2013年9月11日水曜日

白川義員の「永遠の日本」に見る日本の原風景〔7〕

 この第5章のタイトルは「渓谷・河川」で、ここには23点の写真が収載されている。この章での撮影地は国立公園内なので、配列は北から順に示した。したがって写真の配列は本での配列とは異なっている。また国立公園の末尾に下流域の河川名を記した。

第5章 渓谷・河川  Rivers  and  Gorges
5−1 大雪山国立公園/石狩川上流の渓谷
 層雲峡は大雪の山々が大噴火し、その溶岩で埋め尽くされた大地を、石狩川が浸食して、高さ 200m、長さ 24km に及ぶ大峡谷を作り上げた。ただ左右に立ち並ぶ柱状節理の岩峰だけなら大函までの 15km に限られる。上川から入って層雲峡入口からホテル街までに名前の付いている岩峰が 29峰、その先にも11峰、それに加え流星の滝や銀河の滝もある。谷底には国道 39 号線が通っていて、車の中からもこれら岩峰を見ることができ、特に紅葉の季節は壮観である。この層雲峡は大雪山の北側にあるが、西側には天人峡がある。岩質も成因も層雲峡と全く同じだが、この大地を削ったのは石狩川の支流の忠別川である。 ● 天人峡(1) 七福岩:北海道上川町の天人峡温泉にあり、この先には有名な羽衣の滝もある。下の忠別川から7本の岩峰がそそり立っているのは圧巻で、特に紅葉真っ盛りの景観は実に素晴らしい。撮影は10月初旬。 ● 層雲峡(2) 双子岩:地名はかつてアイヌ語でソウウンナイ (滝の多い川) であったのを、1921年に大町桂月が層雲峡と命名したとされる。写真の左が双子岩、右がこうもり岩で、ホテル街のすぐ下流にある。年間 300万人が訪れるという。撮影は10月初旬、紅葉が盛りだった。(3) 九老峰:層雲峡下流にある岩峰で、右端が兜岩、左に九老峰、その左は無名峰、左端が普賢峰。(4) 胡蝶岩:層雲峡入口にある岩壁で、赤い大きな岩の姿が、丁度美しい蝶が羽を広げたように見えるところから命名されたという。
5−2 十和田八幡平国立公園/奥入瀬川と北上川の上流の渓谷
 十和田湖の子 (ね) ノ口から流れ出した奥入瀬川は、14km 流れて焼山で蔦川と合流するが、この間が名高い奥入瀬渓谷である。奥入瀬は谷底を流れる一本の川で、写真 ( 静止画像 ) にするには難しい被写体である。しかし肉眼で流れを見ていると、人の心を癒し安心させ気持ちを豊かにさせる。春も夏も秋も奥入瀬は人を引きつける。 ● 奥入瀬渓谷(7)秋:秋の紅葉は素晴らしいが、人が多くて撮影に苦労する。(8)夏:夏の青空が水面に反射して、流れも青く夏らしい奥入瀬になった。(9)春:春は奥入瀬の代表的な場所とされるほぼ中間地点の馬門岩で撮った。 ● 八幡平(16)松川渓谷:北上川の上流の松川渓谷は、松川温泉と八幡平温泉を結ぶ岩手県有数の紅葉の名所である。紅葉を狙って現地に入ったが、紅葉よりは渓谷の柱状節理に魅せられた。
5−3 磐梯朝日国立公園/阿武隈川・須川上流の渓谷
 (14)吾妻つばくろ谷:吾妻連峰は標高 2000m級の山々が連なる。その連峰を縫うように走るのが吾妻スカイラインで、そこに故井上靖が命名した吾妻八景がある。これはその2番目の「つばくろ谷」。長さ 170m の不動沢橋の上から深さ 84m の谷底を撮ったのがこの写真で、紅葉が実に素晴らしかった。
5−4 日光国立公園/利根川・鬼怒川上流の渓谷
 この国立公園には、ないのは高山と海浜や島だけで、名瀑、湖沼、森林、渓谷、高原、湿原が揃っている極めて珍しい国立公園である。(12)龍王峡:日光鬼怒川温泉と川治温泉の間の鬼怒川渓谷は最も有名で「龍王峡」という。この主要部 3km は岩石の色の違いから、白龍峡、青龍峡、紫龍峡に分けられる。最も景観が良いのは青龍峡で、ここを空撮した。(13)瀬戸合峡:龍王峡のずっと上流の川俣湖に隣接していて、深さ 100m に及ぶ渓谷が 2km も続き、国道 23 号線から見下ろすことが出来る。この有名な紅葉の名所を空撮した。(17)鬼怒川楯岩:鬼怒川温泉にある高さ 70m の巨岩で、楯に似ていることからこの名が付いた。国道 121 号線の立橋から11月中旬に撮影した。
5−5 上信越高原国立公園/信濃川・清津川上流と利根川上流の渓谷
 新潟県十日町市にある日本三大峡谷の一つ。日本三大峡谷とは、この清津峡と富山県の黒部峡谷と、三重県大台町の大杉谷を指す。信濃川の支流の清津川が浸食してこの峡谷を作った。100m を超える岩壁が柱状節理であることが景観を物凄いものにしている。(10)清津峡:この清津峡には 750m のトンネルが掘られていて、4カ所に展望所がある。これは4番目のパノラマステーションから撮ったものである。撮影は11月初旬、紅葉が見事だった。(11)清津峡の清流:これはトンネルの入口から最初にある第一展望所から下を覗いて撮った写真である。岩が柱状節理なので写真になった。(18)湯檜曽川:群馬県みなかみ町。写真下部の白く見えている川原の左方向が、有名な谷川岳の一ノ倉沢である。この川は北の上流でドカ雨が降ると鉄砲水が出やすい。
5−6 中部山岳国立公園/信濃川と姫川の上流
 (5)高瀬川と北アルプス:松本市の近郊を流れる高瀬川に架かる高瀬橋から撮った北アルプス。左の3峰が爺ケ岳、左から南峰、中峰、北峰、画面中央が鹿島槍ケ岳で、左が南峰、右が北峰。右端が五龍岳。撮影は4月中旬、山はまだ白い。(6)松川と北アルプス:白馬村の八方尾根の麓を流れる松川に架かる松川橋から撮った北アルプスの山々。左が五龍岳、右が八方尾根の頂上になる唐松岳。撮影は10月中旬、夕陽を受けて川床のすすきが黄金に輝いている。
5−7 秩父多摩甲斐国立公園/富士川・笛吹川・荒川上流の渓谷
(19)昇仙峡:甲府市の荒川上流にある峡谷。川の水が花崗岩を深く浸食することによって造られた。写真上部の岩は覚円峰と呼ばれる高さ 180m の巨岩。このような形の岩は周辺にいくつもある。ここもまた紅葉の名所で人が多い。
5−8 吉野熊野国立公園/熊野川・北上川上流と古座川上流の渓谷
 奈良・和歌山・三重3県の県境を流れる熊野川の支流北山川にあるのが有名な瀞峡である。(20)瀞峡:田戸の上流に上瀞と奥瀞、下流に下瀞があり、下瀞を瀞八丁といい、全長 31km ある。 写真は山の上から上瀞を撮ったものである。(23)滝ノ拜:和歌山県古座川町。古座川の支流小川の川床が水流によって次第に穴状になり、そこに 8m の渓流瀑があり、これを滝ノ拜という。異様な風景と滝を神と崇めた。
5−9 阿蘇くじゅう国立公園/菊池川上流の渓谷
 ● 菊池渓谷(21)紅葉ヶ瀬:菊池渓谷は熊本県菊池市にあり、国立公園の北西端にある。遊歩道が整備されていて、文字通り紅葉が素晴らしい。(23)四十三万滝:名前の由来は、昭和9年にある新聞社が名勝地募集をしたところ、この滝が 43万票で第1位になったからという。また一説には1日の水量が43万石に因むという。

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