2010年9月28日火曜日

砺波の里にある「蕎麦福助」

 9月21日、前田さんから「今久保さんがいらっしゃって砺波市の『福助』がいいので是非行ってくださいとのことでした。住所:砺波市林 947-1、時間 11:30-2:30 5:30-8:30、電話:0763-33-2770 」というメールが届いた。実はこのメールを見て、9月初めの日曜日に久しぶりに家内とその友人の三人で鶴来の「草庵」へ行った折、満員だったが、おカミさんと話す機会があり、その時「富山の福助さんへ行って来ました」と言われたことを思い出した。
 早速前田さんに電話して、場所は何処かとお伺いしたところ、ナビに電話番号を入力すればOKという。それもそうだと25日の土曜日に挑戦することにした。家内は都合がつかず私独りで出かける。11時半開店なので、家を10時に出る。地図では、砺波市林は市の中心部から北へ3kmばかり、そんなに離れてはいない。とりあえず高速道を砺波ICで下り、ここで電話番号を入力する。ところが該当する施設はないという返事。ではと「ふくすけ」で探索すると、全国では560ばかり、富山でも数ヵ所、もっとも飲食店の名称で索引するから蕎麦屋とは限らない。砺波市にもあるが、林ではない。それではと砺波市林で入力し、ナビに従って行くと、田圃の真ん中で「目的地周辺です 音声案内を終了します」となった。時間はまだ11時と早いが、この道、車は通るが人影は見えない。とりあえず国道156号線まで出る。車を退避できる場所に止め、もう一度砺波市林と入力する。今度は逆方向からの進入、すると目的地周辺の電柱に「福助」左折のマーク、これで助かった。
 着くと屋敷はかなり広い。田圃の真ん中、水田を造成したものだろう。入り口に大きな「福助」の看板、車が4台止まっていた。駐車場は優に20台は止められ、未舗装の駐車場もある。建物は大きな瓦葺き切妻屋根の棟屋、建物の入口は1間半はあろうか、大きな白の暖簾には、右上に「手打ち石臼挽き」、中央に大きく「蕎麦」、左下には「福助」と墨書してある。暖簾をくぐり、板戸を開け、中へ入る。靴を脱ぎ、上がり框へ上がり、大きな障子戸を開けて中へ入る。中は板の間。「お好きなところへどうぞ」と言われたが、独りなので、窓際の「えん」の座机に座る。既に4組16人が入っている。
 注文は先ず「新そばの細挽きせいろ」と、やや間を置いて出すようにお願いした「粗挽き田舎の鴨汁せいろ」。でも結果として、鴨汁のつけ汁は温かいので、後で出てきたのは新蕎麦でないひねこの細挽きせいろだった。これは注文ミス、「粗挽き田舎」を食べ損ねた。
 建物は総欅造り、黒部の山間部の庄屋の築百年以上の古い民家、豪雪で全壊したものを、とある建設会社の古民家事業部が規模を3分の1にしてこの地に移築したとのこと、内部の「おえのま」には吹き抜けと見紛う高い天井に太い磨かれた欅の梁、すごく印象的である。欅の帯戸も見応えがある。「おえのま」には四人掛けテーブルが3脚、六人掛けテーブルが2脚置いてあり、「おくのま」は向かって左に四人掛けテーブル、右の間には衣桁に展示の友禅の着物が掛けてある。「えん」には、二人が向かい合わせに座れる座机と四人座れる座机が置いてある。
 初めに蕎麦茶、次いでセットで「つけ汁」と蕎麦猪口、それに刻み葱少々と生山葵(1㎝弱の輪切り)とおろし金とおろし金から摩り下ろした山葵を外すスプーン状の竹の櫛(これを初めて目にしたが、中々便利な代物だ)がお盆に。暫くして丸い笊に入った「細挽きせいろ」が角盆に載って出てきた。通常の細挽きよりも細い切り、きれいな仕上がりである。新蕎麦は北海道滝川産とかで、新そばは「細挽きせいろ」のみ、ただ新そばとはいっても萌黄色は伺えない。ただ香りは好い。手繰ると新そばらしい味、でも強烈さはない。猪口に汁を少し入れて味わうと濃いめ、少し浸して食べる。極細打ちにしてはコシがある。山葵は下ろしたものをそばにまぶして、それを汁に浸してお召し上がり下さいとある。
 次いで「鴨汁せいろ」、粗挽きは出ず、細挽き、岩手産だとか、笊に盛られた細挽きは少々くっついている。色は新そばよりも若干茶色が濃い。鴨汁は中位の深鉢に並々と、それに生の三つ葉がふんだんに盛られている。汁は濃いめ、鉢には焦げ目のついた鴨の切り身と焼き葱が、鴨は程よい加減、一杯欲しいところだ。薬味には、柚子胡椒と黒七味が付いている。そばは先ほどの新そばより落ちるのは致し方ない。汁が濃いので全部浸せない。汁をよそう小さな木の杓子も付いているが、啜るには濃くて抵抗を感じる。終わって蕎麦湯を貰う。蕎麦湯は蕎麦粉を湯で溶いたもの。新そばのせいろの汁も、鴨汁のつけ汁も沢山余った。濃ければ量を少なく、鴨汁はもっと薄めにしてほしいものだ。一工夫ほしい。
 店主は西村忠剛さん、32歳、まだ童顔の好青年、蕎麦粉は自家製粉の石臼挽き、打つそばは九一そばである。出身は地元福光町、神戸の蕎麦店「土山人」で4年間修業して開店、今年で4年目、細君のほか、男性1人、女性2人での営業である。それにしてもこの古い民家の移築には多額の資金が必要だったろう。それにしても「おえのま」の空間は実に見事だ。本当に気持ちが休まる。周りの庭も手入れが行き届いていて清々しい。貰った小さな栞には、「やわらかな緑と古民家のたたずまいで、五感に潤う豊かなひとときをお楽しみください」とある。

〔おしながき〕単位:円
・冷たい蕎麦:細挽きせいろ850、粗挽き田舎850、辛味大根おろし蕎麦1100、とろろ蕎麦1200、海老天せいろ1800、国産天然穴子天せいろ2000。
・温かい蕎麦(細挽きのみ):かけ蕎麦850、とろろ蕎麦1200、にしん蕎麦1400、海老の天麩羅蕎麦1800、国産天然穴子の天麩羅蕎麦2000。 (以上大盛り300円増)
・そばがき850。  (以上新そば100円増)
・酒の肴:焼き味噌300、出し巻き卵800、酒の肴三種盛り1200。
・天麩羅:海老と野菜の盛合わせ1500、国産天然穴子と野菜の盛合わせ1500、野菜の盛合わせ500、野菜単品400。
・酒類:日本酒(富山の地酒)550-1100、蕎麦焼酎550-650、芋焼酎550-650、麦焼酎550-600、泡盛600-650、梅酒550-650、ビール400-650、ノンアルコールビール550、ソフトドリンク550。
〔食材産地〕
・蕎麦(北海道,長野,富山,福井,宮崎)、山葵(静岡)、大和芋(群馬)、辛味大根(北海道,福井,富山)、穴子(淡路,博多,長崎,徳島,江戸前)。
・冷たい蕎麦の出汁:本節(枕崎)、鯖節(鹿児島,福岡)、宗田節(高知)。何れも厚削り。
・温かい蕎麦の出汁:うるめ(熊本)、目近(熊本,高知)、鯖(鹿児島,福岡)、鰯(熊本)。
〔アクセス〕
 北陸自動車道を砺波ICで下り、国道359号線の砺波IC前交差点を右折、次の国道156号線の太郎丸交差点を左折、国道159号線を2kmばかり北上する。JR城端線を渡り、市役所前交差点を左折、杉木南交差点を右折、初めの田圃中の舗装農道を左折して直進すると、左に見えてくる。この区間に案内があるかどうかは分からない。国道156号線を市役所前の次の十年明交差点を左折した場合には、杉木交差点を左折し、初めの田圃中の舗装農道を右折して直進すると、左に見えてくる。このルートには案内が出ている。

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