NHK連続テレビ小説の「あまちゃん」は9月28日の土曜日が最終回、惜しまれて視聴者の前から姿を消してしまった。平成25年4月1日に第1回が始まって以来、日曜を除く週6回、26週156回にわたって放映された。私はあまりテレビドラマを観る方ではないのだが、昨年 (1922) 6月末に勤務を辞めてサンデー毎日になってからは、朝の連ドラを観ようと思えば観られるようになった。石川県や予防医学協会へ勤務していた頃は、大概7時過ぎには家を出ていたから、連ドラなど全く縁がなかったに等しい。でも辞めてからは観る気があれば観られるわけで、現に前作の朝ドラは当初はテンポの良い快活な女の子が主役で、この女の子の役にもこのドラマの筋にも興味があり観ていたが、中途からはつまらなくなり、あまり観なくなった。
ところで次の朝ドラの「あまちゃん」は、前評判もさることながら、東北大震災を受けた岩手県の北三陸市(久慈市)が舞台になるということで、震災復興の応援のためにも観てやらねばと思うに至った。話はアイドルを夢見て24年前に上京した天野春子が、大向大吉の一計で母の天野夏が病気で入院したとの報を受けて、一人娘の天野アキを連れて24年ぶりに帰郷したところからドラマは始まる。
このドラマの企画がまとまって、脚本担当の宮藤官九郎 (くどう・かんくろう) や音楽担当の大友良英 (おおとも・よしひで) が、NHKの担当らと岩手県の久慈市を中心に取材したとき、彼らも当初は暗いイメージを抱いていたのに、現地での取材を進めているうちに、何とも明るいイメージが湧いてきたと、二人ともそれぞれが新聞や雑誌やテレビでその印象を語っていた。宮城県出身である宮藤さんは、現地取材をしていている間に、すんなり全26週のシナリオの大枠が出来上がったという。また大友さんも、三陸鉄道北リアス線 (北三陸鉄道 )に乗り、また北三陸の自然に接し、あのオープニングテーマのメロディーがすっと出来上がったと語っていた。あのメロディー、何とも軽快で、赤ちゃんから猫まで画面にかじりつくと聞いて、さもありなんと思った。夏の甲子園の高校野球選手権大会で、3校が応援歌に使っていたが、これには作曲者も本当にびっくりしていた。私もどうしてこんなにも早く取り入れられたのかと、本当に驚いた。それも決勝戦にまで鳴り響いたのだから何とも素晴らしい。彼はこのドラマで300を超す劇中曲を作り上げたという。
主役の「あまちゃん」こと天野アキを演じたのは能年玲奈 (のうねん・れな )、オーディションで1937人の中から抜擢されたという。封筒を手渡されて、中に入っていた紙に、「2013年の連続テレビ小説『あまちゃん』のヒロインは、能年玲奈さんに決定しました」と書かれていたのに、それは次のテストのセリフだとばっかり思って、覚えようと懸命になっていたというから可愛い大物だ。1993年の生まれというが、設定の高校生であっても全くの違和感がないかわゆい女の子である。生まれは兵庫県の山の中の出とか、それなのに海女として潜水に果敢に挑戦したのは凄い根性だ。それと凄くインパクトがあったのは、あの驚きの表現の「じぇ」という言葉、その程度に応じて「じぇじぇ」「じぇじぇじぇ」とエスカレートするのが何とも合理的で、さらに加えることで驚きをグレードアップできるのが素晴らしく、流行語になったというが、むべなるかなである。
ドラマの設定は2008年から震災を挟んだ2012年まで、ヒロインはあまちゃんなのだろうが、出演している皆さんがその場面々々で主役を共軛していて、ドラマを盛り上げていた。だからあまちゃんが上京して、本来なら東京が主舞台になるはずなのだが、随所に北三陸の舞台が現れ、両方同時進行する手法を用いたので、NHKのセットでは大変だったらしい。これも主役一辺倒になっていない気配りがあってこそで、大変良かったと思う。
さて、「あまちゃん」こと、ヒロインの天野アキを演じた能年玲奈についてだが、沢山の方が彼女について語っている。私が見たり聞いたりしたのは、NHK総合の午後1時半少し前から始まる「スタパ」(スタジオパークからこんにちわ)、ここにはかなりの共演者が出演したし、また同じくNHK総合の朝の番組「あさイチ」にも本人を始め何人かが出演した。また私が定期購読している朝日新聞や北國新聞、また週刊朝日でも、演出者や共演者が対談だったりインタビューだったりで彼女のことを述べている。そこで何故か共通して語られるのは、「彼女は天才だ」という言葉である。今まで多くの人がこの朝ドラのヒロインを演じてきたのに、これまでこんな評価のされ方があったのかと考えさせられた。その一端が「あさイチ」で、「あまちゃん」が終了した後に出演した際にそれを垣間見たような気がした。というのは、あの海千山千の有働アナが、ドラマ以外について質問をした時で、ドラマについては歯切れのよい答えが返るのに、その時は言葉選びもあってか返事に時間を要することがしばしばで、失礼にも待てずに話題を中断したり変えたりした。その後に出てきた共演の渡辺えりは逆にポンポン喋るので、時に質問をしているのはあなたではなくて能年さんですとか、自身はアメリカへ特派された実績もある才媛だが、今をときめくヒロインをギャフンと言わせたいような、あるいは変な顔つきを要求するような言動は見ていて噴飯ものだった。こんなに慎重で反応が遅いと思われる彼女なのに、一旦シナリオを手に取り演技をする段になると、途端に変身して信じられない変貌を遂げて、その場に最も相応しいキャストになるとのこと、このことが彼女を天才だと言わしめたのではと思った。(続く)
2013年10月10日木曜日
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