2012年8月13日月曜日

退職記念夫婦旅行(1)鹿児島・日当山温泉

 私が退職したら何処かへ旅行しようというのは、かなり前から話し合っていた。家内の姉妹たちと京都へ行った際に、家内はこの会を主宰した姪の旦那に、私たちの計画を話したようで、私の退職後に打診があった。姪の旦那は県の教育委員会にいたこともあって、修学旅行の設定にも関わりがあり、ある旅行会社の学校関係の旅行担当の職員とはコンタクトがあり、その方に私たちの旅行も相談されたようだった。京都への旅行の設定も彼氏に負うところ大だったとか、お任せすることにした。
 退職したある日、担当の方から一度ご来店願いたいとのこと、家内と出かけた。家内はまだ勤務があるので、条件は3泊4日の旅程、私も家内も北の方を希望したが、この日程ではどうしても飛行機を利用しなければ窮屈になること、家内は飛行機はイヤということもあって、案として、新幹線で九州へ行って、鹿児島近辺の温泉に泊まり、家内は九州へ行くなら黒川温泉へとの希望も入れ、帰りは本土に戻って、鞆の浦辺りで泊まって帰沢するというのはどうですかとの案を出された.これに異存はなく、その線で進めていただくことにした。日程は8月3日(金)〜6日(月)である。
 この間九州の北部中部を中心に梅雨明け間近の集中豪雨があり、旅行が危ぶまれたが、担当では一部旅程を変更したものの、大筋では問題なく遂行できるとか、2週間前には最終旅程表も頂き、必要な交通機関の運賃、宿泊料金、観光タクシー料金等を支払った。その額は35万円、今まで経験しない額の旅行、まあ退職記念とあればそれも良しとするか。

初日:8月3日(金) 宿泊:日当山(ひなたやま)温泉 数奇の宿ー野鶴亭(やかくてい)
 金沢駅を7:02発のサンダーバード6号で新大阪駅へ、乗り換えて、さくら551号で新しく出来た九州新幹線で鹿児島中央駅へ、14:05に着いた。7時間の旅、当初は鹿児島市内で昼食をと思ったが、腹持ちもよく、そのまま日豊本線の特急に乗り、特急で1駅の隼人駅で下車する。この間電車は錦江湾に沿って、右に湾を隔てて桜島を眺めながら走る。この間30分ばかり、トンネルも多く、風光明媚な線だ。下りた駅は田舎の駅、今観光線として脚光を浴びている肥薩線の起点駅でもある。でも田舎の駅であることに間違いはない。今宵の宿の日当山温泉へはタクシーで約13分の距離、後で分かったことだが、宿へ連絡すれば迎えがあったとか、翌日は駅まで送ってもらった。鹿児島空港とも近い。
 日当山温泉は平地で、近くには天降川が流れ、源は霧島連峰、上流には霧島温泉郷があり、その最も下流というか入り口に位置する。宿は純和風数寄屋造り、ロビーで抹茶を頂き、チェックイン後、回廊のある離れへ案内される。離れの名は「閑閑庵」。玄関から部屋へ案内される。メインは10畳半と8畳の間、縁があり、手入れされた庭が付いていて、その一画には大きな石をくり抜いた露天風呂が鎮座していて、お湯が掛け流しになっている。訊けば湯量が大変多く、大浴場もそれに付属する大露天風呂も掛け流しとか、泉質は炭酸水素塩泉とかだった。何とも贅沢な宿だ。大浴場(50名)と大露天風呂(30名)は続いていて、男女入れ替えは朝4時にあるため、晩と朝に入ると、両方を味わえる。早速にかなり離れている大浴場へ入りに行く。まだ時間が早いからか誰もいない。ゆったりとお湯に浸かる。上がると冷えたビールが出た。
 夕食は懐石料理、部屋まで運ばれる。家内はビール、私は地元の生酒や焼酎を頂く。料理に魅せられてお酒がすすんだのは言うまでもない。以下にこの日の献立を記す。
 〔青葉の雫〕:ところてん吸酢(順菜、胡麻、花付胡瓜)、小鮎いぶし、穴子八幡巻、川海老、枇杷黄味鮨、鴨と胡瓜松葉串、紫陽花もどき梅、太刀魚南蛮漬け。〔吸物〕:鱚葛叩き冬瓜すり流し仕立て(あじさい独活、湯葉、木の芽)。〔造り〕:旬の盛り合わせ(海老、赤身魚、白身魚、初夏の妻色々)。〔煮物〕:冷しのっぺ(小芋、海老、南瓜、鮑、蓮根、オクラ、小茄子、百合根、振り柚子)。〔焼物〕:鰻白焼(針葱、山葵おろし、葉地神)。〔鍋替り〕:黒毛和牛石焼き。〔温物〕:甘鯛古代米山葵蒸し(東寺あん、生ウニ、くこの実)、〔強肴〕:鱧火取り生姜酢(胡瓜、蛸湯引き、梅肉)。〔食事〕:ちりめん釜焚き(木の芽)。〔留椀〕:赤出し汁。〔香の物〕:三点盛り、生節。〔果物〕:とうもろこしプリン、メロン、桜桃。〔甘味〕鶯あん、わらび餅。
 翌朝、今一度日替わりの湯に浸り、お食事処「餐饌(さんせん)」で、真ん前に中庭を見渡せる円形の帯テーブルで朝食を頂く。飯は「おかゆ」にしてもらった。お菜は全て旬の地の物、見ていて楽しくなる品々、最高のもてなしだった。料理も接客も素晴らしかった。そういえば、夕食時に女将さんが挨拶に見えられていた。
 またこの旅行が私の退職記念だと知って、夫婦箸と珍しい箸置き、それにお揃いの扇子を頂戴した。それに「野鶴」という化粧箱入の焼酎も。この好意には甘えることにした。


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