この第8章のタイトルは「海浜・島嶼」で、ここにはこれまでの章では最も多い117点の写真が収載されている。ところで日本列島は四方を海に囲まれた島国であるからして、海岸線が非常に長くしかも多くの島があり、それぞれに素晴らしい景観があろうことは容易に想像できる。ところで白川氏は山岳写真家としてのイメージが強くて、この本でも山岳写真が最も多いと思われたが、山岳の章での掲載は予想に反して105点だった。だからこの海岸と島の章での写真が山の章を超えていることに驚きもした。しかし内容をみると、山以上に多彩な顔を持っていることに更なる驚きがあった。ここでの紹介はほぼ掲載順に、国立公園や国定公園の名を頭に冠して記載した。
第8章 海浜・島嶼 Coastal Regions and Islands
8−1.利尻礼文サロベツ国立公園/利尻島・礼文島
利尻島:日本の北端、稚内の西に位置し、ほぼ円形の日本で面積が18番目の島である。アイヌ民族はこの島をリー・シリ(高い島)と言った。島の中央には標高 1721m の利尻山が聳え、この山がこの島を形成している。南岸の奇岩はこの山の噴火と北の外洋の波浪で造られたものである。(1) 利尻・御崎 (みさき) の光芒:利尻島の南端、仙法志御崎公園からの落日。ここから眺める落日は最高だと称賛できる。(2)利尻・御崎夕照:この御崎の奇岩累々は利尻山の噴火による溶岩で造られた。今日も波涛が逆光に輝いて見事である。夕陽の傾きによって、色彩が黄色から黄金色に、オレンジ色から赤へと変化する。
礼文島:人が住んでいる島としては日本最北端の島である。(3)礼文・地蔵岩:島の南端にある有数の観光地で、ここには高さ 50m の岩峰が屹立している。岩峰と日本海の落日とを組み合わせて撮影した。(4)礼文・澄海岬:島北部の西側海岸にある岬の岸壁がとても素晴らしい。
8−2.知床国立公園/知床半島
(5)流氷と落日:半島のオホーツク海側の南端にある見晴橋から撮った流氷で埋まった海と落日。(6)流氷覆う:見晴橋は海岸線から少し高まった所にあるので、流氷の海を広く撮ることができる。(7)流氷と月:この日の午後ずっと見晴橋で太陽と雲と流氷が演じるドラマを眺めてきた。日没後、西の水平線が真っ赤になった。その後中天に月と一番星が現れた。(8)知床岬と流氷:知床半島の突端の知床岬を取り巻く流氷をオホーツク海の上空から撮影した。岬の岩礁が克明に写っている。(9)流氷と知床連山:網走と知床岬の中間点の上空から撮った流氷と知床連山。一番高いのが羅臼岳、左へ順に三ツ峰、サシルイ岳、オッカバケ岳、硫黄岳、画面右の低いのが天頂山、左に下がって一番低いのが知床峠。(10)知床岬鳥瞰:知床岬の西側は岩礁が続き、更に岩礁は絶壁状に落ち込んでいる。流氷と共に空撮した。(11)知床半島旭日:網走港の東方の海岸から撮った流氷と日の出の太陽である。撮影は2月末、この季節太陽は海別岳の左肩から上がる。全面凍った海に流氷が散在し、久しぶりに出た太陽が海面を真っ赤に染めた。(12)夜明け前の知床半島:網走港の港外から撮影した夜明け前の流氷と知床半島。中央に羅臼岳、右端に海別岳。(13)流氷とサンピラー:知床半島ウトロ港の上部から撮った夕陽のサンピラー (太陽柱) 。夕方になって空気中の湿気が凍り、少し弱いが太陽柱になった。
8−3.下北半島国定公園/仏ヶ浦
(14)仏ヶ浦俯瞰:青森県下北半島にある特異な形をした巨岩や断崖が連なる海蝕崖地である。写真は国道328号線から俯瞰したもので、高度差は 100m ある。右下の幾つか集まった岩峰が「十三仏」、左の白いのが「仁王岩」、中央の青い岩峰が「蓬莱山。その向こう側が「鳳鳴山」。両方から海に突き出た岩盤が「極楽浜」。(15)仏ヶ浦仁王岩:仁王岩を海側の岩礁から撮影した。津軽海峡からの長年月の荒波により、これ程までに浸食されるものか。(16)十三仏と仁王岩残照:極楽浜から太陽が水平線に沈む直前に撮影した。左の岩峰が十三仏、右が仁王岩である。この仏ヶ浦は昔は恐山と一体であって、恐山を参拝した後この仏ヶ浦を巡拝していたという。(17)五百羅漢:この岩の集団は先の岩の集団とは北に離れている。陸からも遠望できるが、近くで見ようとすれば海上からでしか見れない。個々の岩には仏様に因んだ名が付けられている。
8−4.陸中海岸国立公園/三陸海岸
(18)鵜ノ巣断崖の日の出:三陸海岸は太平洋に沿って 200km にわたり断崖絶壁が続く。岩手県田野原村には断崖の中腹にウミウが営巣している場所がある。その崖上から撮った日の出である。気宇壮大な朝。(19)久慈海岸の岩礁:久慈海岸といえば「つりがね洞」や「小袖海岸」が有名だが、この岩礁は久慈港のもっと北にある。(20)矢越崎:有数の名所である田野原村の北山崎にある第一展望台から南望した。画面左の穴の開いた丸い巨大な岩が矢越崎。その左の岩峰がローソク岩。そのバックにある崖が鵜ノ巣断崖である。(21)浄土ヶ浜曙光:浄土ヶ浜の西に三方が崖の山があり、その頂上から浄土ヶ浜の日の出を撮った。1月上旬、太陽は画面の右側から出た。(22)北山崎朝光:北山崎は 200m 級の断崖が 8km も続いていて、海のアルプスと呼ばれている。これは第二展望台から撮ったもので、太陽は左の水平線から出てこの時は崖に太陽が当たるが、その後は終日逆光で日陰になる。(23)浄土ヶ浜・剣の山:岩手県宮古市、5200 万年前、白い火山岩によって半島が造られ、それが浸食されて今日の姿になった。浄土ヶ浜に立つと、入り江の向こう側に白い流紋岩の岩山が並ぶ。北西から鷹岩、エボシ岩、浄土ヶ島、剣の山と南東に続く。剣の山はこれらの岩山のほぼ中央にあり、不思議なことに草木が全く生えず、白い裸の岩山である。白いが故に見る人を魅了する。昔から人は遠くに眺められる真っ白な雪山を白山として信仰した。ヨーロッパ最高峰のモンブランもヒマラヤ 8000m 峰のダウラギリも現地語では白山である。
2013年9月26日木曜日
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