2013年9月30日月曜日

白川義員の「永遠の日本〕に見る日本の原風景〔14〕

(承前)
8.12 雲仙天草国立公園/天草諸島
 (92)天草・龍仙島落日:この国立公園で、雲仙は長崎県、天草は熊本県に属している。天草は大きく上島と下島とに分けられ、写真になる被写体は圧倒的に下島に多く、下島でも西海岸と南端に集中している。この写真は下島南端の牛深の南西 8km の沖にある龍仙島を、牛深から先に延びている岬の突端まで行って望遠レンズで撮ったものである。日本で落日を撮ると、スモッグが邪魔をして、輝く夕日を撮るのは中々難しい。(93)天草・砂月海岸:下島の南端では、小さな岬が南西と南東に延びていて、岬に囲まれた奥にこの砂月海岸がある。青い海と空を分ける水平線が一直線で、波打ち際の白い波も一直線、見渡す限り人一人いない不思議な風景であった。(94)天草・大ヶ瀬夕景:下島の西海岸を走る国道 389 号線は別名サンセット・ラインと呼ばれて、夕日を満喫できる名所が続く。我々は海岸線まで下りて、大ヶ瀬の岩と落日を組み合わせて撮った。(95)天草・茂串海岸:ここも下島の西南端にある。写真の左方には白い砂浜の海水浴場があり、かつてNHKのロケ地になったことがあって、その記念碑が立っている。自然破壊である。

8.13 日南海岸国定公園/青島
 (96)青島の日の出:宮崎県の青島は国の特別天然記念物に指定されている。周囲たった 1.5km、海抜 6m の小さな島の海岸が「鬼の洗濯板」といわれていて、岩が板状に数百メートルも規則正しく北東から南西に延びている。岩の板と朝日を撮った。(97)青島・浸食された岩:硬さの違う砂岩と泥岩が重なった岩盤がこの辺り一帯を覆っていて、それが長い年月の間に浸食され、柔らかい層が洗い流され、独特な波状岩が形成された。干潮時には沖合に 100m も現れる。(98)青島・鬼の洗濯板:青島の地元では「鬼の洗濯岩」と呼んでいたが、今の名前に統一した。いずれにしても、岩石の柔らかい層が波に浸食されて今日の姿になった。(99)青島・岩面の造形:柔らかい岩層が、長い年月の間に波に浸食されて、硬い岩だけが残ったとしても、その岩膚を見ると、とても繊細な模様なのに驚く。
 
8.14 霧島錦江湾国立公園/薩摩半島
 (100)開聞岳朝陽:薩摩半島の南端に南九州市があり、その海岸に番所鼻自然公園がある。ここの海岸に出ると、この風景に出くわす。右に見える端正な三角形の山が標高 924m の開聞岳である。(101)長崎鼻の岩礁:薩摩半島の最南端の突端にあるのが長崎鼻で、ここから眺める開聞岳が最高と言われている。それでその反対側を見ると、この岩礁がある。この方も見事で、日の出直後に撮影した。昼間は観光客が多くて撮影は大変である。

8.15 屋久島国立公園/屋久島
 (102)屋久島・原海岸の夜明け:屋久島の東南に原という集落があり、その海岸にある原漁港の朝焼け。有名な千尋の滝はこの漁港の北にある。この日の朝焼けは物凄いと形容していい程だった。(103)屋久島・いなか浜:屋久島の北東部に「いなか浜」という海水浴場がある。撮影したのは8月だったが、海水浴客は一人もいなくて、砂浜は足跡一つなく風紋まであって、何とも不思議な素晴らしい風景であった。(104)屋久島・船行川河口:屋久島の東面に安房という大きな町がある。その北方を流れているのが船行川で、その河口にある岩礁である。赤っぽい岩が硬く、黄色い岩が柔らかく、波浪の浸食で削られつつある。(105)屋久島・永田浜:屋久島北西の「いなか浜」の南にあるのがこの「永田浜」である。この辺りは「前浜砂丘」や「千本松原〕やこの永田浜など、素晴らしい風景が続く海岸である。眺めが美しい岳之川の河口である。(106)屋久島・平野海岸の日の出:屋久島東面の安房の南 3km   にこの平野海岸がある。岩礁が多くて眺めのいい海岸である。そこから撮影した日の出の太陽。早朝であるのに、スモッグで太陽が輝かないのが残念である。

8.16 西表石垣国立公園/石垣島・西表島
 (107)石垣島・暁の白保海岸:八重山諸島の石垣島の東岸に白保海岸がある。この辺りは九州や本州と違って、スモッグがほとんどないせいか、日の出でも日没でも、太陽そのものがカッと輝いて真っ白に飛んで、太陽の輪郭が見えなくなる。だからこの写真のように、まだ薄明の空を撮っても、中天は真っ黒で星が煌煌と輝いているが、東の空は、地平線のオレンジ色から赤・紫・青、そして中天の黒まで、色彩の差を肉眼ではっきり克明に識別できるのである。画面上部の星は金星、右方上下に3つ並んでいるのがオリオン座の三つ星、その左方に光っているのがペテルギウス等々、多くの星が夜明けの空を彩って輝いている。(108)白保海岸とモンパの木:モンパ (紋羽 ) の木は熱帯から亜熱帯の海岸に生える低木で、別名「浜紫の木」ともいわれる。白保海岸の所々にこのモンパの木が自生していて、南国らしい情緒溢れる風景を醸し出している。(109)石垣島・ダテフ崎夕暮れ:石垣島北部西岸のダテフ崎での落日の光景である。夕陽は強烈で白く調子が飛ぶから、水平線に雲が湧いて漸く絵になった。(110):石垣島・米原海岸:石垣島の北面に米原海中公園がある。その海岸には白い砂浜と青い海、そして手前の砂浜には朝顔のような花が一面に咲いていて、珍しい風景に出会った。コントラストが素晴らしい。(111)石垣島・平久保崎:石垣島最北端の岬が平久保岬、その突端からの風景。上部の細長い濃い青の所が外洋、すぐ手前の薄茶色の所がサンゴ礁で、風が強い日にはこのリーフに打ち寄せた波が白く舞う。日本離れした広大な風景である。(112)石垣島・底地海岸の落日:石垣島の北西部に崎枝湾がある。その北部にあるのがこの底地海岸。かつては沖縄は米軍に占領されていたから、地図にはスクジ・ビーチと表記されている。ここはビーチであるから砂浜で海水浴場と思われるが、撮影時の7月末は暑い盛りであるにもかかわらず、人が一人も居なかった。写真をみて咄嗟に日の出と思うだろうが、これが沖縄の日没である。それ程スモッグがなく空気が透き通っている。(113)西表島・南風見田 (はえみた) 浜:西表島南部に島を周回する県道 215 号線の終点から 4km 先の岩礁の中に、浸食された特異な形をした岩がある。(115)南風見田浜の岩礁:2km 続く砂浜の一部の 40m-50m の範囲に、波浪で浸食されて独自の造形をした岩が点在している。人知の及ばない造形である。(115)西表島・浦内川河口:西表島の南東から北西の端まで流れる島で最も長い川が浦内川で、その河口とマングローブの林である。海との接点の水の中に森林が出来ている。南国らしい我々には珍しい風景である。(116)石垣島・名蔵湿地:石垣島の西面に大きな名蔵湾がある。そこに流れ込んでいる名蔵川の河口が広大な湿地帯を形成し、網張 (あんばる ) と呼ばれ、野鳥の飛来地として有名である。この湿地帯に密生するマングローブの林、ここの木々は支根が少ない。(117)永遠の日本の旭日:石垣島の東面、白保海中公園にある白保海岸から日の出の太陽を撮った。太陽の輝きが強烈で、輪郭が判らないほど真っ白にならないよう、露出を5分の1に切りつめた。写真集の最後を飾る写真は、大概夕日か月で締めくくるが、今回は敢えて日の出の太陽にした。明日の日本にはまた燦然とした輝く太陽が昇る。
 私は、日本人よ自然に帰ろう、と呼びかけている。人間如何に生きるべきかを自然と対話しながら考えてほしいと願っている。それがこの『永遠の日本』を制作した目的の総てでもある。

2013年9月28日土曜日

白川義員の「永遠の日本」に見る日本の原風景〔13〕

(承前)
8−8 吉野熊野国立公園/熊野灘
 (59)橋杭岩暁天:和歌山県串本町にあり、大小約 40 本の岩峰が 850m にわたって突っ立っている。橋脚のようだから橋杭岩と名が付いた。岩には総て名が付けられている。左から平岩、チョンギリ岩 (ボウズ岩) 、背の高いのが大オガミ岩、細いのが小オガミ岩、右端がビシャコ岩である。(60)橋杭岩朝光:太陽が右端の平岩と中央の蛭子岩の間から昇る。左へ折岩、コボレ岩。(61)橋杭岩薄明:夜明け前でまだ水平線がやっと黄色くなった頃である。中央がチョンギリ岩、右が大オガミ岩、左端がハサミ岩。(62)橋杭岩の午後:潮が引いた橋杭岩を少し北方から撮った。岩が散乱しているのが見え、これは宝永地震によるとされる。中央がチョンギリ岩、左端がハサミ岩、右へ大オガミ岩、小オガミ岩、右端がビシャコ岩。(64)ハサミ岩と太陽:ハサミ岩の3つの岩峰のうち、他の2峰より低い左の峰の上に太陽が来るようにセットした。(63)紀の松島・ラクダ岩:和歌山県那智勝浦町にある大小 130 余りの島々が、日本三景の松島に匹敵する意から「紀の松島」と呼ぶ。その中の1島がラクダ島である。(65)熊野灘・獅子岩:三重県熊野市の熊野灘に面した白砂青松の「七里御浜」にあるう。海に向かって獅子が吠えているような奇岩で、海から吹き付ける海風蝕によって造られたものだが、上顎の鋭さと下顎に生えた草のコントラストが正に絶妙である。(66)熊野灘・海金剛:三重県の熊野市と尾鷲市の境の海岸の二木湾の入口にある。柱状節理が高さ80m、600m にわたって続く。

8−9 山陰海岸国立公園/香住海岸・鳥取砂丘・浦富海岸
 (67)山陰香住海岸・鎧の袖:国立公園の中央部、兵庫県の日本海に面して香住 (かすみ) 海岸がある。「鎧の袖」は柱状節理の断崖で、高さ 65m、幅 200m、傾斜角度 70° の海蝕崖である。香住海岸には他にも鷹ノ巣岩、釣鐘洞門、小白岩、鉄砲島など写真になる被写体が多い。(68)鳥取砂丘:国立公園の西端に位置する東西 16km、南北 2.4km、最大起伏 47m の日本三大砂丘の一つである。中国山地の花崗岩が風化し、それが千代川によって海に運ばれ、海岸に集まったものが砂丘になったといわれる。撮影は人の足跡のない風紋が美しい風景を狙って何度か出掛けたが、もう日の出直後には百人以上もの人が歩いていた。画面に見える凹凸はすべて人の足跡だが、これ程密集すると自然の造形に見えなくもない。(69)砂丘と虹:砂丘と日本海に現れた二重の虹を咄嗟に撮った。(70)鳥取砂丘と日本海:砂丘の頂上をずっと東に辿って行くと、一部だが足跡のない自然があった。正に手つかずの新鮮な砂丘と日本海である。(71)城原海岸・菜種島:鳥取砂丘の北東部に山陰海岸国立公園を代表する景観の地の浦富海岸がある。城原海岸はその主要な一部である。波に浸食された島が連なっていて菜種五島と呼ばれ、その先端にあるのが写真上部の菜種島である。高さ 60m、周囲約 400m、春になると島全体が野生の菜の花で黄金色になる。

8−10 大山隠岐国立公園/隠岐諸島
 隠岐諸島:島根半島の北方約 50km の洋上にあり、最大の島の島後 (どうご) と中ノ島・西ノ島・知夫里島の3島からなる島前 (どうぜん) の2地域4島で構成される。但し小さい島々は 180 個もあるといわれる。(72)隠岐島前・知夫里島赤壁:知夫里島の南西にある名所の赤壁。絶壁の幾つかの岩層が真っ赤であることから赤壁という。(73)島前・中ノ島屏風岩:中ノ島の北東端の海岸が明星海岸で、海水浴場やキャンプ場がある。そこを西の突き当たりまで進むと、右側に赤い岩峰が屹立している。これが屏風岩で、海蝕で削られたハートの形が人気だそうである。(74)島前・三郎岩の日の出:中ノ島の北端の宇受賀 (うずか) から撮った。太陽の下の山は西ノ島の北端で、手前の海から屹立しているのが三郎岩である。(75)島後・ローソク岩の落日:島後の北西に海から 50m 突き出した奇岩があり、これがローソク岩である。夕日がこの岩塔の頂上に落ちるとローソクに灯がともったように見えることからこの名が付いた。これを見るのに夕方福浦港から観光船が出るが、操船が上手でないと見られない。(76)島前・観音岩日没:西ノ島の西端に有名な国賀海岸があり、ここも浸食を受けた奇岩や奇景が連なる。この観音岩もその一つで、海側から見ると百済観音の姿に似ているという。これは陸側から観音岩の頂上に落日を組み合わせて撮ったものである。(77)島後・浄土ヶ浦の朝:島後の東北にあり、この辺りは隠岐諸島随一の多島海といわれ、数百の島や岩礁がある。東に突き出した崎山岬の北側が浄土ヶ浦で、隠岐諸島を代表する景勝の地とされる。早朝日の出直後、逆光線でこの風景を見ていると、「さながら浄土のごとし」の意味が納得させられる。(78)島後・塩の浜夕日照る:島後の西南端にある「塩の浜」は夕日の美しい海岸として知られている。夕日を撮った。(79)島前・国賀海岸:隠岐諸島で最も有名な景観がこの国賀海岸ではないかと思う。これは赤尾の展望台から撮ったものである。右端の穴の開いた岩が通天橋、手前の入江が国賀浦である。(80)島後・那久岬:島後の西海岸で最も西に突き出した岬の、波浪で浸食された岩塔や岩礁を上空から撮った。ここは夕日を眺める名所でもある。(81)島後・帆掛島と洞門:島後の北端に白島崎が突き出ている。その先にある白島や沖の島が有名だが、その手前にあるのが帆掛島。波浪に洗われた岩礁と洞門、それに木々の緑が素晴らしい対比である。白島崎展望台から撮った。(82)島後・尾白鼻夕景:島後の北西部、ローソク岩の近くにある。西面の波浪と風によって浸食された崖は、夕陽を受けて赤く染まった。観光船から撮った。(83)島後・鉄砲岩日暮れ:これも島後の北西部、ローソク岩の近くにある。ローソク岩で太陽が下がり過ぎてローソクに灯がついたような風景が見られないと、観光船で周囲の島々を巡ってくれる。その際に撮った。左が鉄砲岩。(84)島後・流門岩と洞門:島後の北端にある白島海岸の南東に笠崎海岸がある。そこに流門岩と2個の洞門がある。水の力で出来たものだろうが恐ろしい力だ。

8−11 西海国立公園/九十九島・五島列島
 (85)展海峰から九十九島:長崎県佐世保市の佐世保湾入口のすぐ北にこの展海峰がある。島が最も多く見える展望台である。九十九島とは島が多くあるという意で、実際には 208 島ある。5月に撮影した。(86)光芒射す九十九島:展望台としてはこの石岳が最も有名である。佐世保港の西側の山の上にあり、ここから見た九十九島。夕陽が光芒を放つのは冬季に限られる。(87)九十九島逆光:石岳展望台から左 (南) 方向にある島々を逆光で浮かび上がらせた。2月初旬に撮影。(88)多島海冬景:石岳展望台へ向かう山道の途中にこの船越展望台がある。したがってアングルが低く、2月に太陽と組み合わせようとすると、少し南方向に向けることになる。北方向の島なら10月ということになる。(89)西海・高浜海岸の落日:五島列島の南端福江島の南端にある高浜海岸。すぐ北に、かつて遣唐使が風待ちをした三井楽や魚津ヶ崎がある。干潟に潮が満ち始め、それが夕陽に輝き、真っ赤な波や黄金色の波が交互にひたひたと迫って来る様に、自然の営みとはかくも美しいものかと感激した。(90)西海・高浜海岸:島を一周する国道 384 号線の道路上から撮った。これ程静かで美しい海岸が道路から見える所など世界でも多くはない。ニースやカンヌなどより、ここの方が美しい。(91)西海・曽根の赤ダキ:五島列島中通島の北部にこの断崖がある。かつての火山の火口壁で、上部に赤い断層が複数ある。「赤ダキ」とは赤崖がなまったもので、今日も使用されているそうである。

2013年9月27日金曜日

白川義員の「永遠の日本」に見る日本の原風景〔12〕

(承前)
8−5 富士箱根伊豆国立公園/伊豆諸島・伊豆半島
  (24)大島三原山:東京都大島町にある伊豆諸島最大の島で、中央に海抜 758m の三原山火山がある。大火口は直径 300~350m、深さ 200m、火口上部から空撮した。(25)鵜渡根島:東京都新島村にあり、伊豆諸島では本州から3番目に近い島である。東西 1.5km、南北 600m、標高 210m の無人島である。(26)石廊崎の日の出:伊豆半島南端の石廊崎の有名な「蓑掛岩」に掛かる日の出の太陽を撮った。この位置に太陽が出る月日や日の出の時間や撮影位置を計算しての撮影だった。(27)城ヶ島曙光:静岡県伊東市の東南に位置する。4000年昔に大室山の噴火により溶岩が海に押出して出来た断崖絶壁が、波浪に浸食されて今日の特異な景観が造られた。太陽が出ている所が伊豆大島である。(29)城ヶ崎荒天:門脇崎の近くから早朝に撮った対岸の岬に叩き付ける波である。波浪が長い年月打ち寄せれば溶岩が浸食され、今日の奇岩の集合になるのは容易に想像できる。(28)田子の夕陽:静岡県西伊豆町の大田子海岸から見る田子の落日である。手前の岩が海獣岩、左遠くの2個の岩が田子岩、春分と秋分の日にはこの島の中央に太陽が沈むことで有名である。(30)堂ヶ島夕景:静岡県西伊豆町の有名な観光地の堂ヶ島。駿河湾に沈む夕陽が美しいことから「夕陽のまち」と言われる。撮影は12月中旬。中央が稗三升島、右が蛇島。

8−6 小笠原国立公園/小笠原諸島
 小笠原諸島:小笠原諸島は東京の南南東 1000km の洋上に 30 余の島々からなっている。父島、母島、硫黄島、南鳥島以外は無人島で、一般住民が住んでいるのは父島と母島だけである。小笠原諸島は、父島列島の北に聟島列島、南に母島列島がある。(31)父島南島扇池:父島列島は、北から弟島、兄島、父島で、その父島の南西端に南島がある。その南島の扇池は小笠原で最も有名な景勝地の一つである。(32)父島千尋岩:父島の南端に円縁湾があり、その湾内にこの「千尋岩」別名ハートロックがある。この岩だけが赤くてハート形をしている。(33)父島三日月山からの落日:父島の二見港のすぐ北側にあるのが三日月山、気象ドームや海上保安庁の無線塔があって、眺めは抜群である。落日を眺めるのには最高の場所である。(34)父島列島中通島:兄島と父島の間の兄島瀬戸に浮かぶのが中通島である。この島は左右対称の岩がお互いくっつき合っているように見えて面白い。それより鮮やかな海の青さが素晴らしい。(37)父島長崎の岩峰:父島の二見港から旭山に向って登ると長崎展望台がある。そこから見た長崎という岬の岩峰で、個々の岩峰が花弁で、全体として咲いた花のように見える。(35)母島列島鬼岩:この鬼岩は母島の北端の乾崎の北側にある。見るからに嫌悪で獰猛な表情をしているのが実に面白い。(36)聟島列島針之岩:聟島と媒(なこうど)島の間に南北に横たわる針之岩という岩礁があり、岩峰が数十本続いている。

8−7 瀬戸内海国立公園/新舞子浜・瀬戸内海・寒霞渓
 新舞子浜:兵庫県たつの市御津町黒崎にあり、恐らく日本で最も遠浅の干潟が広がる場所でないかと思う。干潮時には潮が 500m も引いて広大な干潟が現れる。(38)新舞子浜夜明け:引いた干潟の水の部分を赤く撮ろうとするには、先ず東の空が赤くなること、しかも太陽が画面の上に来ること、この条件が満たされるのは冬至の頃である。しかも日の出前後に最も潮が引く日を調べ、これらの条件が満たされないと目的の写真は撮れない。2009年でこれが満たされた日は、12月19,20日だった。(39)新舞子浜黄金色:日の出の太陽は真っ赤で、4〜5分でオレンジ色になる。次は黄色になるが、オレンジ色から黄色に変わる 15秒間位の間、太陽光は黄金色になり水に反射する。(40)新舞子浜夕陽:新舞子浜は夕陽が有名である。日没後の風景も素晴らしい。(41)新舞子浜薄明:早朝の新舞子浜を撮影する崖の上から、播磨灘の海岸線を俯瞰撮影した。赤くなった東の空の色彩が海に投影されて面白い情景になった。
 瀬戸内海:瀬戸内海は愛媛、広島を中心に、西は大分、東は大阪・和歌山まで 11 の府県に海岸線を持つ東西 450km、南北 15~55km の広大な地域を擁していて、その中に大小合わせて 3000 の島がある。もちろん国立公園としても最大の面積を誇る。(42)釣島海峡:セスナで撮影しての帰り、松山空港に着陸寸前に釣島海峡を落日を入れて撮った。手前の島が睦月島、画面中央が中島、その左に高島、右の怒和島、ここまでが愛媛県、左上の情島は山口県になる。(43)荘内半島の島々:高松空港でセスナをチャーターし半島の島々を撮った。手前が志々島、その上が粟島、左上に延びているのが紫雲出山がある荘内半島の突端である。(44)芸予諸島:芸とは安芸国広島県であり、予とは伊予国愛媛県である。夕陽に向かい、下から肥島、大下島、見附島、ここまでが伊予、その先の三角島と上蒲刈島は安芸である。(45)塩飽諸島:瀬戸大橋の上空から夕陽に向かって撮った。手前が本島、中央が広島、その先右に手島、ここまで香川県、その先左右に茂床島と大島、更に北木島で岡山県。(46)大三島から広島へ:落日の大三島上空から西望。手前の黒いのが大三島、その上小さい三角が来島、ここまで愛媛県、中央の大きな島が大崎上島、その先小さいのが来島で広島県、その先は本州の大地である。(47)銭壺山朝陽:山口県岩国市にある標高 540m の頂上が平らな山で、車で行くことができる。瀬戸内海の島々を望める展望所として有名。桜花の下、眼下に前島と福島を見る。(48)紫雲出山の眺望:荘内半島突端近くにあり、山名の由来は、浦島太郎が竜宮城から持ち帰った玉手箱を開けた時に出た紫色の煙がこの山にかかったという伝説に基づいている。桜の名所、桜花の下、東を望む。下に粟島が見える。(49)竜王山の桜:広島県三原市にある竜王山の頂上から南望した。桜は満開、正面下に佐木島。(50)父母ヶ島:香川県三豊市にあるこの浜は夕陽が美しいことで有名である。特に大潮の際の干潟が逆光に映えるのが最高で、この日は干潟が黄金色に輝いて見事だった。
 寒霞渓:小豆島は映画「二十四の瞳」で一躍有名になった瀬戸内海では第二の大きさの島である。この島の中心部に、最高峰星ヶ城山 817m と四方指山との鞍部に、奇岩が累々の寒霞渓の渓谷がある。その中心的展望台が「四望頂」である。(51)播磨灘の夜明け:香川県の小豆島にある寒霞渓の四望頂から撮影した播磨灘の夜明けである。撮影したのは11月下旬、太陽は雲間を辿るように上昇していったが、空と海の明暗のバランスが一分の隙もなく絶妙であった。水平線の向こうには瀬戸内海最大の島淡路島がある。(52)猪谷池の紅葉:寒霞渓は東西 7km、南北 4km の範囲で、その南端に猪谷池がある。この池は8代将軍吉宗の治世に造られたもので、灌漑や水道水源として使われた。ここの紅葉は実に見事というほかない。(53)寒霞渓紅葉:温暖で知られる瀬戸内海の島でこれほどの紅葉が見られるというのは意外である。ロープウェイの上部駅の近くから撮った。(54)奇岩と紅葉:11月下旬に寒霞渓の西端にある奇岩と紅葉をスカイラインから撮った。この年の日本での最後の紅葉だろう。(55)寒霞渓曙光:この写真も四望頂展望台から撮った。今度は空が真っ赤になった。(56)寒霞渓暮色:これも四望頂展望台から撮った落日である。太陽の下は備讃瀬戸だから、右は豊島や小豊島、左は男木島や女木島だろう。
(56)(57)鳴門の渦潮:徳島県鳴門市と兵庫県南あわじ市の間にあるのが鳴門海峡、海峡の幅は 1.3km、ここへ1日2回潮流が時速 13~15km で瀬戸内海に流れ込み、また2回流れ出す。大潮時には時速 20km、日本最速の潮流で、世界三大潮流の一つである。渦の大きさも直径 30m、世界最大級である。

2013年9月26日木曜日

白川義員の「永遠の日本」に見る日本の原風景〔11〕

 この第8章のタイトルは「海浜・島嶼」で、ここにはこれまでの章では最も多い117点の写真が収載されている。ところで日本列島は四方を海に囲まれた島国であるからして、海岸線が非常に長くしかも多くの島があり、それぞれに素晴らしい景観があろうことは容易に想像できる。ところで白川氏は山岳写真家としてのイメージが強くて、この本でも山岳写真が最も多いと思われたが、山岳の章での掲載は予想に反して105点だった。だからこの海岸と島の章での写真が山の章を超えていることに驚きもした。しかし内容をみると、山以上に多彩な顔を持っていることに更なる驚きがあった。ここでの紹介はほぼ掲載順に、国立公園や国定公園の名を頭に冠して記載した。

第8章 海浜・島嶼  Coastal Regions  and  Islands
8−1.利尻礼文サロベツ国立公園/利尻島・礼文島
 利尻島:日本の北端、稚内の西に位置し、ほぼ円形の日本で面積が18番目の島である。アイヌ民族はこの島をリー・シリ(高い島)と言った。島の中央には標高 1721m の利尻山が聳え、この山がこの島を形成している。南岸の奇岩はこの山の噴火と北の外洋の波浪で造られたものである。(1) 利尻・御崎 (みさき) の光芒:利尻島の南端、仙法志御崎公園からの落日。ここから眺める落日は最高だと称賛できる。(2)利尻・御崎夕照:この御崎の奇岩累々は利尻山の噴火による溶岩で造られた。今日も波涛が逆光に輝いて見事である。夕陽の傾きによって、色彩が黄色から黄金色に、オレンジ色から赤へと変化する。
 礼文島:人が住んでいる島としては日本最北端の島である。(3)礼文・地蔵岩:島の南端にある有数の観光地で、ここには高さ 50m の岩峰が屹立している。岩峰と日本海の落日とを組み合わせて撮影した。(4)礼文・澄海岬:島北部の西側海岸にある岬の岸壁がとても素晴らしい。

8−2.知床国立公園/知床半島
(5)流氷と落日:半島のオホーツク海側の南端にある見晴橋から撮った流氷で埋まった海と落日。(6)流氷覆う:見晴橋は海岸線から少し高まった所にあるので、流氷の海を広く撮ることができる。(7)流氷と月:この日の午後ずっと見晴橋で太陽と雲と流氷が演じるドラマを眺めてきた。日没後、西の水平線が真っ赤になった。その後中天に月と一番星が現れた。(8)知床岬と流氷:知床半島の突端の知床岬を取り巻く流氷をオホーツク海の上空から撮影した。岬の岩礁が克明に写っている。(9)流氷と知床連山:網走と知床岬の中間点の上空から撮った流氷と知床連山。一番高いのが羅臼岳、左へ順に三ツ峰、サシルイ岳、オッカバケ岳、硫黄岳、画面右の低いのが天頂山、左に下がって一番低いのが知床峠。(10)知床岬鳥瞰:知床岬の西側は岩礁が続き、更に岩礁は絶壁状に落ち込んでいる。流氷と共に空撮した。(11)知床半島旭日:網走港の東方の海岸から撮った流氷と日の出の太陽である。撮影は2月末、この季節太陽は海別岳の左肩から上がる。全面凍った海に流氷が散在し、久しぶりに出た太陽が海面を真っ赤に染めた。(12)夜明け前の知床半島:網走港の港外から撮影した夜明け前の流氷と知床半島。中央に羅臼岳、右端に海別岳。(13)流氷とサンピラー:知床半島ウトロ港の上部から撮った夕陽のサンピラー (太陽柱) 。夕方になって空気中の湿気が凍り、少し弱いが太陽柱になった。

8−3.下北半島国定公園/仏ヶ浦
(14)仏ヶ浦俯瞰:青森県下北半島にある特異な形をした巨岩や断崖が連なる海蝕崖地である。写真は国道328号線から俯瞰したもので、高度差は 100m ある。右下の幾つか集まった岩峰が「十三仏」、左の白いのが「仁王岩」、中央の青い岩峰が「蓬莱山。その向こう側が「鳳鳴山」。両方から海に突き出た岩盤が「極楽浜」。(15)仏ヶ浦仁王岩:仁王岩を海側の岩礁から撮影した。津軽海峡からの長年月の荒波により、これ程までに浸食されるものか。(16)十三仏と仁王岩残照:極楽浜から太陽が水平線に沈む直前に撮影した。左の岩峰が十三仏、右が仁王岩である。この仏ヶ浦は昔は恐山と一体であって、恐山を参拝した後この仏ヶ浦を巡拝していたという。(17)五百羅漢:この岩の集団は先の岩の集団とは北に離れている。陸からも遠望できるが、近くで見ようとすれば海上からでしか見れない。個々の岩には仏様に因んだ名が付けられている。

8−4.陸中海岸国立公園/三陸海岸
(18)鵜ノ巣断崖の日の出:三陸海岸は太平洋に沿って 200km にわたり断崖絶壁が続く。岩手県田野原村には断崖の中腹にウミウが営巣している場所がある。その崖上から撮った日の出である。気宇壮大な朝。(19)久慈海岸の岩礁:久慈海岸といえば「つりがね洞」や「小袖海岸」が有名だが、この岩礁は久慈港のもっと北にある。(20)矢越崎:有数の名所である田野原村の北山崎にある第一展望台から南望した。画面左の穴の開いた丸い巨大な岩が矢越崎。その左の岩峰がローソク岩。そのバックにある崖が鵜ノ巣断崖である。(21)浄土ヶ浜曙光:浄土ヶ浜の西に三方が崖の山があり、その頂上から浄土ヶ浜の日の出を撮った。1月上旬、太陽は画面の右側から出た。(22)北山崎朝光:北山崎は 200m 級の断崖が 8km も続いていて、海のアルプスと呼ばれている。これは第二展望台から撮ったもので、太陽は左の水平線から出てこの時は崖に太陽が当たるが、その後は終日逆光で日陰になる。(23)浄土ヶ浜・剣の山:岩手県宮古市、5200 万年前、白い火山岩によって半島が造られ、それが浸食されて今日の姿になった。浄土ヶ浜に立つと、入り江の向こう側に白い流紋岩の岩山が並ぶ。北西から鷹岩、エボシ岩、浄土ヶ島、剣の山と南東に続く。剣の山はこれらの岩山のほぼ中央にあり、不思議なことに草木が全く生えず、白い裸の岩山である。白いが故に見る人を魅了する。昔から人は遠くに眺められる真っ白な雪山を白山として信仰した。ヨーロッパ最高峰のモンブランもヒマラヤ 8000m 峰のダウラギリも現地語では白山である。

2013年9月20日金曜日

白川義員の「永遠の日本」に見る日本の原風景〔10〕

 この第7章のタイトルは「湿原」で、ここには23点の写真が収録されている。この章の序を書いた辻井達一によれば、太古の日本は湿原の国だったという。それは最古の歴史書である「古事記」には、この国を「豊葦原瑞穂国」、すなわち葦が一面に生い茂っている国と称していることからも伺い知れるという。またもう一つの名称の「秋津島」もトンボが沢山飛んでいる島、これも湿原を思わせる名称である。ところで現在は湿原と呼べる箇所は限られていて、ここでは釧路、尾瀬、日光、立山と月山の弥陀ヶ原臥紹介されているのみだ。ここでは掲載順に、国立公園名を入れて記した。

第7章 湿 原  Wetlands
7−1 釧路湿原国立公園/釧路湿原
 (1)  湿原曙光:日本最大の大湿原の最も代表的なビューポイントである北斗展望台から、日の出直後に撮った写真である。湿原の全体は葦で覆われ、その中にハンノキが散在している。その葦原に太陽の曙光が走る。その色彩がピンク色から黄金色に変化していく風景を見ていると、心身爽快で幸せな気持ちになる。(2)シラルトロエトロ川:屈斜路湖に端を発した釧路川が釧路港に流れ込む中間地点が標茶町で、そのすぐ南から釧路湿原が始まる。つまりシラルトロエトロ川はこの湿原の北端に位置している。この湿原で最も紅葉が美しい場所がこの川の周辺で、ここの紅葉は実に見事というほかない。
 (3)釧路川:これ程曲がりくねった一級河川は釧路川以外にはないのではないか。この湿原の2番目に有名な湿原の東端にある細岡展望台の上空からヘリで空撮した。湿原は一面黄葉している。(4)釧路湿原逆光:湿原の真ん中部分を冬季に空撮した。湿原に伸び出した宮島岬の少し南方、ツルワシナイ川と雪裡川との合流点である。湿原を縦横に流れる中小の河川が、まるで網の目のようになって流れている。(5)雪裡川下流:湿原の南端近くを流れ、このすぐ南で人工的に掘削された新釧路川に合流する。冬の上空から見ても、この辺りが自然との境界である。(6)釧路湿原夜明け前:湿原の南西に北斗展望台がある。夜が白み始めてハンノキが肉眼でも漸く見えるようになった頃、葦の原に東の赤い空が映えた。(7)釧路湿原黎明:北斗展望台から撮った日の出数分後の写真。湿原とハンノキ林が黄金色に輝く歓喜の一瞬である。(8)湿原茫々:釧路湿原は湿原の広さだけで 22,070ha ある ( 国立公園はさらに広い ) 。そしてこの北斗展望台から眺められる広さはその 10 分の 1もない。でもこのような原初の風景が残っていることは嬉しい。(9)細岡展望台直下:早朝に筋状の雲が出て、見渡す限りの葦原が筋状の縞模様になった。実に珍しい光景に出くわした。
                    
7−2 中部山岳国立公園/立山弥陀ヶ原
  (10)  立山弥陀ヶ原ガキ田:弥陀ヶ原というと、立山、白山、月山が有名である。立山の弥陀ヶ原は標高 1600 - 2100m の高原で、そのほぼ中央に大小合わせて約 3000 個の沼があり、その沼・池のことをガキ田 (餓鬼田) という。これは立山餓鬼道地獄に落ちた亡者たちが耕した田圃の伝説からそう名付けられたもので、栄養状態が極めて悪い湿地で、とても人が耕したり水田にすることは出来ない。それで今日まで景観が保たれたのである。秋たけなわのガキ田は、地表の草が黄葉に燃え、無数に点在する池が青空を映して青く見え、低い常緑樹の緑色と相まって、見事な色彩絵巻を見せていた。
        
7−3  磐梯朝日国立公園/月山弥陀ヶ原
 (11)  月山弥陀ヶ原と鳥海山:朝日山地の北端にある出羽三山の一つの月山の山腹にある高層湿原が弥陀ヶ原で、そこには数百の池塘がある。写真は緑の湿原と青い池塘と、ほぼ 60km 離れている鳥海山 (2236m) を撮ったものである。(12)弥陀ヶ原と月山:画面の上方に月山 (1984m) 、その手前に標高1450m の弥陀ヶ原。高所に池塘ができたのは、地表の植物が秋に枯れても、冬の低温で腐らずに泥炭となり、その凹地に水が溜まったからである。

7−4  尾瀬国立公園/尾瀬ヶ原
  (13)  尾瀬ヶ原全景:至仏山の上空から見た尾瀬ヶ原全景である。正面の山が燧ヶ岳で、その右に尾瀬沼が見えている。尾瀬ヶ原は福島、新潟、群馬の三県にまたがっていて、至仏山、燧ヶ岳、袴腰山、中原山など 2000m 級の山々に囲まれた、東西 6km 南北 3km の高所盆地である。(14)尾瀬ヶ原遠望:6月中旬に撮影した尾瀬は至る所にミズバショウが咲き、長閑な風景だった。それが秋になったらどうなるのかという興味が湧き、10月下旬にヘリを飛ばした。写っているのは晩秋の上田代だが、正に赤く劇的に変貌していた。(15)尾瀬ヶ原鳥瞰:今度は高度をうんと下げて湿原を大写しにした。すると地表の至る所に獣道が縦横に走っているのが見えて、昼間はほとんど見ることがない動物が相当数生息していることが伺われた。尾瀬で木々が集まる林が細長いのは川に沿っているからで、広葉樹は既に落葉して白い枝だけが残っている。左には池塘が黒く克明に写っている。(16)尾瀬ヶ原中田代:尾瀬ヶ原は大きく3地域に分けられ、至仏山側を上田代、燧ヶ岳側を下田代、その中間がこの中田代で、上空から空撮した。湿原は赤く、池塘は黒く写っていて、池塘には可愛い木々が生えている。(17)田代山山頂湿原:燧ヶ岳の東方約 18km の福島と栃木の県境にこの田代山 1971m がある。田代とは山頂が湿原のことで、この山の山頂が湿原であることで有名である。10月下旬の空撮だが、周辺の山々は今が盛りの紅葉だった。(18)燧ヶ岳と尾瀬ヶ原:燧ヶ岳上空から南望した写真。左のピークが俎嵒 (まないたぐら)
2346m 、すぐ右の一番高いのが柴安嵒 (しばやすぐら) 2356m 、尾瀬ヶ原はこの燧ヶ岳の火山活動で造られた。尾瀬ヶ原の突き当たりが至仏山である。(19)尾瀬釜ッ堀:早朝に北側の沼山峠から尾瀬に入った。ミズバショウは途中の大江湿原にも尾瀬沼ビジターセンター周辺のほかあちこちにあるが、これは
釜ッ堀のミズバショウである。バックは尾瀬沼と燧ヶ岳である。6月中旬に撮った。(20)尾瀬下の大堀川:尾瀬で最も有名なミズバショウの群落はこの大堀川である。この日は群馬県側の鳩待峠から入った。ここから眺める至仏山は堂々としていて雄大である。6月中旬の撮影だが、人が多いのには閉口した。

7−5 日光国立公園/日光戦場ヶ原
  (21)  小田代原 (おだしろがはら) と戦場ヶ原:左下方が小田代原、その上に横長に広がるのが戦場ヶ原、紅葉真っ盛りの10月中旬に空撮した。山は中央が太郎山、左が山王帽子山、右端が大真名子山、右画面外に男体山が続く。(22)カラマツ林:戦場ヶ原の一画にカラマツの群生地がある。ヨーロッパアルプスの山麓に生育するアローラ松は茶系の黄葉だが、日本のカラマツは場所によってはオレンジ色になる。その見事なオレンジ色の黄葉を10月中旬に空撮した。(23)日光湯川:奥日光湯ノ湖から落ちた湯滝の水が、中禅寺湖まで 12,4km をゆったりと流れるのが湯川で、この湯川が西の小田代原と東の戦場ヶ原とを分けている。上空から見ると川の流れに沿って林があり、黄葉した落葉樹と緑の常緑樹が入り乱れて多彩な風景を醸し出している。それに草原の草紅葉が加わって、自然が何か賑やかなお祭りでも始めそうな華やかな雰囲気に見えた。

2013年9月14日土曜日

白川義員の「永遠の日本」に見る日本の原風景〔9〕

(承前)
6−4 日光国立公園/茶臼岳・朝日岳
  (19)  朝日岳:日光国立公園の北端の茶臼岳とその北側の三本槍岳との中間にある 1896m の山。茶臼岳ロープウェイ乗り場の少し上から10月下旬に撮影。(20)  日塩 (にちえん) もみじライン:日光国立公園の鬼怒川から塩原温泉までの有料道路で、もみじ谷大吊橋を過ぎた辺りから、日の出の太陽を受けて赤く染まったもみじラインの風景である。11月上旬に撮影。(21)  茶臼岳:標高 1915m の火山。北と西に噴気口があり噴煙を上げている。火口を空撮した。(23)  霧降高原:東方向から空撮した紅葉の霧降高原。右に赤薙山 2010m、左遠くに男体山 2486m が見える。

6−5 秩父多摩甲斐国立公園/瑞牆 (みずがき) 山
  (17)  瑞牆山:長野県との県境に近い山梨県の山で、標高は 2230m。全山花崗岩から成る。長年の風化浸食で独特な山容となった。紅葉はこの年最後の輝き。

6−6 富士箱根伊豆国立公園/箱根仙石原
  (22)  箱根仙石原:神奈川県箱根町にある仙石原高原、標高約650m。火口原湖跡が高原になったといわれる。一面の草黄葉。11月中旬に撮影。

6−7 中部山岳国立公園/立山・安曇野・陸郷
  (11)  天狗平と剣岳:天狗平は室堂平と弥陀ヶ原の間にある標高 2300m の古立山火山によって形成された溶岩台地である。秋の天狗平の草紅葉と剣岳 ( 2999m ) 。(12)  立山地獄谷の落日:ここは立山の爆裂火口の跡で周囲 1.5km 。今も夥しい白煙が噴気孔から吹き出している。10月のこの日の夕方は雲が厚かったが、雲の切れ間から黄金色の太陽が覗き、神秘的な光景になった。(13)  爺ヶ岳と鹿島槍:安曇野三郷の黒沢川の堤防の満開の桜並木を入れて、後立山連峰を撮った。中央の双耳峰が鹿島槍ヶ岳 2889m 、左が爺ヶ岳 2670m 、右が五龍岳 2814m 。(14)  桜と常念岳:早朝の日の出直後、安曇野から撮影した朝焼けの常念岳 2857m 。手前に新堀堰の桜。(15)  桜仙峡と北アルプス:長野県池田町の東側の山の上に「陸郷」という展望絶佳の場所があり、そこから眺めた 桜仙峡で、桜が満開の頃は桃源郷になる。遠く左に大天井岳 2992m 、その右に燕岳 2763m を望む。

6−8 大山隠岐国立公園/大山・蒜山
(24)  鬼女台からの蒜山:大山の東南約 7km に鬼女台という有数の展望台がある。標高 869m 。そこから見た秋深い蒜山高原の日の出。ススキが逆光に映えて清々しい。(25)大山と烏ヶ岳:前の写真を撮った前日の夕方に鬼女台から撮ったものである。左遠くに見えるのが大山 1729m 、右の三角山が烏ヶ岳 1448m 、太陽光が長波長になって紅葉が真っ赤になった。

6−9 山陰海岸国立公園/玄武洞
(26)  青龍洞:この国立公園は海岸の公園であるが、玄武洞を中心とする洞窟は円山川に沿った内陸にある。通常玄武洞として知られているが、他に青龍洞、白虎洞、北・南朱雀洞の五洞から成っている。玄武洞は江戸時代後期に命名され、玄武岩はここに因んでいる。この五洞の最大の特徴は見事な柱状節理である。最も大きな玄武洞は相当に採石されてしまったが、青龍洞は自然のままに残っている。前面に池があったことが幸いしたと言われている。写真でも池の反射は効果的である。

6−10 阿蘇くじゅう国立公園/阿蘇山・九重山
(27)九重黒岳:九重山西部に黒岳 1390m がある。北側に男池湧水群があり、その鉄山キャンプ場から撮った紅葉と黒岳である。(28)阿蘇中岳:ロープウェイの乗り場の阿蘇山西駅から少し西方に山上広場と名付けられた場所があり、ここはミヤマキリシマの群生地である。ここから見た阿蘇中岳 1506m 。撮影は5月下旬。(29)九重三俣山:九重山の中心地は長者丸で、そのススキの原を隔てて三俣山 1745m を撮った。季節は11月初旬。(30)阿蘇御竈門 (おかまど) 山:阿蘇パノラマラインを北上すると火の山トンネルがある。そこを抜けた辺りから撮ったミヤマキリシマと御竈門山 1153m である。5月の阿蘇は華やかである。(31)往生岳と月:阿蘇パノラマラインを東に向って山に上り始めると、左に米塚が現れる。この地から撮った往生岳 1238m と右に杵島岳 1270m である。夕方の長波長の太陽光を受けて風景が少し赤く色づいた。東の空に月が出た。  

白川義員の「永遠の日本」に見る日本の原風景〔8〕

 この第6章のタイトルは「高原」で、ここには31点の写真が収載されている。でもここに出てくる撮影地や被写体は一般に高原として通用しているとは限らない。高原と名の付く地形名は高校の地図帳では4高原のみとか、そこで私は成美堂出版の日本地図で当たってみたところ、「高原」と名の付く地形名は48あった。また似たような「山地」というのが46、ほかに「台地」が10、「〜原」が7、「〜平」が3、「高地」が2あった。しかし撮影者は必ずしもこれらにこだわってはいない。ところで撮影地や被写体は国立公園なので、公園をほぼ北から南へと順に示した。

第6章 高 原  Highlands
6−1 大雪山国立公園/大雪山・十勝岳
● 大雪山/(1) 銀泉台の日の出:かつて大雪山を横断する観光道路が造られることになったが、工事進行中に自然保護団体の猛反対が起き、工事が中止されたが、その地点がこの銀泉台 (1500m) である。大雪山周辺で車で行ける最高地点であり、大雪山赤岳の登山口でもある。ここが有名なのは日本で最初に紅葉が始まる所であり、またその紅葉が実に見事である。それで多くの人が押しかけるので、9月中旬の10日間はマイカー乗り入れ規制が行なわれる。したがって日の出を撮ろうとすればこの時期を外さねばならない。紅葉もさることながら、ここからの日の出は実に素晴らしい。 (2) 銀泉台紅葉:銀泉台から赤岳への登山道を30分ばかり登るとこの地点に着く。この辺りが最も素晴らしい場所で、淡い緑と濃い緑、黄色にオレンジに真っ赤と、紅葉を構成する色が豊かに揃っている最高の場所である。 (3) 大雪高原:銀泉台の南方に広がる高根ヶ原の下には大雪高原沼が散らばっていて、ここも紅葉の名所である。この写真は沼の一つ式部沼から見上げて高根ヶ原と紅葉を撮っている。 (5) 銀泉台秋色:赤岳への登山道をさらに登って第二花園辺りから見た紅葉で、これ程鮮やかな紅葉は銀泉台周辺以外にはない。 (7) 旭岳の噴煙:大雪山の主峰旭岳の山麓にある姿見の池の上方に5,6個の噴気口があって白い噴煙が上がっている。気温が下がる秋や冬には特に噴煙が多くなる。
● 十勝岳/ (4) 十勝岳:望岳台から吹上温泉へ行く細道から撮った十勝岳の噴煙と紅葉である。この辺りは撮影者があまり入らず、紅葉は新鮮だった。 (6) 姿見平から十勝岳:大雪山旭岳ロープウェイで姿見平に上がると、すぐ近くに第一展望台がある。そこから遠く南西の方向に十勝岳が見える。緑のハイマツの中の紅葉が鮮やかだった。(10) 望岳台から山麓:十勝岳の望岳台から十勝岳温泉に向う道から山麓の富良野方面を見た。丘や林が自然のまま残り、それが紅葉して見事な景観だった。

6−2 阿寒国立公園/アトサヌプリ (硫黄山) ・サワンチサップ (帽子山)             
 (8) 川湯・帽子山:阿寒国立公園の摩周湖と屈斜路湖の丁度中間に、硫黄山など3つの山がある。南から硫黄山 512m、この山は今も活発な噴気活動を続ける火山である。その北にマクワンチサップ 574m、一番北に帽子山 520m の二重式溶岩円頂丘がある。その手前に地元でキツネ山と呼ばれる紅葉が格別の山がある。この写真のターゲットは手前にある夥しい流木で、これは恐らく硫黄山の火山ガスで立ち枯れになった木々が倒れ、長い年月をかけてここまで流れ着いたと思われる。でもよく見ると、流木の中に紅葉している木があるのには驚かされる。 (9) 硫黄山中腹:温泉街の近くなのに人の手が入らない平地がある。その周りを取り巻く林は真っ赤に紅葉している。

6−3 磐梯朝日国立公園/吾妻小富士
 (16) 花見山:写真家の故秋山庄太郎氏が「福島に桃源郷あり」と言って一躍有名になった花見山。4月下旬に満開の桜を早朝に撮影した。吾妻小富士 1707m が見える。 (18) 天狗の庭から吾妻小富士:福島の高湯温泉から南の土湯峠まで磐梯吾妻スカイラインが延びている。このルートに沿って故井上靖氏が命名した吾妻八景がある。写真はこの第3番目の「天狗の庭」から見た吾妻小富士である。紅葉が見事だ。

2013年9月11日水曜日

白川義員の「永遠の日本」に見る日本の原風景〔7〕

 この第5章のタイトルは「渓谷・河川」で、ここには23点の写真が収載されている。この章での撮影地は国立公園内なので、配列は北から順に示した。したがって写真の配列は本での配列とは異なっている。また国立公園の末尾に下流域の河川名を記した。

第5章 渓谷・河川  Rivers  and  Gorges
5−1 大雪山国立公園/石狩川上流の渓谷
 層雲峡は大雪の山々が大噴火し、その溶岩で埋め尽くされた大地を、石狩川が浸食して、高さ 200m、長さ 24km に及ぶ大峡谷を作り上げた。ただ左右に立ち並ぶ柱状節理の岩峰だけなら大函までの 15km に限られる。上川から入って層雲峡入口からホテル街までに名前の付いている岩峰が 29峰、その先にも11峰、それに加え流星の滝や銀河の滝もある。谷底には国道 39 号線が通っていて、車の中からもこれら岩峰を見ることができ、特に紅葉の季節は壮観である。この層雲峡は大雪山の北側にあるが、西側には天人峡がある。岩質も成因も層雲峡と全く同じだが、この大地を削ったのは石狩川の支流の忠別川である。 ● 天人峡(1) 七福岩:北海道上川町の天人峡温泉にあり、この先には有名な羽衣の滝もある。下の忠別川から7本の岩峰がそそり立っているのは圧巻で、特に紅葉真っ盛りの景観は実に素晴らしい。撮影は10月初旬。 ● 層雲峡(2) 双子岩:地名はかつてアイヌ語でソウウンナイ (滝の多い川) であったのを、1921年に大町桂月が層雲峡と命名したとされる。写真の左が双子岩、右がこうもり岩で、ホテル街のすぐ下流にある。年間 300万人が訪れるという。撮影は10月初旬、紅葉が盛りだった。(3) 九老峰:層雲峡下流にある岩峰で、右端が兜岩、左に九老峰、その左は無名峰、左端が普賢峰。(4) 胡蝶岩:層雲峡入口にある岩壁で、赤い大きな岩の姿が、丁度美しい蝶が羽を広げたように見えるところから命名されたという。
5−2 十和田八幡平国立公園/奥入瀬川と北上川の上流の渓谷
 十和田湖の子 (ね) ノ口から流れ出した奥入瀬川は、14km 流れて焼山で蔦川と合流するが、この間が名高い奥入瀬渓谷である。奥入瀬は谷底を流れる一本の川で、写真 ( 静止画像 ) にするには難しい被写体である。しかし肉眼で流れを見ていると、人の心を癒し安心させ気持ちを豊かにさせる。春も夏も秋も奥入瀬は人を引きつける。 ● 奥入瀬渓谷(7)秋:秋の紅葉は素晴らしいが、人が多くて撮影に苦労する。(8)夏:夏の青空が水面に反射して、流れも青く夏らしい奥入瀬になった。(9)春:春は奥入瀬の代表的な場所とされるほぼ中間地点の馬門岩で撮った。 ● 八幡平(16)松川渓谷:北上川の上流の松川渓谷は、松川温泉と八幡平温泉を結ぶ岩手県有数の紅葉の名所である。紅葉を狙って現地に入ったが、紅葉よりは渓谷の柱状節理に魅せられた。
5−3 磐梯朝日国立公園/阿武隈川・須川上流の渓谷
 (14)吾妻つばくろ谷:吾妻連峰は標高 2000m級の山々が連なる。その連峰を縫うように走るのが吾妻スカイラインで、そこに故井上靖が命名した吾妻八景がある。これはその2番目の「つばくろ谷」。長さ 170m の不動沢橋の上から深さ 84m の谷底を撮ったのがこの写真で、紅葉が実に素晴らしかった。
5−4 日光国立公園/利根川・鬼怒川上流の渓谷
 この国立公園には、ないのは高山と海浜や島だけで、名瀑、湖沼、森林、渓谷、高原、湿原が揃っている極めて珍しい国立公園である。(12)龍王峡:日光鬼怒川温泉と川治温泉の間の鬼怒川渓谷は最も有名で「龍王峡」という。この主要部 3km は岩石の色の違いから、白龍峡、青龍峡、紫龍峡に分けられる。最も景観が良いのは青龍峡で、ここを空撮した。(13)瀬戸合峡:龍王峡のずっと上流の川俣湖に隣接していて、深さ 100m に及ぶ渓谷が 2km も続き、国道 23 号線から見下ろすことが出来る。この有名な紅葉の名所を空撮した。(17)鬼怒川楯岩:鬼怒川温泉にある高さ 70m の巨岩で、楯に似ていることからこの名が付いた。国道 121 号線の立橋から11月中旬に撮影した。
5−5 上信越高原国立公園/信濃川・清津川上流と利根川上流の渓谷
 新潟県十日町市にある日本三大峡谷の一つ。日本三大峡谷とは、この清津峡と富山県の黒部峡谷と、三重県大台町の大杉谷を指す。信濃川の支流の清津川が浸食してこの峡谷を作った。100m を超える岩壁が柱状節理であることが景観を物凄いものにしている。(10)清津峡:この清津峡には 750m のトンネルが掘られていて、4カ所に展望所がある。これは4番目のパノラマステーションから撮ったものである。撮影は11月初旬、紅葉が見事だった。(11)清津峡の清流:これはトンネルの入口から最初にある第一展望所から下を覗いて撮った写真である。岩が柱状節理なので写真になった。(18)湯檜曽川:群馬県みなかみ町。写真下部の白く見えている川原の左方向が、有名な谷川岳の一ノ倉沢である。この川は北の上流でドカ雨が降ると鉄砲水が出やすい。
5−6 中部山岳国立公園/信濃川と姫川の上流
 (5)高瀬川と北アルプス:松本市の近郊を流れる高瀬川に架かる高瀬橋から撮った北アルプス。左の3峰が爺ケ岳、左から南峰、中峰、北峰、画面中央が鹿島槍ケ岳で、左が南峰、右が北峰。右端が五龍岳。撮影は4月中旬、山はまだ白い。(6)松川と北アルプス:白馬村の八方尾根の麓を流れる松川に架かる松川橋から撮った北アルプスの山々。左が五龍岳、右が八方尾根の頂上になる唐松岳。撮影は10月中旬、夕陽を受けて川床のすすきが黄金に輝いている。
5−7 秩父多摩甲斐国立公園/富士川・笛吹川・荒川上流の渓谷
(19)昇仙峡:甲府市の荒川上流にある峡谷。川の水が花崗岩を深く浸食することによって造られた。写真上部の岩は覚円峰と呼ばれる高さ 180m の巨岩。このような形の岩は周辺にいくつもある。ここもまた紅葉の名所で人が多い。
5−8 吉野熊野国立公園/熊野川・北上川上流と古座川上流の渓谷
 奈良・和歌山・三重3県の県境を流れる熊野川の支流北山川にあるのが有名な瀞峡である。(20)瀞峡:田戸の上流に上瀞と奥瀞、下流に下瀞があり、下瀞を瀞八丁といい、全長 31km ある。 写真は山の上から上瀞を撮ったものである。(23)滝ノ拜:和歌山県古座川町。古座川の支流小川の川床が水流によって次第に穴状になり、そこに 8m の渓流瀑があり、これを滝ノ拜という。異様な風景と滝を神と崇めた。
5−9 阿蘇くじゅう国立公園/菊池川上流の渓谷
 ● 菊池渓谷(21)紅葉ヶ瀬:菊池渓谷は熊本県菊池市にあり、国立公園の北西端にある。遊歩道が整備されていて、文字通り紅葉が素晴らしい。(23)四十三万滝:名前の由来は、昭和9年にある新聞社が名勝地募集をしたところ、この滝が 43万票で第1位になったからという。また一説には1日の水量が43万石に因むという。

2013年9月6日金曜日

白川義員の「永遠の日本」に見る日本の原風景〔6〕

 この第4章のタイトルは「森林・巨木」で、ここには21点の写真が収載されている。このタイトルで、森林はともかく、巨木は伐られた木も含まれることから、現存している樹木だから、巨樹としてほしかった。この章の大半は白神山地と屋久島の森林や巨木に充てられている。括弧内数字は写真番号で、その前後に写真のタイトルを書いた。

第4章 森林・巨木  Forests  and  Large  Trees
4−1.白神山地
 青森県と秋田県にまたがる13万haに及ぶブナの原生林。そのうちの1万7千 ha が1993年に世界自然遺産に登録された。白神山地は今も隆起が続いていて地盤が極めて弱く、崖崩れが多発して林道建設が困難なこと、この山地は景勝の地とはいえず観光客が少なかったこと、またブナの木は椎茸栽培以外には用途が少なかったこと等の要因が重なって、今日まで手つかずに原生林が残った、日本では極めて珍しい稀有な地域といえる。
 (1) 白神山地と岩木山:地元の人から今が丁度紅葉のピークと聞いて、セスナ機をチャーターして空撮した。この山地には峠が3つあるが、峠からの眺望はありふれていて、絵にはならず、ここは空撮に限る。快晴に恵まれ、満足のいく撮影となった。右遠くに岩木山 (津軽富士) 1625m の端正な姿が見える。 (2) 樹海紅葉:正に樹海は赤に染まっている。ブナは黄葉と思っていたが、光線の具合なのか、見事な紅葉に写っている。遠くに白神岳 1232m と向白神岳 1250m が見えている。 (3) 白神山地山稜:この山地の青森県側に「暗門滝 (あんもんのたき) 」があるが、その周辺の原生林の紅葉である。稜線は赤く、沢に下がるにしたがってオレンジ色、黄色になり、沢の近くでは緑色も見える。 (4) 白神十二湖:青森県側白神山地の西部の日本海のすぐそばに「十二湖」がある。湖沼は全部で 33 あるが、崩山から見えるのは 12 なので十二湖と呼ばれるという。写真中央には白く崩れて見える有名な「日本キャニオン」が見えている。ここでの紅葉はこれからである。 (5) 岳代 (だけだい) 原生林:この原生林は山地の秋田県側にある。7月の原生林は緑一色、実に瑞々しい風景である。 (6) 母なる樹:青森県側山地の津軽峠から山道を5分ばかり歩くと、樹例 400 年といわれる「マザーツリー」と呼ばれるブナの巨木に出会う。胸高幹周り 465cm 、樹高は 30m ある。ブナの寿命は通常 200 年といわれているから、その2倍生きていることになる。
4−2.屋久島
 日本で名だたる巨木が集中している所といえば屋久島である。中でもその巨木を車の窓から間近に見られるというのが紀元杉 (18) で、確かに駐車場の脇に立っている。したがって観光客も多い。その後歩いて巨木を訪ねようとすればヤクスギランドで、入るには入場料が要る。ここには仏陀杉 (15) 、千年杉、三根杉、蛇紋杉等がある。ハイライトは縄文杉を訪ねる山登りで、荒川口から小杉谷のトロッコ道を歩き、楠川分かれから登りになる。最初に出会うのが三代杉 (17) である。山道が急坂になった辺りに立っているのが翁杉 (16) 、その上にウィルソン株、それから大王杉、夫婦杉、最上部に縄文杉 (19,20) がある。
 (15) 仏陀杉:樹高 23.7m 、幹周り 8m 、樹齢は約 1800 年、空洞化が進んでいるが、見るからにとことん生きてきたという風貌をしている。 (16) 翁杉:樹高 21.5m 、幹周り 12.6m 、樹齢約 2000 年、特に幹周りは縄文杉に次いで2番目に太かった。しかし 2010 年に幹が折れて倒れた。したがって今はない。この写真は 2009 年に撮影したものである。 (17) 三代杉:樹高 38.4m 、樹齢 2000 年の一代目が 1500 年前に倒れ、その上に二代目がほぼ 1000 年生長したが約 350 年前に伐採され、その上に今日の三代目が 350 年生長している。三千数百年の間に三代更新した不屈の杉である。根元の空洞化がすさまじい。 (18) 紀元杉:ヤクスギランドの西方にあって、ここまでは車で行くことができ、この杉に最も観光客が集まる。樹高 19.5m 、幹周り 8.1m 、樹齢約 3000 年、頂上部は落雷で枯れている。(19)縄文杉:樹高 25.3m 、幹周り 16.4m 、樹齢推定 3000 年以上、屋久島のほぼ中央部の山中にあり、屋久島では今日確認されている中では最大の杉で、縄文時代から 4000 年以上生きてきたからというのが名前の由来である。 (20) 縄文杉根幹:かつて環境庁が環境週間ポスターで樹齢 7200 年と印刷して一躍有名になったが、これには根拠がない。屋久島は花崗岩なので栄養分が少なく、木の生長が遅く木目が詰まっている。また降雨が多く湿度が高いので、樹脂分が多く腐りにくく、耐久性に優れているため、建築材や造船材として明治時代までにほとんど伐採されてしまった。今日観光資源として残っている杉は、形がいびつで使い物にならないものだけが残ったことになる。しかしこの夕日に染まった縄文杉の幹を見ると、風雨に堪え抜いた崇高さと荘厳さを感じる。 (21) 蛸足杉:縄文杉展望台の縄文杉とは反対側に、枝が蛸の足のようになっている杉がある。夕日の周辺は赤とオレンジだが、下側は青と緑だった。
4−3.その他
● 伊勢神宮内宮の原生林 (7): 神宮から南へ約 10km のところに剣峠があり、ここからは内宮の原生林を見渡すことができる。5月の新緑を撮った。
● 日光山王峠 (8): 日光中禅寺湖から川俣温泉へ抜ける道の途中にこの山王峠がある。近くの湯ノ湖周辺の紅葉も格別だが、この峠の紅葉も絢爛で美しい。
● 志賀高原平床 (9) :奥山田温泉から笠岳の裾を回って志賀草津道路に出た場所が平床で、大噴気泉がある。その平床の紅葉は夕日を受けて真っ赤に染まった。
● 口永良部島の繁る椎の木 (10):屋久島の北西 12km に、ひょうたん型をしたこの島がある。島の北東には椎の木の林がある。この椎の木の林を見上げると、空一面に枝と葉が均等に配分されていて、重複せずに隙間なく配置されていて、これは自然が造形した芸術品だと思った。
● 熊野古道大雲取越 (11):熊野那智大社から熊野本宮本社にい至る参詣道、この大雲取越へは那智大社からは約 18km 、徒歩で7時間かかる。かつてはここに「楠の久保旅籠」があり、旅籠が十数軒あり、多くの熊野詣での人達の往来があった。秋深い11月末に訪れたが、誰一人として出会わなかった。静まり返った深い森だった。
● 石徹白の大杉 (12):岐阜県郡上市の白山国立公園にある杉の巨木。幹周り 14.5m 、樹高 35m 、樹齢 1800 年といわれる国の特別天然記念物である。登山口から 420 段の階段を上ると出会える。
● 乳房杉 (13):隠岐諸島最大の島の島後にある大満寺山に、乳房が垂れたように見える杉がある。幹周り 9.6m 、樹高 38m 、樹齢 800 年、幹から乳根が多く下がっている。
● サキシマスオウの木 (14):沖縄の西南にある西表島の南部にある仲間川の上流で、イリオモテヤマネコの探索中に偶然発見された。奇妙な板根を持つ樹齢 400 年の木である。 

2013年9月4日水曜日

白川義員の「永遠の日本」に見る日本の原風景〔5〕

(承前)
3−6 支笏洞爺国立公園
● 倶多楽湖(27)倶多楽湖の日の出:周囲 2km の円形のカルデラ湖。流入流出河川はなく、透明度は摩周湖に次いで国内2位。原生林に囲まれた無人静寂の湖の日の出。
● 支笏湖(28)支笏湖の朝焼け;周囲 40.2km のカルデラ湖で、貯水量は琵琶湖に次いで2番目、面積はカルデラ湖では屈斜路湖に次いで2番目、最大水深 363m は田沢湖に次いで2番目。4年間で最も赤かった朝焼けを収載した。
● 洞爺湖(29)洞爺湖昼景:東西 11km 、南北 9km のカルデラ湖。周囲 50km 、最大水深 180m、湖の中島は標高 455m 、左端の白い山は羊蹄山。洞爺湖一周道路南側から撮影。(30)洞爺湖夕景:車で一周できるので、日の出も日没も撮影できる。これは秋の日没直後に撮影した。右端に羊蹄山。
3−7 十和田八幡平国立公園
● 十和田湖(31)十和田湖錦秋:周囲 46km の二重カルデラ湖。有名な展望台の瞰湖台から10月下旬に撮影。紅葉は見事に真っ盛りだった。
● 後生掛温泉の沼(32)後生掛大湯沼:八幡平北端にある後生掛温泉の西南端にある沼。撮影は10月初旬、紅葉が実に見事だった。
● 南八甲田の沼(33)蔦沼朝光:撮影したのは10月下旬の早朝。日の出直後の長波長の赤い光線を受けて、風景が赤く輝いた。左上に南八甲田山群の赤倉岳。この山の爆発の土砂で沼ができた。(34)蔦沼明暗:「蔦の七沼」のうち最大の沼である。赤倉岳の噴火でこれら七沼が出来た。一般的には6沼(蔦沼、鏡沼、月沼、長沼、菅沼、瓢簞沼)を巡る。もう1つの赤沼は離れているので訪れる人は少ない。七沼の内で最も写真になるのはこの蔦沼で、紅葉の盛りのシーズンには多くの人が殺到し、午前5時に現場へ行ったのでは、撮影場所がない。
3−8  磐梯朝日国立公園
● 裏磐梯の湖沼(38)中瀬沼と磐梯山:裏磐梯にはよく知られた檜原湖がある。磐梯山の爆発で出来た湖である。そのすぐ東側にあるのが中瀬沼で、駐車場から15分歩くと展望台に着く。藻北から撮影するため、日の出前後がよい。この写真は新緑が見事な6月中旬に撮影したものである。
3−9 上信越高原国立公園
● 戸隠高原の池(35)鏡池と戸隠山:戸隠高原にある鏡池は、前方にある風景をまるで鏡に映したかのように見せることから名付けられたという。我々が撮影した日も湖面は静かであったが、何か風が遮られる地形なのかも知れない。ここは紅葉の名所で、私の写真も紅葉の写真ばかりである。今回の「永遠の日本」は紅葉の写真ばかりとなったが、それは日本を代表する景観、日本独自の景観、日本にしかない景観、それらはすべて紅葉だからである。外国には黄葉はあっても紅葉はない。ただ今回の鏡池の2点は、思い切って緑の風景にした。しかし晴々とした素晴らしい写真景となった。(36)鏡池と西岳:戸隠山の左、西南方向にあるのが西岳である。水面が静かで、まるで夢の中の風景のようだった。
● 志賀高原の池(37)志賀高原蓮池:志賀高原には16の池や沼があって、さまざまな姿と表情を見せるが、この蓮池の紅葉は格別である。湖畔散策路から撮った。
● 妙高高原の池(39)妙高高原乙見池:妙高高原にある笹ヶ峰ダム、高原奥関川の源流に作られたダム湖がこの乙見池である。写真を見てこれがダム湖と思う人はいない。実に静寂そのもの、これ程素晴らしいダム湖を他に知らない。
3−10 日光国立公園
● 中禅寺湖(40)中禅寺湖八丁出島:この湖は男体山の噴火による溶岩で渓谷が埋められて出来た湖である。周囲 25km 、最大水深 163m 。人工湖以外では水面の海抜が 1269m と日本一高い。紅葉の八丁出島を半月山から撮影する予定で出かけたが、渋滞が激しく、急遽宇都宮に引き返し、ヘリコプターを飛ばして撮った。これは半月峠上空から撮ったものである。(41)八丁出島は元々紅葉が美しいスポットであるから、1週間前から戦場ヶ原などを撮りながら最高の時を待った。10月19日、時が来てヘリを飛ばして撮影した。これは湖上から撮ったもので、赤や黄や緑の錦を一杯に纏った大蛇が頭をもたげているかのようで、狙い通りの見事な写真になった。(43)西ノ湖と中禅寺湖:日光国立公園の中心部。画面下が西ノ湖、その右上が中禅寺湖、その左に男体山、中禅寺湖の左手の原っぱが千手ヶ原。紅葉満開の色彩を競う日光高原を空撮。
● 鬼怒川のダム湖(45)五十里 (いかり) 湖:川治温泉の北にある鬼怒川の支流の男鹿川に作られたダム湖で、かつて江戸から丁度五十里であったことからこの名が付いた。紅葉の名所で、秋は一斉に華やかな風景になる。
● 那須岳の池(47)那須沼原池:茶臼岳の南西約 4km にあるこの池と沼原湿原は、以前は一般の人の立ち入りは禁止されていたが、現在は自由に入れる。9月中旬に撮影したが、日没がまるで原色の風景になった。
3−11 尾瀬国立公園
● 尾瀬沼(42)尾瀬沼と燧ヶ岳:尾瀬国立公園は群馬県側と福島県側とに二分される。この時は後者の沼山峠から入って撮った。水面は海抜 1665m の高所にある。6月中旬に尾瀬沼南端から燧ヶ岳 2356mを入れて撮った。静寂の風景。
● 利根川のダム湖(46)ならまた湖空撮:利根川の支流の楢俣川に作られた奈良俣ダムのダム湖。尾瀬ヶ原を空撮した際、すぐ南西方向にあるこのならまた湖の湖面の青さと周囲の紅葉が実に見事なので撮影した。 
3−12 富士箱根伊豆国立公園
● 富士山麓の湖(44)田貫 (たぬき) 湖の富士と月の出:富士山の西麓にある周囲 4km 、水面標高 660m の湖。かつては狸沼と呼ばれていたが、人工的に拡張されて出来た人造湖。4月と8月の20日頃にダイヤモンド富士が見えることでも有名である。日没後の月の出を撮った。
3−13 霧島錦江湾国立公園
● 霧島山群の池(48)霧島六観音御池:主要な霧島連山の山頂は、宮崎県と鹿児島県の県境になっている。その北にあって宮崎県にあるのが六観音御池である。左上が霧島連山の主峰の韓国岳 1700m 。撮影は11月初め、紅葉が盛りだった。(49)霧島大浪 (おおなみの) 池:霧島山群にあって、湖面の標高が 1241m という日本最大の山頂湖で火山湖。直径 630m 、周囲 2km ある大浪池の落日。(50)六観音御池と白紫 (びゃくし) 池:霧島山群の北に、えびの高原と呼ばれる一帯があって、そこには3つの火山湖がある。表題の2湖ともう1湖が不動池である。3湖を巡る一周1時間半の自然研究路が付けられている。写真はこのうちの2湖を空撮した。この辺りはまだ自然が残っている。

白川義員の「永遠の日本」に見る日本の原風景〔4〕

 この第3章の湖沼には50点の写真が収録されている。収載されている湖沼は大概風光明媚な場所にあり、大部分は国立公園や国定公園に入っている。そこで区分けは公園単位とした。しかし所属していない場合もあり、その時は近くの公園に入れて記載した。

第3章 湖 沼  Lake  Regions
3−1 網走国定公園
● 能取 (ノトロ) 湖 (1) 能取湖サンゴソウ。(2) サンゴソウ緋色:北海道網走市の北西に位置する能取湖の南西岸には4haにわたってアッケシソウが生えていて、秋になると一面サンゴを敷き詰めたように真っ赤になる。そのためこのアッケシソウがサンゴソウと呼ばれるようになった。名前の由来は最初に厚岸 (アッケシ) 湖で発見されたことによるが、現在厚岸湖ではほとんど見ることはできない。この植物は塩分を十分に含む湿地以外には生育せず、絶滅危惧種に指定されている。この2点の写真は、湖の南端にある群落を9月下旬に日の出直後に撮影したもので、昼間よりもサンゴソウがずっと赤く写った。
3−2 阿寒国立公園
● 摩周湖 (3) 神の山の日の出:摩周湖西岸のほぼ中央に第三展望台があって、そこでの日の出。撮影は10月下旬。太陽の下が摩周岳 (858m) で、アイヌ語ではカムイヌプリ (神の山) という。(4)摩周湖朝光:摩周湖は周囲 21km のカルデラ湖で、水面の標高 355m、最大水深 211.5m、その透明度はバイカル湖に次いで世界第2位である。この写真は湖の南端にある第一展望台から撮った日の出で、前の風景とは大分異なる。(5)摩周湖と月:これまで月の出は海外も含めて数百回撮ったが、日没後に東の空がこれほど赤く染まったのは初めてだった。第三展望台に立つと、アイヌ語でカムイシュ (神となった老婆) という中島が見える。水面からの高さ 30m、湖底から 240m の溶岩ドームの頂上部である。(6)静寂なる月の出:第一展望台は昼はバスと車でごった返すが、夜は一転全くの静寂になる。(7)摩周湖俯瞰:摩周湖を東から西に向って空撮した。展望台からは見えていない摩周岳の立派な火口が見える。
● 屈斜路湖 (17)屈斜路湖の夜明け:摩周湖の西方 13km にあり、藻琴山などを外輪山とする屈斜路カルデラ内にできた日本最大のカルデラ湖。周囲 57km 、最大深度 117.5m 。湖としては国内6番目の大きさ。摩周湖と違って周囲から大小の河川が流入し、南端から釧路川となって流出する。これは秋の夜明けの風景で、東の空がこれほど鮮やかに彩色されるのは珍しい。(18)屈斜路湖の太陽柱:美幌峠の展望所から撮った太陽柱 (サンピラー) で、太陽から地平線に対して垂直方向に炎のような光芒を見せる大気現象である。これは風のない静かな日でなくては現れない。滅多に見られない現象で、実に幸運だった.2月19日の日の出直後のことである。(19)屈斜路湖の光の十字架:前の写真の5分後、雲が崩れて氷晶が散り、太陽柱は強烈に反射して光り始めた。そして更に5分後には消えた。(20)屈斜路湖黎明:12月6日の夜明け前に展望台から撮った。辺りは全て氷結している。東の空が明るくなるにつれ、目の前が荘厳な姿になった。
3−3 利尻礼文サロベツ国立公園
● 利尻島の沼(8)オタドマリ沼と利尻山夏景;利尻島の南の海岸近くにあるこの沼からの眺めは定番で、夏には緑が美しい。
● サロベツ原野の沼(9)サロベツ長沼:サロベツ原野には沼が沢山点在しているが、この長沼が最も風光明媚で美しい。
3−4 大雪山国立公園
● 然別湖(10)然別湖秋日:この国立公園は日本では最も広い。その東南部一帯が東大雪エリアで、中心をなすのが石狩岳、ニペソツ岳、それに然別湖である。
● 旭岳中腹の池(11)旭岳姿見の池:大雪山の最高峰旭岳 (2291m) とその中腹にある姿見の池。9月中旬、紅葉は真っ盛り。上部はもう落葉が始まっている。(12)旭岳中腹の池塘:旭岳ロープウェー終点の姿見駅の上にある第一展望所から撮った。紅葉の中に池塘が点在している。池塘を覆っていた旭岳の影が急速に右に後退していくのが素晴らしい。
● 大雪高原湖沼群(13)大雪高原式部沼:大雪山高根ヶ原の東側崖下の森林には多くの沼があり、巡ることができる。この沼はこのコースのほぼ中間にある。この辺りの紅葉は実に素晴らしい。(14)大雪高原えぞ沼:10月初旬に空撮。紅葉に新雪がきた。(15)大雪高原湖沼群:同じ日に南から北へ空撮。左下が大学沼、その右上が式部沼、その右下がえぞ沼、左上隅が高原沼、右上隅が黒沼。(16)晩秋の湖沼:同じ日に空撮。下から式部沼、えぞ沼、湯の沼、左上が鴨の沼。この紅葉も新雪が来て、あと数日限りだろう。
3−5 知床国立公園
● 知床五湖(22)知床四湖:熊が出るとかで閉鎖され、4回目の9月半ばに漸く五湖全体を見て回れた。(23)知床一湖:7月に一湖の湖畔から撮影。背後は左から、羅臼岳、三ツ峰、サシルイ岳。
(24)知床五湖全景:五湖を空撮。左が一湖、真ん中が二湖、その上が三湖、その右が四湖、その下が五湖。(25)暮れ行く知床一湖:この地点は立入禁止になり、今後は一湖の落日は二度と見ることは出来なくなった。(26)知床二湖秋景:紅葉が盛りの10月中旬に撮影。背後は左から、羅臼岳、三ツ峰、サシルイ岳。2007年7月に世界自然遺産に登録されてからは、観光客が爆発的に増えた。