山岳遭難を主な執筆テーマとして取材を続けているフリーライターの羽根田治さんが、2010年(平成22年)8月12日付の朝日新聞のオピニオン欄に寄せた主張の主題は「安易な救助要請が山岳遭難を助長する」で、副題は「連れられ登山は無責任。ヘリ出動費は全額負担させ自覚を促せ」である。これに対し朝日新聞の尾沢智史氏が異議ありとした。結論から言うと、羽根田さんは、山の事故の99%は自己責任であるからして、自己責任に基づく山での事故の救助費用は全額自己負担すべきであると主張されている。これに対し尾沢氏は、山での遭難をすべて自己責任とするには違和感があるとする。確かに本人のせいで起きた遭難もあるだろうけれど、しかし相手は何しろ大自然、計算できないこともあるはずだし、しかも山の遭難は命にかかわる問題、簡単に割り切るわけにはいかないのではないかと反論する。
警察庁のデータによると、平成21年(2009)の山岳遭難の発生件数は1,676件、遭難者数は2,085人と過去最多、そして遭難者の75%以上は40歳以上の中高年者であるという。ここでの「遭難」の定義は、救助要請があったすべてで、中には救助要請する必要が全くなかったような例も包含されている。遭難の内訳は、道迷い43.5%、滑落15.6%、転倒12.4%の順で、前年(2008)と比較すると、道迷い、疲労6.2%、悪天候2.2%による遭難者が増加した一方、滑落、病気、鉄砲水による遭難者は減少している。
このようにして山岳遭難の件数は年々増加しているが、羽根田さんによると、大したことがない怪我、ただ疲れた、足が痛いというだけで救助を頼むケースが目立つという。山岳診療班が駐在する山域もあり、極端な例では、「近くの山小屋まで歩けませんか」と言っても、「早くヘリを」の一点張りもあるとか。50年位前、金沢大学山岳部が早春の白山で遭難者を出したとき、自衛隊小松基地のヘリが山岳地帯を飛ぶこと自体、予期しない乱気流で墜落の危険があるということで自粛したものだが、でもその後の試験行でゴーとなった経緯がある。現在は山への荷物の運搬ばかりでなく、遭難者の救助・捜索にもヘリは大活躍、むしろなくてはならない存在になっている。先週白山の岩間道を下っていて転落した遭難者もヘリで発見された。当然悪天候をおして出動することはないが、しかしヘリが山岳地帯を飛ぶことには確実に危険が伴う。昨年の奥穂高岳での防災ヘリの墜落、今年の秩父での沢筋での防災ヘリの墜落は記憶に新しい。特に地形的には大変危険を伴う救助があるということを、救助を要請する側も救助する側もよく認識すべきだと思う。
また平成に入ってからの中高年の登山ブームにのって登山を始めた方々の中には、登山をハイキングの延長と考え、山は危険だという認識がない人も多い。この類の人たちは、ちょっと厳しい状況になると、すぐに救助を求めてしまうことになる。これには携帯電話の普及も一役かっている。近頃流行の「ツアー登山」などでは、全くの素人の場合には山での危機管理について話すだろうけれど、しっかりしたリーダーがいないグループ登山の場合は問題で、でも少なくともグループのリーダーと名が付けば、グループの危機管理もすべきである。もっとも携帯電話といっても、山域により機種により通話できないことがあることは十分認識しておくべきである。その場合は昔と同じように、近くの有人山小屋へ救助を求めるか、麓まで下って救助を要請するしかない。
救助を要請した場合、救助に当たるのは、管轄する警察や消防の職員や民間の救助隊である。民間の救助隊やヘリに要請した場合には、その程度がどうであれ、要した費用は要請者に後日請求されるから問題はないが、問題となるのはヘリの出動が必須でないにもかかわらず、民間以外のヘリを要請した場合である。因みに昨年(2009)長野県内で起きた山岳遭難でのヘリの出動回数は、警察ヘリ113件、消防防災ヘリ33件、民間ヘリ4件で、民間要請は僅かに2.7%でしかない。はたして安易な救助要請に対して、貴重な税金を使わねばならないかという批判が出てくることもむべなるかなである。
民間の「ツアー登山」や「ガイド登山」、また山岳団体や学校山岳部での登山には、今の時節必ず保険が掛けられている。1回の山行ごとに掛けるものもあれば、年単位の商品もある。またこれら死亡・後遺障害、入院・通院を主としたもののほか、捜索・救助を主とした商品、両方を含むもの等々、今は多彩な商品が売り出されている。一般の人の場合、当初から危険な時期に、あるいは危険な場所に行くことはなく、一般登山道を歩くような場合であれば1,000円で、受傷して自力下山できずにヘリ等で救助されることを見込んだレスキュー保険でも年額5,000円でOKである。今後は一般の方々にも、これら山岳保険制度があるということを普及すべきかも知れない。
個人の山行でも、その延長線上にあるパーティー登山でも、登山というのは山に登るだけではなく、安全に下りてくるまでまでが登山であるということは、肝に銘ずべきことである。特にパーティーの場合には、リーダーはもちろんだが、個々のメンバーも単に連れられて行くではなく、ある程度の主体性も持ち合わせ、各人が責任を持った登山をすべきだろう。
今ヘリを飛ばすとどれ位費用がかかるのだろうか。遠近にもよるだろうけれど、羽根田さんでは、遭難場所が特定できていて、ヘリの飛行時間が1時間以内で救助できるケースでは、費用は100万円以内で済むという。しかし百万円というのは大金である。もしこれが自己負担であれば、対応するにはレスキュー保険の活用しかない。これに加入していれば、通常の遭難事故ならば、救助費用のほとんどはカバーできる(但し限度300万円)。羽根田さんは、「保険に入らなければ山に登るべきではないという位の危機管理意識を持って山へ登る方がいい」とも。
「登山での事故でのヘリ出動の費用は全額自己負担させ自覚を促せ」というのが羽根田さんの持論である。その考えは、登山という行為自体もともとリスクの高い場所へ自らの意思で行くという点、もう一つは登山での事故の99%は不可抗力ではなく、自己責任であると考えているという点に立脚している。しかし全額自己負担するとして、1%ある不可抗力な遭難も自己負担にするのか、もしそうでないとすれば、その線引きをどうするのか、乗り越えねばならない制度上の問題点は多い。現に警察や消防のヘリは救急患者の搬送や災害時にも使われているが、受益者負担ではない。平成16年(2004)に長野県の田中康夫知事(当時)が、山岳救助に県の税金を使うことに批判的な声に考慮して、山岳救助に県のヘリが出動した場合の有料化を検討したが、結局線引きが難しく断念した経緯がある。これまでは、長野県内の山岳で起きた事故には、長野県だけで対処してきたが、現在では富山県とか岐阜県とかとの広域体制が確立されている。人道上という言葉を振りかざされると、自己負担という主張の勢いは衰えてしまう。とすれば、登山者の自覚とモラルに待つしかないか。
羽根田 治(はねだ おさむ)1961年生まれ 48歳。フリーライター。山岳遭難を主な執筆テーマとし、警察や民間の救助関係者、遭難当事者などの取材を続けている。著書に「山の遭難 あなたの山登りは大丈夫か」「トムラウシ山遭難はなぜ起きたか」(共著)など。
2010年8月26日木曜日
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【動画】飛び込み女王・郭晶晶(グォ・ジンジン)が赤外線カメラで盗察され、映像流失!!
返信削除http://guojingjingswim.btblog.jp/
盗察映.像は約10分ほどで、そのほとんどが郭晶晶(グォ・ジンジン)選手を撮影したもので、2008年の北京五輪で撮影されたものと見られる。
http://guojingjingswim.btblog.jp/
映.像は09年にも一度、流.失したことがあったが、即座に削除されたことで広がることはなく、盗察騒ぎが一段落し、誰もが事件のことを忘れ去ったと思われたが、再び映.像が流失し、今回は収拾がつかないほど急速に映.像が拡散している。
吉高由里子『蛇にピアス』初主演で大胆ヌ_ド SE×【動画】
返信削除今年期待緒No.1女優・吉高由里子。映画「蛇にピアス」で大胆なヌ_ドシーンを披露し話題を集めた。
http://fhvngi.btblog.jp/
サディストな彼によって肉体改造してくこの映画。
http://fhvngi.btblog.jp/
「スプリットタン」「ピアス」「刺青」「激しい肉体関係」といった表現が象徴的に使われ、もちろん本格ヌ_ドも。
過去のレ.イプシー ンと合わせてどうぞ。