2010年9月29日水曜日

荘川の里にある手打ちそば処「蕎麦正」

 過日、探蕎会で荘川町一色にある三嶋家の「式部の庵」へ寄ったが、標榜する「十割手打ちそばの店」は立派だが、出された「そば」は今一の感があった。このことを久保さんに話していると、一度「蕎麦正」へ行ってみたらとのこと、機会あって出かけることにした。荘川そば街道には6店が加盟しているが、そのうちでは最も北に位置している店である。場所は荘川町牧戸にある。庄川の源流はひるがの高原であるが、この荘川町も庄川の最上流に位置している。2005年には高山市に合併したが、それまでは旧大野郡荘川村、合併時の人口は1,400人弱だった。村役場(現荘川支所)のある新渕は標高800m、冬には積雪が2mという豪雪地帯である。
 手打ちそば処「蕎麦正」(そばしょう)の案内を見ると、蕎麦は昔から地元で採れた蕎麦を使っているという。栽培の場所は荘川町黒谷の標高1,200mのダナ高原、通称荘川高原、東海北陸自動車道の南側、あの「式部の庵」のある荘川町一色の東側に広がる高原である。ここは朝晩の温度差が大きく、蕎麦ばかりでなく、夏期には冷涼野菜の栽培にも適した土地、加えて白山連峰や北アルプスを望める岐阜県の美濃飛騨新百景にも選ばれている場所である。そして此処で採れた蕎麦は自然乾燥され、「荘川そば」として提供されているという。正に地産地消である。
 寄ったのはお昼近く、お客さんが多く、名前を書いて予約する。繁盛している。場所は国道156号線と158号線の交点の牧戸交差点から、国道158号線を少し南へ下がった道路沿いにある。駐車場は広く、20台は止められる。蕎麦正の席数は全部で50席、席数が多いこともあって回転が早く、10分程して店へ入れた。四人席のテーブルに3人で座る。50人も入るというのだから、別の部屋もあるのだろう。私達の入った部屋は大きくなく、椅子席で16人しか座れない。何か畳敷きの部屋もあるそうだ。
 おしながきを見て、十割そば1枚、源流そば2枚、岩魚の姿煮1、季節の天ぷら2を注文する。やがて薬味が届く。刻み葱、大根おろし、それに中ぶりの生山葵と陶製のおろし金、そして青い猪口には赤穂の天日塩、この塩はそばの初めの一口に、そば汁でなくて、この塩を一振りして、蕎麦そのものの味と香りを楽しんで下さいとあって、すると蕎麦の甘味が伝わってくるという。テーブルには、「本山葵と箸は持ち帰らないで下さい」と書いたメモが置いてある。出た箸は竹製、太めで先は細くなっていて、一見単なる竹の箸だが、注意書きを読むと、この箸は「やまご箸」といって、成竹を湯ダキして天日干しにして自然乾燥させた後に加工したもので、すべて手作業とのこと、希望の方には500円でお分けしますとある。ほかにも生そばセット(3人前、つゆ付)を販売している。
 初めに「源流そば」が来た。丸い皿に丸い簾の子を敷き、その上に細打ちのそばが載っている。蕎麦正のうたい文句は「石臼による自家製粉」と「挽きたて・打ちたて・茹でたての三たて」だという。とにかく出されたそばは端正できれいだ。十割は別にあるので、二八だろうか。少しお相伴すると、コシもあり、喉越しも良い。次いで天ぷら、季節の畑の野菜、中でもトマトの一品は初めてお目にかかった。擂りおろした本山葵は、直接そばに絡ませてから蕎麦つゆにつけてお召し上がり下さい、すると旨みがお口いっぱいに広がりますとある。実践する。やや間を置いて「十割そば」と岩魚の姿煮(甘露煮)が来た。こちらもきれいな細打ちだ。何故か十割そばには小鉢に刻み海苔が付いている。源流そばよりシコシコ感がある。これは店内のお品書きには載っているが、パンフレットには載っていない。ということは余り打たないような印象を受ける。この店のお客の数は半端でないから、さもあろう。一応建前では仕込みは朝のみ、したがって無くなれば閉店ということになる。
 小生には此処で出された荘川の地で採れた蕎麦の滋味の特徴というものはついぞ実感できなかった。でも出されたそばは美味しく上等だった。この荘川産の蕎麦は、飛騨荘川手打ちそば街道の6店のほか、蕎麦正の姉妹店の飛騨そば街道の4店でも味わえる。

〔おしながき〕単位(円)
・十割そば1300 源流そば1000 おろしそば1000 大根サラダそば1200 そばがき600
・季節の天ぷら500 きのこ汁300 岩魚の姿煮700 そばぜんざい300
・お持ち帰り用(3人前つゆ付)1600 ご贈答用(3人前本山葵蕎麦粉つゆ付)2500
〔蕎麦正の住所ほか〕
・岐阜県高山市荘川町牧戸160-1  電話05769-2-2234
・営業:午前11時~売り切れ閉店  定休日:木曜日

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