1.くろゆりスキーツアー志賀高原行
私の古巣の衛生研究所、今は石川県保健環境センターというが、そこでは20年位前からくろゆりスキークラブが中心となって、毎年正月にスキーツアーをやっている。私が現役の頃は細胞培養を手がけていたので1日ならともかく2日空けるのは困難で参加してなかったが、退職してからはほぼ毎年参加していてもう12年になる。案内は11月に来る。今年は1月9〜12日の予定、9日の晩に金沢を発ち、10、11の土・日の全日と12(祝)は現地午後3時発で金沢へ戻るスケジュール、順調なら丸2日半は滑られる予定である。
出発は午後7時、大型バスに20人ばかり、採算が合うのかと訝る。志賀高原まで4時間ばかり、後部座席は宴会モード、日本酒、ビール、カンチューハイ等々、圧巻は自家製の焼きそば30人前、よくぞ勤務中に作成したと感心する。その費用は3千円とか、業務用というのは安いらしい。志賀高原はこの年末から年始にかけては雪が少なく、全面滑走は無理だったらしいが、ようやく正月寒波の到来で滑られるようになった。飲んで喋って4時間、雪の志賀高原に着いた。宿のある蓮池は志賀高原の中心、そのロータリーの近くに宿はある。五郎兵衛という。雪が降っている。
翌朝は午前8時の出発、気温は低く-14℃とか、雪は粉雪だ。宿の前は道路から急な上り坂となっていて、坂を上がれない車が3台、立ち往生している。そのうちの1台が私達のグループに合流する東京からの連中だったとは、気付かなかった。朝食を済ませ外で待つが、全員揃うのにえらく時間がかかる。子連れの3組と夫婦1組、それに女性軍は別行動、東京組も悪戦苦闘の疲れと風邪で休養、残るは8人。当初は蓮池で小手調べとのことだったが、このメンバーならとジャイアント経由でブナ平へ行こうと。蓮池からジャイアントへ出るには狭い連絡ルートを通って行かねばならない。これまでも何回か通っているが、狭い上にアップダウンがあり、好きなルートではない。でも行くしかない。ところが滑り出した皆について行こうとするが、何故か私のスキーは全く滑らない。どうなってしまったのか全く見当がつかない。スキーが滑らないので、歩かねばならない始末、雪は降っているが、見通しは良い。新雪のせいかなと思ったりもするが、下りになっても滑らず、焦ってしまう。後から来る人に狭いながら道を譲って通ってもらう。こんなことは初めてだ。いつもならば滑って2分位で着くのに、それをすべて歩き、どれ位かかったろうか。20分は要したかも知れない。やっとジャイアントゲレンデの中腹に出た。
この斜面は急で圧雪車は入らない。斜面には新雪が20cmばかり積もっている。斜めに斜面に入ろうとするが、滑らない。これは重症だ。最大斜度に向かうと落ちるように滑るものの、ターンをするとブレーキがかかったようにググッと止まってしまう。湿雪が単板のスキーに下駄を履いたようにダンゴ状にくっついて全く滑られなかった経験はあるが、今の合板のスキーで、しかも粉雪、スキーの裏に雪がくっついている様子もないのに、でも滑らない。ジャイアントの斜面をスキーを履いて歩いて下りねばならないとは、正に前代未聞の出来事、でも滑らないのは事実なのだ。やっとの思いでジャイアントのリフト乗り場に辿り着いた。スキーを脱いで滑走面を見る。すると、滑走面に金平糖のような氷が一杯くっついている。大きなものから小さなものまで、手で擦っても取れない位しっかりとくっついている。こんな経験は初めてだ。ドライバーを借りて、一つ一つこそげて取る。全部取るのに20分位要したろうか。どうやら済んで、よく踏まれたコースでスキーを履くと、何とか滑られそうだ。しかし滑りはよくない。やっとリフトでブナ平へ、随分と時間をロスした。リフトを降りたところでメンバーの何人かに出会う。休憩は「いこい」というロッジでという伝言、でも1本も滑っていないものだから、何本か滑ってから行くことに、雪は間断なく降っている。少し風も出てきたようだ。3本滑ってロッジに逃げ込む。まだ客が少ないからか、ストーブも点けていない。なんというサービス。食事もまだ準備中。リーダー持参の酒を飲む。
11時近くになり、漸くご飯物が解禁、熱い麺類と思ったが、担当者がいないとかで、丼物で済ます。何ともサービスがよくない。正午近くになり、やっとフルコースに。外は吹雪の様相、お客が入り込んできて店は混んできた。お酒もなくなって腰を上げることに。取りあえず西館山から高天ヶ原へと。雪の中、ブナ平を一番下まで下る。下の方はかなり急だ。リフトを乗り継いで西館山へ上る。雪はかなり降っていて、視界もよくない。高天ヶ原側のゲレンデを滑り降りた時点で、私は雪の中を滑る気力がなくなり、バスに乗って蓮池に帰ることにする。我ながら軟弱だとは思うが、無理はすまい。それに吹雪のスキーは楽しくない。時刻表ではバスは1時間に1本、20分待ってバスが来た。正に雪まみれ、ほうほうの態で宿に帰る。まだ3時前だった。
部屋に戻ると、東京組の一人は風邪でずっとお休みだったとか、もう一人は手持ちぶたさな様子、私は風呂へ、誰もいない、ゆっくり浸かる。部屋へ帰り、うがいを兼ねて、ビールとお酒を、彼氏にも勧める。テレビを見ながら四方山話、彼らは国の原子力保安関係の若手職員、このツアーの参加者にも、県から派遣されて、2年間彼らの薫陶を受けた者がいる。4時半過ぎに漸く皆が帰り着く。東館山や西館山からスキーで宿に帰るには、どうしてもジャイアントの上りリフトを利用しなければならず、終了は4時なので、それまでに乗らねばならないという制約がある。どうやら皆間に合ったらしい。それにしても雪中スキーとは皆さん元気で若い。見れば70代は私一人、60代が一人、50代が一人、後は40代以下ばかり、元気なわけだ。私のスキー板の裏に氷が着いたことを話したら、ワックス塗らないなんて非常識だと言われてしまった。中で抜群にスキーが上手い御仁が特別に小生の板にワックスをかけてくれた。感謝々々。明日は天気は曇、期待しよう。
3日目は8時始発のバスで、横手山に向かう。笠岳で下りて、このスキー場で2本ばかりダウンし、回り込んで熊の湯へ、1800m以上はガスがかかっている。でも天候は好転の兆し、寒いが滑りは快適。1時間位滞在してから、横手山への連絡ルートへとの伝言。聞いて第3クワッドの頂から連絡ルートへの入口に入り損ない、下り過ぎて急な斜面を上り返す破目に、これには体力を消耗した。やっと連絡ルート入口へ、本来なら勢いで滑られるのに再び歩き、スケーティングが出来ない悲しさ、どうも平らなルートは苦手で往生する。奮闘して漸く横手山のリフト乗り場に、そこであの抜群に上手い御仁と一緒になる。この第2スカイと次の第3スカイを乗り継ぐと横手山の頂上だ。ところが途中でストップ、10分も宙ぶらりんになった。気温が低いので周りの木々は樹氷で真っ白、時折陽が射すと、空気中にある雪の塵がキラキラと輝く。久しぶりに見たダイヤモンドダスト、幻想的だ。リフトが止まっていても余り苦にならなかった。強風で運転中止かもとのことだったが、何とか動いている。でも時々突風で大きく揺れる。やっと終点。件の御仁は滑らないでリフト終点の2階にあるラーメン屋へ直行、いつもの溜まり場だ。一部は向かい側にある、これまた有名な山頂ヒュッテの手作りパン屋に、いずれは此方に合流するはずだ。熱燗とおでんと野沢菜を所望、御仁はお酒を4L持参、熱燗は体が温まる。温まったところで、持参の「立山」、これがまた美味い。昨年の吹雪の脱出劇のことを思い出す。今日は風が強く寒いが、視界はよい。「立山」は口当たりが良く、瞬く間に無くなる。次は飛騨の「鬼ごろし」、これもみるみる減ってゆく。残り少なくなったところで、熱いチャーシューめんを腹に入れ、渋峠へと向かう。彼らは1時頃まで滞在とか、6本滑って1時近くに引き揚げる。そのまま横手山から下る。急な林道も快適、リフト中継点から下はもっと快適、あまりの気持ち良さにここを4本、枝のゲレンデも3本滑った。皆さんは前山でビデオ撮影のはず、2時頃までとかだったが、私が着いたときは15分過ぎ、後で聞いたところ、その刻はバスに乗る時間だったそうだ。前山の28度の壁と迂回路を滑ってから、バスで蓮池へ。今日はこれまでとする。宿には先着2組、板はビデオ鑑賞で賑わった。スキーの上手い御仁の的確なアドバイスが印象的だった。
4日目は11時にプリンスホテル西館に集合、私は東館山の蕎麦屋と寺子屋山へ行きたく、皆と別れ、ジャイアントを下り、発哺温泉からゴンドラで東館山の蕎麦屋へ、そして寺子屋山へ。天気は好いが山の斜面はガリガリ、1本で止めて一の瀬へ、ファミリーゲレンデを下り、ダイヤモンドゲレンデから山の神を経て焼額山へ上がろうとゴンドラ乗り場へ。ところが凄い混み様、聞けばもう1本のゴンドラが強風で運休とか、乗れるまでに40分もかかった。こんな待ちは何年ぶりか。運転も風でノロノロ、仕方がない。焼額山の頂上からは一気にプリンス西館に滑り込んだ。食事をして正午に来た時と逆のコースで宿へ向かうことに。でもこの頃から雪が舞ってきた。そしてやがて天気は急変して雪は本降りに、帰りを急ごう。皆さん一の瀬から高天ヶ原へとのことだが、私は一の瀬からタンネの森を抜けて、高天ヶ原のバス停へ向かうことに。雪はバタバタと降っている。2日目と同じパターン、宿には1時過ぎに着いた。こうして今年のスキーツアーも終った。
金沢へ帰ったら20cmの積雪、大型バスはセンターの構内に入れず、荷物を道路から雪の中をセンターまで運ぶ破目に。昔、スキーから帰ったら1mもの積雪で車を掘り出せず、仕方なく小立野まで歩いたことを想い出した。それに比べればやさしいもんだ。私が殿でセンターを後にした。
2.瀬女高原スキー行
志賀高原行きの後、土日になると天気がよくなく、一度も地元のスキー場に足を運べなかった。月末になり28、29と天気が好いので、29の木曜日、休暇をとって瀬女へ出かけることにした。−2℃の朝、このシーズン初の地元ゲレンデ、天候は保証済みである。8時に家を出て、着いたのが9時、ガリガリだが、斜面は圧雪車で綺麗に均されている。駐車場に停まっている車は80台ばかり、平日はこの程度なのか。ゆっくり滑られそうだ。ゴンドラリフトで上へ。デジカメを前田さんの勧めで更新したものの、志賀高原ではついぞ撮る出番がなかった。ところで今日は1日晴れ、取りあえず高速ペアリフトの降り場へ行き、このスキー場の最高点の1110mから、白山、笈ヶ岳、大笠山を撮ることにしよう。
まずドキドキコース(1200m、最大斜度31度)へ。でもこのコースはまだ陽光が当たらずガリガリのまんま、人影が見えないゲレンデなんて初めての体験、平日だとこんなこともあるのかと、感心しながら悠然と滑り降りる。高速ペアに乗り最高地点へと上ると、山々は朝日を浴びて輝いている。三村山へ登るのか、3人が輪かんじきを履いて準備している。斜面はかなり急だし、途中やせ尾根もある。でも1日天気が好さそうだから、楽しい山行になろう。ここからは二百名山の笈ヶ岳の登路になっている西尾根も、昔は大笠山への登路だった中宮山(1339)から大フクベ山への尾根も間近に望見できる。口三方岳、中三方岳、奥三方岳、奈良岳、見越山も見渡せる。
最高地点からレストハウスに下り、ハウス横から陽の当たっているルンルンコース(1500m、最大斜度27度)へ滑り込む。滑る人はいるが疎ら、ボードとスキーは半々、コースは実に快適、下りて高速クワッドで上に上がり、ワクワクコース(1400m、最大斜度29度)へも。この3コースはいずれも高度差400mばかり、午前の最後はパノラマコース(最大斜度29度)へ、ここはゴンドラ乗り場まで3400m、700mダウンのコースだ。ここまではほとんど休みなしに滑った。そんなにガツガツすることはないのだが、気温が上昇してくると、どうしても雪質がザクザクしてきて、滑りが悪くなる。この日も最高の滑りは11時頃までだった。昼食を済ませて3コースを3本ずつと最後はパノラマコースを滑ってお終いにする。今日は午前2時間半、午後2時間の滑り、滑降本数22本、滑降高度差9290mだった。志賀高原ではよく滑った3日目でも、滑降高度差は3400m、この日の滑りは平常の3倍位に当たる。これはリフト待ちが全くなく、しかもリフトは高速リフト、ゲレンデも荒れてなくよく整備されていて、しかもスキーヤーやボーダーが少ないという好条件が重なったからと言えよう。
勤務を辞めると、このような条件の良い日を選んでフラッと出かけられるのにと、ふと思ったりする。
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