2014年11月8日土曜日

小谷温泉の山田旅館と蕎麦屋の蛍(その2)

 翌朝早くに別館の露天風呂に行く。見ると下の道路には沢山の車が上がって来る。きっと雨飾山 (1936m) か大渚山 (1566m) へ登るのだろう。今日も良く晴れていて素晴らしい登山日和だ。食事は7時だったので、終わってもう一度露天風呂へ行く。するとこの時間になっても、次から次へと車が上がって来る。こんなに沢山の車を停められる駐車場が山奥にあるのだろうかと訝る。部屋へ戻って家内に露天風呂は私一人だったと言うと、一緒に入れば良かったとのこと、家内では、女性の露天風呂は眺めが悪くて趣きがなく、ある女性は大胆にも男性の露天風呂に挑戦したとか。簾で周りを囲まれていれば情緒がないというものだ。
 9時にチェックアウトする時に、女将さんにあんなに沢山の車は何処へ行くのかと訊くと、山もさることながら、4km ばかり先に鎌池という池があって、そこも人気のあるスポットとのこと、そこでその池に行ってみることに。この鎌池林道は舗装されていて実に快適、標高が上がると山々は錦繍に包まれていて、実に素晴らしい光景になった。本当に来た甲斐があったというものだ。さらに進んで鎌池へ、ここの標高は 1180m、ここには広い駐車場があって、沢山の人が来ていた。池の周りを巡る径があり、一周した。雨飾山が、ある場所では大渚山が、湖面にその姿を映していた。ただ池の周りの木々は大方落葉していて、径は落ち葉で埋もれていた。一周した後、湖畔にある鎌池ブナ林亭で小憩した。
 林道に戻り、途中から雨飾高原キャンプ場に向かう。ここは雨飾山の南側からの登山口になっているが、駐車場から溢れた車が途中の路肩に延々と駐車している。百名山になってからというもの、登山者が急増したとのことだが、好天と紅葉がこれに拍車をかけている。

蕎麦屋 蛍   長野県北安曇郡小谷村中土真木 16588
 蛍の開店時間は 11 時 30 分(後で知ったが、土日は 11 時頃)、それに間に合うように林道を取って返す。場所は前日に案内板があって確認しておいた。下手と上手から入る径があり、山下りだったので上手の方から入る。車1台しか通れない径を約 100m 行くと蛍はあった。場所は大渚山の南麓、数軒ある部落の中でも頑丈な総二階の建物、それが蛍だった。ここを知ったのは男の隠れ家という雑誌での紹介からで、それによると、主人の宇田川光平さんは、小学生の時に山村留学したこの地に惹かれて脱サラで移住したとか。折よく手にした築 130 年程の古民家を改修しての開業、でもこの地は冬は2m を超す豪雪地帯、だから営業は4月下旬から 11 月中旬である。
 着いたのは 11 時 10 分、空き地にはもう数台の車が停まっている。玄関に入ると、妙齢の女性が相席でもいいですかと言われ、構いませんと言うと、既に2人座っている座机に案内された。フロアは板敷き、囲炉裏が2つあり、自在鈎に鉄鍋が吊るされている。入って右手のガラス張りの向こうには、竈に焼べられた薪が赤々と燃え、鎌にはお湯がたぎり、手前には山からの清水が溢れ流れ出ていて、主人の姿が見える。店内はアルコールランプの明かりのみ、机にもランプが、こんな店は稀有だ。見渡すと 26 席ある席がすべて埋まっているではないか。第1陣のラストが私たち、間一髪での滑り込みだった。見ると外には沢山の人が待っている。
 注文はお品書きに大きく書かれていた「蛍の緑」と「深里 (ふるさと)」を注文する。訊くと、前者は丸抜きを細かく挽いたもの、後者は挽きぐるみで粗く挽いたものとかで、いずれも二八。十割もある。同席した糸魚川の女性は、よく此処へ来ると話していた。見てると十割を注文する人がかなり多い。それと囲炉裏に吊り下げられている鍋には、大きなこんにゃく玉が入っていて、これも人気の一品のようだ。私たちはほかに季節の天ぷらを頼んだ。全員に行き渡ってから最後に私たちにも配られた。二八の両方を食べ比べると、後者の方が香りも歯ごたえも良かった。そばつゆはさほど辛くはないが、だしが強い。天ぷらの材料は、つまじろ、紫蘇葉、葱、牛蒡、蓮根、茄子、甘藷、隼人瓜、南瓜、人参の十種、天つゆと塩で頂く。お酒は大町市の北安醸造の「小谷錦」がお勧めとか。
 12 時 20 分に蛍を辞した。外にはまだ大勢の人が待っていた。貰った名刺には、5月は残雪の新緑が綺麗です。蛍の見頃は7月の2〜3週目です。山の紅葉の見頃は 10 月2〜3週目位です。谷の紅葉はお店の前で 10 月4週目〜 11 月1週目です、とあった。また出かけたい蕎麦屋だ。この次には十割もこんにゃく玉も、そして小谷杜氏が醸した小谷錦で、山の残雪や新緑、蛍、紅葉を愛でて、山菜をあてに一献やりたいものだ。

小谷温泉の山田旅館と蕎麦屋の蛍(その1)

 国道 148 号線にある道の駅「白馬」では、春から秋にかけて、屋外で山野草の販売をする店が出る。2店あって、片や中年の男性が、もう一方は年配の女性が仕切っている。私たちはここに寄る度に顔を出し、特に小母さんの店からはよく山野草を買っている。もう5年位にもなるので、顔見知りになってしまった。9月半ばにここへ寄った折も、黄金シダなる羊歯を買い求めた。その時の話の中で、今年の秋は強い風も吹かず、小谷 (おたり) 温泉辺りの紅葉はきっと見事だろうから一度行かれたらとのこと、この方は秋も深まって店を閉めてからは、決まってこの小谷温泉の山田旅館に暫く滞在してのんびり過ごすとか。この言葉に啓発されて、帰って早速調べると、山田旅館は日本秘湯を守る会の会員で、百年を経た旧家のような宿とあった。早速旅館へ電話すると、土日と休日は空きがなく、金土も空いているのは2週のみ、それで家内が午後半日休める 24 日 (金) と 25 日 (土) に出かけることにした。天気は2日とも上々のようだ。
 10 月 24 日の午後1時半に家を出る。山側環状道路を経由し、森本 IC で高速道に入り、糸魚川 IC で下りる。ここまで2時間、次いで国道 148 号線を南下する。所々で工事があり、交互通行がある。道の駅「小谷」を過ぎ、長い外沢トンネル、次いで短い平倉トンネルを抜けると、小谷温泉口という見落とし易い交差点があり、ここを左折する。すぐにある山住トンネルを抜けると、後は中谷川に沿って上流へ、交差点から約 10km、20分で小谷温泉の山田旅館に着いた。時間は午後4時半、家から3時間を要した。ここ小谷温泉には4軒の宿があるが、ここが最も古く、かつ収容人員も 150 名と最も大きい。

小谷温泉 大湯元 山田旅館   長野県北安曇郡小谷村中土 18836
 この宿は、上信越高原国立公園の標高 850m の大渚山の山腹に建っていて、この温泉は弘治元年 (1555) に川中島合戦の折に、武田信玄の家臣により発見されたとか、以来 450 年以上にわたって湯治宿として親しまれてきたという。江戸期に建てられた本館を含む6棟は、国の登録有形文化財に指定されている。また新館は大正3年 (1914)、別館は平成元年 (1989) の建築だという。またここの元湯の源泉は「現夢 (うつつ) の湯」と呼ばれ、明治時代には、ドイツで開催された萬国霊泉博覧会に日本を代表する4大温泉の一つとして内務省特選で出泉されたとある。素晴らしい名泉である。なお泉質は自然湧出のナトリウム炭酸水素塩泉 (重曹泉) だそうである。 
 本館から入って靴を脱ぐと、すぐに番号札が、後で判ったがこれは部屋番号だった。すぐに部屋へ案内される。部屋は別館の4人部屋、ゆったりしている。夕食は5時半からとのことで、先ずは別館の展望・露天風呂へ行く。湯温は 43℃、ゆっくり入っておれる。風呂からは取り巻く山々と山腹を巻くように付けられた道路が見え、路線バスの走っているのが見える。ところで木々の葉はまだ残っているのに、紅葉はそんなに綺麗ではない。後で家内が女将さんに聞いた話では、今年は虫が大発生して紅葉の色が冴えないとかだった。少々残念である。
 5時半になり、案内があって大広間へ、宿泊客全員が入れるような畳敷きの部屋、沢山の机に人数分の会席料理、十品以上ある。この時期地物は少なく、僅かに養殖や栽培と思われる岩魚やコゴミや草餅や蕎麦が。あとの魚や野菜や茸や加工品はすべて仕入れた品らしい。でも見た目には大変豪華で、刺身にしても大変新鮮だった。でも考えてみれば、糸魚川まで1時間も要さないのだから、当然かも知れない。お酒は大町の北安醸造の「白馬紫雲」を頂いた。この酒は淡い紫色をしていて珍しかった。酒はほかに「小谷錦」と「雨飾山」があった。
 部屋へ戻って寛ぎ、寝る前に本館の元湯へ出かける。元湯は内湯のみだが、源泉かけ流しの打たせ湯がある。高さ2m 強の高さからお湯がどうどうと流れ落ちている。その湯が湯船に導かれ溢れている。水量も多く、両肩にずしりとした重みを感ずる。源泉の温度は 47℃、加水加温はなく、43℃の程よい湯温、加えてラドンを含有しているとかで、効能豊かな療養泉となっている。ちなみに先に入った別館 (健康館) の新湯の源泉は、泉質は同じながら、別の泉源だという。
 部屋へ戻って床に入り明かりを見上げると、カメムシが4匹戯れていた。明かりを消すと下へ落ちてくるのではと思い、明かりを点けたまま寝た。金沢奥の「銭がめ」を思い出した。

2014年11月6日木曜日

シンリョウのツブヤキ(11) 10月の花

10月に家の庭 (露地) で花が咲いた木々と草花を記した。植物名は50音順に記した。
植物名は、種名・別名 (科名 属名)の順に記した。
植物名の後に(4〜)とあるのは、その数字の月に初出したもので、科名属名は省略した。
植物名の後の〔外〕は、外国原産で安土桃山時代以降に日本に渡来した帰化植物であることを示す。
また〔栽〕は、外国原産で明治以降に観賞用などで日本に移入された園芸栽培種であることを示す。

1.木 本
 キンモクセイ(4〜)

 以上 1種 (1科 1属)

2.草 本
 アキチョウジ(シソ科 ヤマハッカ属) アキノキリンソウ(9〜) アキノノゲシ(9〜)
 アメリカセンダングサ・セイタカウコギ〔外〕(9〜) イトススキ(8〜)
 イヌコウジュ(9〜) イノコズチ・ヒカゲイノコズチ(8〜) ウリクサ(8〜)
 オオイヌタデ(タデ科 タデ属) オトコエシ(9〜) オヒシバ(7〜) カタバミ(4〜)
 カヤツリグサ・マスクサ(9〜) キチジョウソウ(ユリ科 キチジョウソウ属)
 クワクサ(9〜) ゲンノショウコ・ミコシグサ(8〜) コナスビ(5〜)
 コニシキソウ〔外〕(9〜) シソ(9〜) スカシタゴボウ(6〜) スミレ(4〜)
 セイタカアワダチソウ・セイタカアキノキリンソウ(キク科 アキノキリンソウ属)
 チヂミザサ(9〜) ツユクサ(9〜) ニシノホンモンジスゲ(8〜) ハルタデ(5〜)
 ヒガンバナ・マンジュシャゲ(9〜) ヒメツルソバ・カンイタドリ〔外〕(4〜)
 ボントクタデ(9〜) マルバルコウ(6〜) ミズヒキ(6〜) ヤブガラシ(6〜)
 ヤブミョウガ(7〜) ヨウシュヤマゴボウ〔外〕(6〜) ヨモギ(9〜)

 以上 35種 (20科 30属)