2010年8月27日金曜日

「もっとカンタービレ」へのお誘い

 米田さんから「もっとカンタービレ第22回(IMA&カンタービレ・ジョイントコンサート)」に出演される江原さんからお誘いがあったとの手紙を頂いた。〔江原さんからのメール:22日18時より、音楽堂地下交流ホールにて、室内楽シリーズの「もっとカンタービレ」があります。数年前にチャイコフスキーコンクールで優勝した神尾真由子さんが弾きますし、江原も一曲出ます。チケットは出演者割引で預かっています。もし興味と時間のある方がいらしたら、聴いていただけると嬉しいです〕。続いて米田さんからは、「一夜缶ビールをやめて、江原さんからのプレゼントをお受け取りになりませんか。魅力的な価格のチケットにつきましては、米田にお申し付け下さい」と。
 早速お願いしたところ、わざわざチケットを届けて下さった。米田さんの仲介で、探蕎会の方々も聴きに行かれるとか。これまでこの室内楽コンサートがあることは私も知ってはいたが、聴いたことはない。後で知ったことだが、この企画はOEK(オーケストラ・アンサンブル金沢)の楽団員がオールプロデュースしているとのことだった。
 コンサートの当日、開場5時半少し前に着いたのだが、もう長蛇の列、前田さんや寺田先生は既に前の方に並んでおいでた。エライ人気なのに驚いた。私は永坂、早川両先生、米田さんとご一緒、後で岩先生も見えられた。交流ホールは固定した椅子席がなく、何人入られるかは知らないが、係員に聞くと、これ位の人数なら十分入れますと。私はこの会場でラ・フォル・ジュルネのクロージング・コンサートがあった際、始めから終いまで立ち見だったことをふっと思い出した。
 1曲目は神尾真由子さんのヴァイオリン独奏でパガニーニの24のカプリースから5曲。この曲は超難曲として知られ、ヴァイオリンのあらゆる難しい技法が随所に盛り込まれていることで知られる曲、中でも最終の第24曲は特に有名で、リストやブラームス、ラフマニノフなどがこの曲を主題とした狂詩曲や変奏曲を作曲していて、私はむしろこちらの方が馴染み深い。だから生のソロで聴いたのは勿論初めてで、とても新鮮だった。しかも弾きぶりも大したもので、堪能した。この曲は昨年リリースされている。特に驚いたのは弾きながらの撥弦、今度で二度目だが、実に凄い技術だ。彼女は今24歳、3年前には4年に一度開催される若手演奏家の登竜門であるチャイコフスキー国際コンクール(第43回)のヴァイオリン部門で優勝している。この部門での日本人の優勝は、1990年の諏訪内晶子以来2人目である。という彼女は2000年と2001年にIMA(いしかわミュージックアカデミー)を受講している。また2008年にはOEKと共演している。使用楽器は、名ヴァイオリニストのヨアヒムが生前使用していた1727年製のストラディヴァリウスで、2001年にサントリーから貸与されている。
 2曲目はブラームスのクラリネット五重奏曲、ブラームスがクラリネットの名手ミュールフェルトに出会い感銘し、わずか3週間で書き上げたといわれるよく演奏される名曲である。IMAからは音楽監督の原田幸一郎(第1ヴァイオリン)とサンミン・パク(チェロ)、OEKからはクラリネットの遠藤文江、第2ヴァイオリン首席の江原千絵、ヴィオラのシンヤン・ベックで、この組み合わせは偶然にも師弟コンビだと紹介された。原田さんは江原さんの大学での師、パクさんはベックさんの師とのことだった。遠藤さんのクラリネットは定評があり、私も何度かソロを聴いているが、音色といい、緩急自在のテクニックといい、聴いていて心が和み、惚れ惚れとする。弦の4人も超ベテラン、特に原田さんは室内楽では多くの人を指導されていて、この曲でもアンサンブルをリードしておいでた。おそらくこのメンバーではリハーサルも1回でOKなのではなかろうか。素晴らしい調和で楽しかった。
 3曲目はドヴォルザークのピアノ五重奏曲で、3曲ある弦楽五重奏曲、2曲あるピアノ五重奏曲の中では最もよく演奏される名曲である。特に第二楽章と第三楽章に流れる民族舞曲のリズムは実に楽しく興味深かった。5人のメンバーは皆さんがIMAの講師の方々。第1ヴァイオリン:レジス・パスキエ(パリ国立高等音楽院教授)、第2ヴァイオリン:神尾真由子(前出)、ヴィオラ:原田幸一郎(IMA音楽監督・桐朋学園大学教授・国際コンクール審査員)、チェロ:毛利伯郎(桐朋学園大学教授)、ピアノ:チュンモ・カン(韓国国立芸術大学教授)。メンバーの顔ぶれもさることながら、実に息の合ったハイレベルの演奏を聴くことができた。
 ただ、第1曲は立っての演奏だったので表情も手や指のさばきも見えたが、第2曲と第3曲は座っての演奏、交流ホールというフラットな場での演奏だったので、演奏者の姿が見えず、こんな素晴しいメンバーだったらホールで演奏してほしかった。

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