2012年5月7日月曜日

日本の大学合格者数でみた大学の広域性(続)

(承前)  全ブロックでの合格者が示された7旧帝大と3国立大では、筑波大、北海道大、東北大の3校は広域性が極めて高かった。次いで東京大、京都大、大阪大、一橋大も広域性が高かった。一方で九州大と名古屋大は広域性はあるものの、自ブロックからの合格者が多かった。その他の国立大で広域性が高かったのは、横浜国立大、首都大東京、信州大、東京外国語大、神戸大などであった。  なお、記載のなかった国立大が14校、公立大が61校あった。
  C.私立大学の広域性:
 週刊朝日に掲載された私立大学で、2ブロック以上に掲載された大学は49校、1ブロックのみが、北海道に2校、東北に2校、北関東に1校、北陸甲信越に1校、中京東海に6校、近畿に4校、九州に5校、計24校あった。49校のうち、全ブロック掲載校は在京の10校(前出)で、次いで7ブロック掲載がやはり在京の芝浦工業大、駒沢大、専修大、帝京大、東海大の5校、6ブロックが在京の東京都市大、東京電機大、日本大と在関西の関西大、関西学院大、同志社大、立命館大、近畿大の8校である。
 広域性が高かった私立大学は、指数9台が2校(立命館大,東海大)、7台が2校(東京理科大,中央大)、6台が2校(芝浦工業大,帝京大)、5台が3校(明治大,法政大,同志社大)あった。広域性が中程度にみられる指数3.0~4.9の私立大学は、高い順に、4.9が大東文化大,東京電機大、4.8が早稲田大、4.7が工学院大,慶応義塾大,青山学院大、4.6が近畿大、4.4が津田塾大、4.3が東洋大,専修大、3.7が関西学院大、3.6が立教大、3.4が日本大、3.2が京都産業大、3.1が東京都市大、3.0が神戸学院大の16校であった。広域性が低かったのは、2.8の立正大、2.6の駒沢大,東京女子大,関西大の3校、極めて低かったのは2.3の成城大,上智大、2.2の明治学院大、2.1の龍谷大、1.8の広島経済大,成蹊大、1.7の桃山学院大,大阪経済大、1.5の武蔵大、1.4の北里大,学習院大、1.3の日本女子大、1.2の甲南大,摂南大の14校である。また広域性がなかったのは、0.9の大阪工業大、0.8の広島国際大,広島工業大,中京大、0.2の広島修道大、0.1の南山大の6校である。
  D.大学のランキング:
 「大学ランキング」には、大学に対して行なったアンケートを基に、教育、校地・校舎面積、図書館について、学生/教員、校舎/学生、貸出冊数/学生の割合を基にランク付けを試みている。そして上位30%の大学をA、次の40%をB、それ以下をCとして評価・表記している。先に記した2ブロック以上に記載があった国公立大学37校について見ると、教育Aは25校、校舎Aは27校、貸出冊数Aは17校であった。そしてスリーAだったのは、広域性の高い順に、筑波大、北海道大、東北大、東京大、京都大、大阪大、神戸大、九州大、金沢大、名古屋大、広島大、大阪府立大、東京農工大、大阪市立大の14校である。旧帝大は全てこの範疇に入っている。ほかは国立大6校と公立大1校である。一方、私立大学49校について見ると、教育Aは1校のみ、校舎Aは2校、貸出冊数Aは17校あるが、スリーAはなかった。これは学生数が多いことに起因していると思われる。
 また「高校からの評価」というのがあり、全国727校の進路指導教諭から10件以上名前が上がった大学で、「生徒に勧めたい」「進学して伸びた」「広報活動が熱心」の項目で5段階評価(5:上位7%、4:次の24%、3:次の38%、2:次の24%、1:残りの7%)し、総合評価はランキング評価に準じた。その結果、国公立大学でランクAになったのは、広域性の高い順に、東京大,京都大,神戸大,新潟大,九州大,名古屋大,千葉大,広島大の8大学であった。でも広域性が高い筑波大,北海道大,東北大が入っていないのは奇異に感じられた。ちなみに金沢大はBランクであった。一方、私立大学では、広域性の高い順に、立命館大,東京理科大,中央大,明治大,法政大,同志社大,早稲田大,慶応義塾大,関西学院大,立教大,関西大の11大学であった。ここでは在東京、在関西の名門校が該当しているように感じられた。

 以上、週刊朝日が調査した全国3,232高校の主要大学合格者数から、大学のもつ広域性について、独自に解析を試み考察した。また、2011年度の大学ランキングから、大学のランクと高校からの評価を参考までに引用し評価した。

日本の大学合格者数でみた大学の広域性

朝日新聞出版では毎年「大学ランキング」なるガイドを出しているが、2011年版によると、日本には大学が746校あるとされ、これら大学について、多項目にわたる評価がされている。一方、週刊朝日では、毎年全国の高校の国内大学への合格者数を調査して、その結果を掲載している。今年は 4/20増大号に全国3,232校の国内の主要大学148校への合格者数を掲載した。高校は都道府県別に記載されていて、ブロックごとに国公立大学22校と私立大学30校を対象にして合格者数が掲載されている。このうち全ブロックに共通なのは、国公立大学では10校で、旧帝大7校(東京,京都,北海道,東北,名古屋,大阪,九州)と東京工業大、一橋大と筑波大(旧東京教育大)、一方私立大学は在京の10校で、早稲田大学、慶応義塾大、上智大、東京理科大、明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大と東洋大である。このほかに、ブロックごとに、地域に根ざした地方大学を国公立64校、私立72校を選択して記載している。
 週刊朝日では、全国を9ブロックに分けているが、私は中四国を中国と四国に分け、10ブロックにして集計した。でも後で分かったことだが、山陽の3県と四国の4県とは瀬戸内海を挟んではいるものの、極めて密接な関係があることが分かった。またブロック分けは、週刊朝日独自のものと思われるが、区分はともかく、ブロック名は特に断ってないので、普遍的に用いられている名称もあるが、独自に付けたものもある。以下にブロック名と所属する高校数(括弧書き)、包括される都府県と高校数(括弧書き)を記載する。   [1]北海道(159).[2]東北(197):青森(33),岩手(31),宮城(43),秋田(25),山形(26),福島(39).[3]北関東(164):茨城(74),栃木(45),群馬(45).[4}南関東(932):埼玉(164),千葉(146),東京(398),神奈川(218),海外(6).[5]北陸甲信越(222):新潟(53),富山(27),石川(40),福井(27),山梨(27),長野(48).{6]中京東海(371):岐阜(57),静岡(109),愛知(162),三重(45).{7]近畿(581):滋賀(39),京都(81),大阪(214),兵庫(172),奈良(41),和歌山(34).[8]中国(198).鳥取(18).島根(23),岡山(41),広島(77),山口(39).[9]四国(93):徳島(17),香川(23),愛媛(37),高知(16).[10]九州(315):福岡(105),佐賀(20),長崎(34),熊本(33),大分(32),宮崎(28),鹿児島(42),沖縄(21).
  A.広域性を示す指数の算出と評価:
 記載のあった3,232高校の各大学への合格者数をブロックごとに集計し、各大学が所属する自ブロックの合格者数と他のブロックの合格者数を比較し、他ブロックの合格者数が自ブロックの合格者数に対して占める割合を出した。そして他ブロックの合格者数を自ブロックの合格者数で除し、その数字を10倍した数を「広域性を示す指数」とした。もし他ブロックと自ブロックが同数ならば、その指数は10.0となる。また他ブロックの合格者数が自ブロックの半数ならば、指数は5.0となる。 このような作業を国公立大学と私立大学とに分けて算出した。指数が10.0以上(他が自と同数以上)を「広域性が極めて高い」①とし、①未満で指数が5.0(他が自の半数)以上を「広域性が高い」②とし、②未満で指数が3.0(他が自の3分の1)以上を「広域性がある=中程度」③とし、③未満で指数が2.5(他が自の4分の1)以上を「広域性が低い」④とし、④未満で指数が1.0(他が自の10分の1)以上を「広域性が極めて低い」⑤とし、⑤未満(他が自の10分の1より少ない)を「広域性がない」⑥とした。
  B.国公立大学の広域性:
 週刊朝日に収載された国公立大学74校のうち、自ブロックにのみ収載された地方大学は37校で、他ブロックからの合格者はあると思われるが、この集計に入ってはいない。一方1以上の他ブロックから合格者があったのは37校で、全10ブロックが10校、7ブロックが2校、6ブロックが2校、4ブロックが1校、3ブロックが6校、2ブロックが16校であった。
 このうち広域性が極めて高かったのは、筑波大(34.3),北海道大(13.2),東北大(12.1),香川大(10.2)の4校、次いで広域性が高かったのは、横浜国立大(9.6),岡山大(9.4),東京大(9.1).京都大(8.7),大阪大(8.3),愛媛大(7.4),首都大東京(7.4),高知大(6.8),山口大(6.6),信州大(6.5),東京外国語大(6.4),一橋大(6.1),神戸大(5.6)の13校、また広域性が中程度なのは、東京工業大(4.7),新潟大(4.6),電気通信大(4.5),九州大(4.2),金沢大(4.0),埼玉大(4.0),名古屋大(3.7),徳島大(3.3),千葉大(3.3)の9校、広域性が低かったのは、広島大(2.9)と静岡大(2.8)の2校、また広域性が極めて低かったのは、茨城大(2.1),福井大(2.0),お茶の水大(1.9),大阪府立大(1.3),横浜市立大(1.2),東京農工大(1.0)の6校、広域性がなかったのは、鳥取大(0.8),大阪市立大(0.8),鳥取大(0.5)の3校であった。
 この数字から見て、広域性が極めて高い香川大では、岡山県からの入学者が多い結果であって、週刊朝日での括りのように、中四国として扱えば地元ブロックのみとなり、広域性はなくなる。また同じように広域性が高い岡山大は香川・愛媛から、愛媛大や高知大は岡山・広島からの合格者が多く、同じように中四国として扱えば広域性はなくなる。ただ山口大は四国各県からの合格者は少なく、むしろ北九州からの合格者が多い。広域性が中程度の徳島大も岡山からの合格者が多く、同じように考えられる。また広島大は当初から広域性が低いし、鳥取大と島根大には広域性はない。すると、中国の山口大を除く4大学と四国の4大学は、ブロックを中四国として扱うと広域性はないと言える。