2010年9月6日月曜日

煌めく才能が響き合う! IMA日本海交流コンサート

 IMAとは、いしかわミュージックアカデミーの略称で、1998年(平成10年)に開設された「世界レベルの若手音楽家の育成と地域音楽文化の振興」を目指した組織で、以降毎年開催されている。特にマスタークラスはプロの演奏家を目指す若手を養成するコースで、一流の著名な指導陣が講師として招聘されていて、現在では質の高い国際音楽セミナーとしての地位を確立している。講師陣は、ヴァイオリン6人〔IMA音楽監督の原田幸一郎(桐朋学園大学教授・国際コンクール審査員)、クンシトフ・ヴェグレン(ハノーバー音楽大学教授・国際コンクール審査員)、キム・ナムユン(韓国国立芸術大学教授・国際コンクール審査員)、レジス・パスキエ(パリ国立高等音楽院教授)、堀正文(NHK交響楽団コンサートマスター・桐朋学園大学教授・国際コンクール審査員)、神尾真由子(ヴァイオリニスト)〕、チェロ2人〔毛利伯郎(桐朋学園大学教授)、パク・サンミン(韓国国立芸術大学教授)〕、ピアノ3人〔カン・チュンモ(韓国国立芸術大学教授)、ピオトル・パレチニ(ショパン音楽アカデミー教授・国際コンクール審査員)、江口文子(昭和音楽大学教授・国際コンクール審査員)〕である。
 かつての受講者には、庄司紗矢香(1999年第46回パガニーニ国際ヴァイオリンコンクール史上最年少・日本人初の優勝者)や、神尾真由子(2007年第43回チャイコフスキー国際コンクールヴァイオリン部門優勝・日本人2人目)、また今回のコンサートに招聘された申賢守(シン・ヒョンス)(2004年第50回パガニーニ国際ヴァイオリンコンクール第3位/2008年ロン・ティボー国際コンクール優勝:韓国)、クララ=ジュミ・カン(2009年ソウル国際ヴァイオリンコンクール優勝/2010年第4回仙台国際音楽コンクールヴァイオリン部門優勝:ドイツ・韓国)がいる。このアカデミーでのレッスンは5回のみだが、その内容はハイレベルで、受講生にとっては大変濃い内容となっていて、大きな糧になるという。レッスンはすべて公開で、後に公開の演奏会も開かれる。私にとっては地方のIMA受講者から国際的なアーティストが誕生していることは驚きで、これら受講者の演奏を聴くことは、巣立ちする前の若鳥の若々しい音に接しられるという幸運に接しているということにもなる。
 このアカデミーの受講者は日本人より韓国籍の人の方が多い。このコンサートが始まる冒頭の挨拶で、来年からは韓国の方達も聴けるようなツアーを組みたいと話していたが、実現するかも知れない。講師陣にも、ヴァイオリン、チェロ、ピアノに韓国ではトップの教授陣が名を連ねている。韓国の若手ヴァイオリニストのほとんどが、韓国では、IMAの講師に名を連ねるキム・ナムユン氏に師事しているのを見ても頷ける。
 この日のコンサートは、IMA with 井上道義(指揮)&OEK と銘打ってあり、始めにバルトークの弦楽のためのディベルティメントより第1楽章が、IMA受講生選抜メンバーとOEKとで合同演奏された。主体性を受講生に持たせた弦楽合奏、21人中韓国の方が15人、バルトークが亡命前にスイスの山中で作曲した曲、緊迫した雰囲気のある曲を、見事にこなした演奏に拍手が送られた。次いで正戸里佳(2005年第51回パガニーニ国際ヴァイオリンコンクール第3位、現在留学生としてパリ国立高等音楽院修士課程に在学中)がラヴェルのツィガーヌを演奏した。冒頭から独奏部分が多く、まことに力強い演奏で情熱的だった。次いでクララ=ジュミ・カンの登場、サラサーテに献呈されたサン=サーンスの序奏とロンド・カプリチオーソとサラサーテのツィゴイネルワイゼンを、共に技巧を要する名曲なのに、飄々と難なくこなした実力は凄く、聴衆の拍手が止まなかった。
 休憩を挟んで、マウラーの4本のヴァイオリンのための協奏交響曲イ短調、ヴァイオリンは最先端の新人4人。鈴木愛理(2006年第13回ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクール第2位)、青木尚佳(2004年若い音楽家のためのチャイコフスキー国際コンクールで最年少ディプロマを受賞)、インモ・ヤン(2009年若い音楽家のためのチャイコフスキー国際コンクール第4位、2009年IMA音楽賞受賞、男子中学生)、松本紘佳(2006年第10回リピンスキ・ヴィエニヤフスキ国際コンクールジュニア部門第2位・最年少入賞、2009年IMA音楽賞受賞、女子中学生)。大学生と中学生の合同演奏だったが、違和感なくレベルは高い。
 最後はシン・ヒョンスのモーツアルトのヴァイオリン協奏曲第4番ニ長調「軍隊」、3楽章ともにあるカデンツァを見事に弾きこなし、聴衆からは絶大な拍手があった。使用楽器は日本音楽財団より貸与されている1710年製のストラディヴァリウス「カンポセリ-チェ」だという。スタンディングコールする人も出て、アンコールに応えてパガニーニの24の奇想曲の1曲を弾いたが、先日の神尾真由子にも匹敵するような技巧、驚いてしまった。歳は彼女より1つ下の23歳、現在は韓国国立芸術大学大学院に在学し、やはりキム・ナムユン氏に師事している。
 IMAの受講生の中にはこんな金の卵が沢山いることに驚嘆し、石川の誇りであることを身に滲みて強く感じた。

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