2013年9月30日月曜日

白川義員の「永遠の日本〕に見る日本の原風景〔14〕

(承前)
8.12 雲仙天草国立公園/天草諸島
 (92)天草・龍仙島落日:この国立公園で、雲仙は長崎県、天草は熊本県に属している。天草は大きく上島と下島とに分けられ、写真になる被写体は圧倒的に下島に多く、下島でも西海岸と南端に集中している。この写真は下島南端の牛深の南西 8km の沖にある龍仙島を、牛深から先に延びている岬の突端まで行って望遠レンズで撮ったものである。日本で落日を撮ると、スモッグが邪魔をして、輝く夕日を撮るのは中々難しい。(93)天草・砂月海岸:下島の南端では、小さな岬が南西と南東に延びていて、岬に囲まれた奥にこの砂月海岸がある。青い海と空を分ける水平線が一直線で、波打ち際の白い波も一直線、見渡す限り人一人いない不思議な風景であった。(94)天草・大ヶ瀬夕景:下島の西海岸を走る国道 389 号線は別名サンセット・ラインと呼ばれて、夕日を満喫できる名所が続く。我々は海岸線まで下りて、大ヶ瀬の岩と落日を組み合わせて撮った。(95)天草・茂串海岸:ここも下島の西南端にある。写真の左方には白い砂浜の海水浴場があり、かつてNHKのロケ地になったことがあって、その記念碑が立っている。自然破壊である。

8.13 日南海岸国定公園/青島
 (96)青島の日の出:宮崎県の青島は国の特別天然記念物に指定されている。周囲たった 1.5km、海抜 6m の小さな島の海岸が「鬼の洗濯板」といわれていて、岩が板状に数百メートルも規則正しく北東から南西に延びている。岩の板と朝日を撮った。(97)青島・浸食された岩:硬さの違う砂岩と泥岩が重なった岩盤がこの辺り一帯を覆っていて、それが長い年月の間に浸食され、柔らかい層が洗い流され、独特な波状岩が形成された。干潮時には沖合に 100m も現れる。(98)青島・鬼の洗濯板:青島の地元では「鬼の洗濯岩」と呼んでいたが、今の名前に統一した。いずれにしても、岩石の柔らかい層が波に浸食されて今日の姿になった。(99)青島・岩面の造形:柔らかい岩層が、長い年月の間に波に浸食されて、硬い岩だけが残ったとしても、その岩膚を見ると、とても繊細な模様なのに驚く。
 
8.14 霧島錦江湾国立公園/薩摩半島
 (100)開聞岳朝陽:薩摩半島の南端に南九州市があり、その海岸に番所鼻自然公園がある。ここの海岸に出ると、この風景に出くわす。右に見える端正な三角形の山が標高 924m の開聞岳である。(101)長崎鼻の岩礁:薩摩半島の最南端の突端にあるのが長崎鼻で、ここから眺める開聞岳が最高と言われている。それでその反対側を見ると、この岩礁がある。この方も見事で、日の出直後に撮影した。昼間は観光客が多くて撮影は大変である。

8.15 屋久島国立公園/屋久島
 (102)屋久島・原海岸の夜明け:屋久島の東南に原という集落があり、その海岸にある原漁港の朝焼け。有名な千尋の滝はこの漁港の北にある。この日の朝焼けは物凄いと形容していい程だった。(103)屋久島・いなか浜:屋久島の北東部に「いなか浜」という海水浴場がある。撮影したのは8月だったが、海水浴客は一人もいなくて、砂浜は足跡一つなく風紋まであって、何とも不思議な素晴らしい風景であった。(104)屋久島・船行川河口:屋久島の東面に安房という大きな町がある。その北方を流れているのが船行川で、その河口にある岩礁である。赤っぽい岩が硬く、黄色い岩が柔らかく、波浪の浸食で削られつつある。(105)屋久島・永田浜:屋久島北西の「いなか浜」の南にあるのがこの「永田浜」である。この辺りは「前浜砂丘」や「千本松原〕やこの永田浜など、素晴らしい風景が続く海岸である。眺めが美しい岳之川の河口である。(106)屋久島・平野海岸の日の出:屋久島東面の安房の南 3km   にこの平野海岸がある。岩礁が多くて眺めのいい海岸である。そこから撮影した日の出の太陽。早朝であるのに、スモッグで太陽が輝かないのが残念である。

8.16 西表石垣国立公園/石垣島・西表島
 (107)石垣島・暁の白保海岸:八重山諸島の石垣島の東岸に白保海岸がある。この辺りは九州や本州と違って、スモッグがほとんどないせいか、日の出でも日没でも、太陽そのものがカッと輝いて真っ白に飛んで、太陽の輪郭が見えなくなる。だからこの写真のように、まだ薄明の空を撮っても、中天は真っ黒で星が煌煌と輝いているが、東の空は、地平線のオレンジ色から赤・紫・青、そして中天の黒まで、色彩の差を肉眼ではっきり克明に識別できるのである。画面上部の星は金星、右方上下に3つ並んでいるのがオリオン座の三つ星、その左方に光っているのがペテルギウス等々、多くの星が夜明けの空を彩って輝いている。(108)白保海岸とモンパの木:モンパ (紋羽 ) の木は熱帯から亜熱帯の海岸に生える低木で、別名「浜紫の木」ともいわれる。白保海岸の所々にこのモンパの木が自生していて、南国らしい情緒溢れる風景を醸し出している。(109)石垣島・ダテフ崎夕暮れ:石垣島北部西岸のダテフ崎での落日の光景である。夕陽は強烈で白く調子が飛ぶから、水平線に雲が湧いて漸く絵になった。(110):石垣島・米原海岸:石垣島の北面に米原海中公園がある。その海岸には白い砂浜と青い海、そして手前の砂浜には朝顔のような花が一面に咲いていて、珍しい風景に出会った。コントラストが素晴らしい。(111)石垣島・平久保崎:石垣島最北端の岬が平久保岬、その突端からの風景。上部の細長い濃い青の所が外洋、すぐ手前の薄茶色の所がサンゴ礁で、風が強い日にはこのリーフに打ち寄せた波が白く舞う。日本離れした広大な風景である。(112)石垣島・底地海岸の落日:石垣島の北西部に崎枝湾がある。その北部にあるのがこの底地海岸。かつては沖縄は米軍に占領されていたから、地図にはスクジ・ビーチと表記されている。ここはビーチであるから砂浜で海水浴場と思われるが、撮影時の7月末は暑い盛りであるにもかかわらず、人が一人も居なかった。写真をみて咄嗟に日の出と思うだろうが、これが沖縄の日没である。それ程スモッグがなく空気が透き通っている。(113)西表島・南風見田 (はえみた) 浜:西表島南部に島を周回する県道 215 号線の終点から 4km 先の岩礁の中に、浸食された特異な形をした岩がある。(115)南風見田浜の岩礁:2km 続く砂浜の一部の 40m-50m の範囲に、波浪で浸食されて独自の造形をした岩が点在している。人知の及ばない造形である。(115)西表島・浦内川河口:西表島の南東から北西の端まで流れる島で最も長い川が浦内川で、その河口とマングローブの林である。海との接点の水の中に森林が出来ている。南国らしい我々には珍しい風景である。(116)石垣島・名蔵湿地:石垣島の西面に大きな名蔵湾がある。そこに流れ込んでいる名蔵川の河口が広大な湿地帯を形成し、網張 (あんばる ) と呼ばれ、野鳥の飛来地として有名である。この湿地帯に密生するマングローブの林、ここの木々は支根が少ない。(117)永遠の日本の旭日:石垣島の東面、白保海中公園にある白保海岸から日の出の太陽を撮った。太陽の輝きが強烈で、輪郭が判らないほど真っ白にならないよう、露出を5分の1に切りつめた。写真集の最後を飾る写真は、大概夕日か月で締めくくるが、今回は敢えて日の出の太陽にした。明日の日本にはまた燦然とした輝く太陽が昇る。
 私は、日本人よ自然に帰ろう、と呼びかけている。人間如何に生きるべきかを自然と対話しながら考えてほしいと願っている。それがこの『永遠の日本』を制作した目的の総てでもある。

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