2013年9月6日金曜日

白川義員の「永遠の日本」に見る日本の原風景〔6〕

 この第4章のタイトルは「森林・巨木」で、ここには21点の写真が収載されている。このタイトルで、森林はともかく、巨木は伐られた木も含まれることから、現存している樹木だから、巨樹としてほしかった。この章の大半は白神山地と屋久島の森林や巨木に充てられている。括弧内数字は写真番号で、その前後に写真のタイトルを書いた。

第4章 森林・巨木  Forests  and  Large  Trees
4−1.白神山地
 青森県と秋田県にまたがる13万haに及ぶブナの原生林。そのうちの1万7千 ha が1993年に世界自然遺産に登録された。白神山地は今も隆起が続いていて地盤が極めて弱く、崖崩れが多発して林道建設が困難なこと、この山地は景勝の地とはいえず観光客が少なかったこと、またブナの木は椎茸栽培以外には用途が少なかったこと等の要因が重なって、今日まで手つかずに原生林が残った、日本では極めて珍しい稀有な地域といえる。
 (1) 白神山地と岩木山:地元の人から今が丁度紅葉のピークと聞いて、セスナ機をチャーターして空撮した。この山地には峠が3つあるが、峠からの眺望はありふれていて、絵にはならず、ここは空撮に限る。快晴に恵まれ、満足のいく撮影となった。右遠くに岩木山 (津軽富士) 1625m の端正な姿が見える。 (2) 樹海紅葉:正に樹海は赤に染まっている。ブナは黄葉と思っていたが、光線の具合なのか、見事な紅葉に写っている。遠くに白神岳 1232m と向白神岳 1250m が見えている。 (3) 白神山地山稜:この山地の青森県側に「暗門滝 (あんもんのたき) 」があるが、その周辺の原生林の紅葉である。稜線は赤く、沢に下がるにしたがってオレンジ色、黄色になり、沢の近くでは緑色も見える。 (4) 白神十二湖:青森県側白神山地の西部の日本海のすぐそばに「十二湖」がある。湖沼は全部で 33 あるが、崩山から見えるのは 12 なので十二湖と呼ばれるという。写真中央には白く崩れて見える有名な「日本キャニオン」が見えている。ここでの紅葉はこれからである。 (5) 岳代 (だけだい) 原生林:この原生林は山地の秋田県側にある。7月の原生林は緑一色、実に瑞々しい風景である。 (6) 母なる樹:青森県側山地の津軽峠から山道を5分ばかり歩くと、樹例 400 年といわれる「マザーツリー」と呼ばれるブナの巨木に出会う。胸高幹周り 465cm 、樹高は 30m ある。ブナの寿命は通常 200 年といわれているから、その2倍生きていることになる。
4−2.屋久島
 日本で名だたる巨木が集中している所といえば屋久島である。中でもその巨木を車の窓から間近に見られるというのが紀元杉 (18) で、確かに駐車場の脇に立っている。したがって観光客も多い。その後歩いて巨木を訪ねようとすればヤクスギランドで、入るには入場料が要る。ここには仏陀杉 (15) 、千年杉、三根杉、蛇紋杉等がある。ハイライトは縄文杉を訪ねる山登りで、荒川口から小杉谷のトロッコ道を歩き、楠川分かれから登りになる。最初に出会うのが三代杉 (17) である。山道が急坂になった辺りに立っているのが翁杉 (16) 、その上にウィルソン株、それから大王杉、夫婦杉、最上部に縄文杉 (19,20) がある。
 (15) 仏陀杉:樹高 23.7m 、幹周り 8m 、樹齢は約 1800 年、空洞化が進んでいるが、見るからにとことん生きてきたという風貌をしている。 (16) 翁杉:樹高 21.5m 、幹周り 12.6m 、樹齢約 2000 年、特に幹周りは縄文杉に次いで2番目に太かった。しかし 2010 年に幹が折れて倒れた。したがって今はない。この写真は 2009 年に撮影したものである。 (17) 三代杉:樹高 38.4m 、樹齢 2000 年の一代目が 1500 年前に倒れ、その上に二代目がほぼ 1000 年生長したが約 350 年前に伐採され、その上に今日の三代目が 350 年生長している。三千数百年の間に三代更新した不屈の杉である。根元の空洞化がすさまじい。 (18) 紀元杉:ヤクスギランドの西方にあって、ここまでは車で行くことができ、この杉に最も観光客が集まる。樹高 19.5m 、幹周り 8.1m 、樹齢約 3000 年、頂上部は落雷で枯れている。(19)縄文杉:樹高 25.3m 、幹周り 16.4m 、樹齢推定 3000 年以上、屋久島のほぼ中央部の山中にあり、屋久島では今日確認されている中では最大の杉で、縄文時代から 4000 年以上生きてきたからというのが名前の由来である。 (20) 縄文杉根幹:かつて環境庁が環境週間ポスターで樹齢 7200 年と印刷して一躍有名になったが、これには根拠がない。屋久島は花崗岩なので栄養分が少なく、木の生長が遅く木目が詰まっている。また降雨が多く湿度が高いので、樹脂分が多く腐りにくく、耐久性に優れているため、建築材や造船材として明治時代までにほとんど伐採されてしまった。今日観光資源として残っている杉は、形がいびつで使い物にならないものだけが残ったことになる。しかしこの夕日に染まった縄文杉の幹を見ると、風雨に堪え抜いた崇高さと荘厳さを感じる。 (21) 蛸足杉:縄文杉展望台の縄文杉とは反対側に、枝が蛸の足のようになっている杉がある。夕日の周辺は赤とオレンジだが、下側は青と緑だった。
4−3.その他
● 伊勢神宮内宮の原生林 (7): 神宮から南へ約 10km のところに剣峠があり、ここからは内宮の原生林を見渡すことができる。5月の新緑を撮った。
● 日光山王峠 (8): 日光中禅寺湖から川俣温泉へ抜ける道の途中にこの山王峠がある。近くの湯ノ湖周辺の紅葉も格別だが、この峠の紅葉も絢爛で美しい。
● 志賀高原平床 (9) :奥山田温泉から笠岳の裾を回って志賀草津道路に出た場所が平床で、大噴気泉がある。その平床の紅葉は夕日を受けて真っ赤に染まった。
● 口永良部島の繁る椎の木 (10):屋久島の北西 12km に、ひょうたん型をしたこの島がある。島の北東には椎の木の林がある。この椎の木の林を見上げると、空一面に枝と葉が均等に配分されていて、重複せずに隙間なく配置されていて、これは自然が造形した芸術品だと思った。
● 熊野古道大雲取越 (11):熊野那智大社から熊野本宮本社にい至る参詣道、この大雲取越へは那智大社からは約 18km 、徒歩で7時間かかる。かつてはここに「楠の久保旅籠」があり、旅籠が十数軒あり、多くの熊野詣での人達の往来があった。秋深い11月末に訪れたが、誰一人として出会わなかった。静まり返った深い森だった。
● 石徹白の大杉 (12):岐阜県郡上市の白山国立公園にある杉の巨木。幹周り 14.5m 、樹高 35m 、樹齢 1800 年といわれる国の特別天然記念物である。登山口から 420 段の階段を上ると出会える。
● 乳房杉 (13):隠岐諸島最大の島の島後にある大満寺山に、乳房が垂れたように見える杉がある。幹周り 9.6m 、樹高 38m 、樹齢 800 年、幹から乳根が多く下がっている。
● サキシマスオウの木 (14):沖縄の西南にある西表島の南部にある仲間川の上流で、イリオモテヤマネコの探索中に偶然発見された。奇妙な板根を持つ樹齢 400 年の木である。 

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