2013年12月22日日曜日

とある会の旅行にまつわることども(その6)

10. 夜中に疾風の如く現れた山姥の怪
 寝ていて夜中に私は夢を見た。私はアマゾンのどこか奥深くに分け入っていて、場所はアマゾン河の上流、何となくエクアドルの国境に近い場所だと感じていた。そこで私は変わった鳥の啼き声を聞いた。その声は、ケ・ケ・ケ・ケ・ケと聞こえた。これはオオハシドリの啼き声に違いない。しかしそうこうしているうちに、その声は夢うつつの中での鳥の啼き声ではなく、どうもこの世のものらしくなった。目を覚ますと、その声は正に現実、声の主は隣の部屋からのようだった。そっと起きて、隣の部屋の戸を開けた。
 戸を開けると、エイジとヒロシはまだ囲炉裏の縁に座っていた。時間は真夜中。そして囲炉裏の間とは一段高くなっている部屋の縁に腰掛けて、おレイさんとタカちゃん (家内) がいて、皆と何か喋ったり笑ったりしている。私が夢のなかで聞いた鳥の声と覚しき啼き声は、正しくおレイさんの笑い声だったのだったのである。女性軍は寝たはずだったのに、何故居るのだろう。しかしエイジとヒロシが発言したことで、その様相が判明し出した。
 女性の皆さんと私が就寝のため部屋を出た後、エイジとヒロシとユキオさんはまだ囲炉裏の縁に座って飲んでいた。その後ユキオさんは温泉の湯へ、その時点で男姓の部屋の戸の鍵はかかっていなかった。残った二人が飲んでいると、突如入り口の戸が開き、疾風の如く、タカちゃんが髪を振り乱して、さながらやまんば (山姥) の如く突如現れ、部屋を横切り、クローゼットに突進、あれこれ物色した後、アッという間に、部屋から出て行ったという。この時戸口にはレイさんが立っていて、ニコッと笑みをたたえていたという。それはアッという間の出来事、部屋へ入るや2歩程でクローゼットに達し、入って出て行くまでも数秒という早業、あっけにとられて、声も出せなかったという。二人の表現によると、その行動はさながらムササビが部屋に飛び込んできて、アッという間にまた出ていったという表現だった。二人には一体何が起きたのか、全く分からなかったという。一瞬の出来事。ユキオさんが部屋に戻ってきたので一部始終を話し、これは一体何事だったのか、説明してもらわねばと話し、ユキオさんが全権大使となって、向かいの女性の部屋へ行き、これは一体何事だったのか、説明してほしいと頼んだ。それでおレイさんとタカちゃんが釈明に現れたのだった。
 この説明の折、時折間の手に出たおレイさんの高笑いの声が、さながらアマゾンの奥地に棲むオオハシドリの声に似ていて、それで私は夢のアマゾンから現実の世界に引き戻され、皆さんの輪の中に加わった次第。家内の説明では、夜に寒くなって下着を重ね着しようと思ったが見つからず、てっきり部屋が替わった際に、前のクローゼットに置き忘れたと思い、これはどうしても奪取しなければと思っての暴挙だったという。家内は元は陸上とバドミントンの選手、その昔とった杵柄の力を、一瞬のうちに遺憾なく発揮して起きた出来事だった。ようやく話しに決着がついて、先ずは大団円。それでそのお尋ねの下着は、翌朝、見つかったとのことだった。

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