2016年1月26日火曜日

1年ぶりの「敬蔵」

 家内と十年ぶりに草庵へ寄っての帰り、敬蔵にも長い間寄っていないので、一度寄らないとねということになった。私は一昨年の 12 月に友人二人を誘って寄って以来、ずっとご無沙汰している。それで一度は行かないと悪いわねえと家内が言ったのは、一つには同じ本町での隣の丁目で近くにあること、でもそれにも増して、亭主の志鷹敬三さんの奥さんの明菜さんの父と家内とは従兄妹同士だということだからである。十数年前に開店した当初は、そんな関係だったこともあって、随分と足繁く通ったものだ。でも名が知れて繁盛するようになってからは、何故かあまり出かけることは少なくなった。
 それで1月 17 日の日曜日の昼に敬蔵に久々に寄ることにした。11 時半開店なので、それに合わせて家内の車で家を出た。歩いても7分の距離、車だからすぐに着いた。まだお客は入っておらず、私たちが一番乗りだった。入って長い間ご無沙汰したことを詫びた。そして入った途端、主人から久保さんが亡くなったんですねと。新聞の死亡広告で久保さんという名前があったけれど、まさかとカミさんと話していたんですとのこと。というのは3日ばかり前に一人で来られたけれどお元気で、ただ何時もは大変饒舌で次から次へと話題が出て話に花が咲くのだけれど、その日はわりとお静かで、少しお元気がないような雰囲気だったとのことだった。私は久保さんの奥さんから、久保さんが亡くなった当日も仕事に行かれ、いつもは会長さんなので午後4時頃には自宅に戻られるのに、何時もより遅いので奥さんが息子の社長さんに電話したら、いつも通りの時間に帰られたとのこと、それで奥さんが車庫へ行かれたところ、倒れられていて、すぐに救急車で病院へ行かれたけれど、蘇生されなかったとお聞きしたとお話しした。私たちも久保さんが亡くなる9日前に、久保さんも交えて「やまの葉」で例会を開いていて、その時もお酒を召されていたし、いたってお元気、帰りは家内の車で自宅までお送りしたことも、家内と共々志鷹さん夫婦にお話しした。本当に驚いておいでた。
 さて、お昼時とて次々にお客さんが見えられ、ほぼ満席になった。私たちは以前定席にしていた窓側の席に座った。この日は寒かったので、取りあえず燗酒を貰うことに。でも暫く来ていなかったこともあり、お酒の銘柄が代わっていた。宇出津の数馬酒造の「竹葉」が目にとまった。ある店ではいつも竹葉の冷やを貰うのだが、温かいのは飲んだことがなく、興味本位で頼んだ。でも私だけでは悪いので、家内にはノンアルコールを勧めた。摘みには、私は「蕗の薹味噌焼」、家内は「鰊煮」、そばは私が「鴨汁そば」、家内は細打ちの「もりそば」を注文した。初めは付き出しの煮昆布で飲んだが、でもこの酒はやはり冷やが良さそうだ。それで次に焼酎の蕎麦湯割りにする。初めての挑戦である。出て来たのはガラスの器に入った無色透明な焼酎と片口に入った蕎麦湯、信楽焼の茶碗に焼酎を入れ、蕎麦湯を足して味わう。これはなかなか乙な味だった。蕗の薹味噌も旬の一品である。家内の鰊を少し頂戴する。これは少し味が浅いような気がする。そしてもう一杯、今度は加賀の鹿野酒造の「常きげん」を、これは燗したのを何度か飲んだことがあり、これは中々美味しい。家内にもりそばが届いた。少し酒の摘みにと分けてもらう。すると大変びっくりした。そばは細打ちというが、いわゆる中細、淡い薄緑の色をしていて、その香りといい、そばの味といい、近頃こんなに素晴らしいそばに出くわしたことはなく、此処でも初めてで、本当に感動してしまった。この新そばは福井の大野の産の早刈りとか、今年は出来が良かったとのことで、蕎麦は味も香りも素晴らしいという。次いで出てきた鴨汁そばも実に良かった。敬蔵で出す鴨は地元産ではなく、フランスからの輸入と聞いたことがあるが、ここの鴨肉は正に逸品で、こんな鴨肉を出すそば屋は極めて少ない。この日は素晴らしいそばに出くわして、大満足だった。 (続く)

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