その水質は悪い。
 「生活雑排水」Aと「し尿排水(水洗)」Bの別に、BODについてみてみると、原単位=負荷量(g/人・日)は、Aが27、Bが13、1人1日の汚水量は、Aが150ℓ、Bが50ℓで、水質=濃度は、Aが180mg/l、Bが260mg/lとなる。生活雑排水とし尿排水との水質汚濁負荷の比は約2:1で、生活雑排水での比は、台所4:風呂2:洗濯1である。合計した負荷量は1人1日当たり40g、汚水量は1人1日当たり200ℓで、平均した濃度は200mg/lとなる。このように平均化した濃度を他の項目についてみると、COD(化学的酸素要求量)は90mg/l、SS(浮遊物質)は175mg/l、T-N(総窒素)は36.5mg/l、T-P(総リン)は4mg/l、MBAS(メチレンブルー活性物質:水中の陰イオン界面活性剤濃度)は13mg/lとなる。
 私達は平均して毎日台所から1人当たりBODで180mg/l濃度の雑排水を100ℓ 流しているが、その元凶が調理廃液である。中でも高いのは古い食油でBODの値は1,400,000~1,670,ooomg/lと非常に高い。ほかにも、おでんの煮汁が74,000~95,000、味噌汁が37,000、ラーメンの汁が24,000~26,000、スパゲッティのゆで汁が5,400、米のとぎ汁が2,400~3,000、うどん・そばのゆで汁が1,030である。同様に台所からは1日1人当たり495mg/lのT-N、114mg/lのT-Pを排出している。T-Nで高いのはおでんの煮汁の4,200mg/l、台所用洗剤の3,200、古い食油の1,400、ラーメンの汁の1,100~1,180、米のとぎ汁は29と少ない。T-Pでは古い食油が30~3,000mg/l、おでんの煮汁970、ラーメンの汁280、米のとぎ汁は7.8と低い。
 同様なことを各種食品でみてみると、BOD(mg/l)で高いものとしてはマヨネーズ1,290,000、ドレッシング660,000、ソース240,000、醤油220,000、日本酒188,000~200,000、ウィスキー160,000、ワイン150,000、缶コーヒー116,000などである。T-N(mg/l)で高いのは醤油25,000、牛乳4,900、マヨネーズ4,400、缶コーヒー2,400、ドレッシング1,500、ソース1,200など、T-P(mg/l)で高いのは醤油3,900、牛乳1,340、マヨネーズ870である。