8月にあった探蕎会の世話人会で、9月期の探蕎は、山中温泉奥の石川県民の森近くにある「そば工房・権兵衛」に決まった。私も一度は行きたいと思っていたそば店である。この店は土・日と祝日のみの営業とかで、後日事務局では探蕎の日を9月 21日の日曜日に設定した。参加者は 12名だった。
当日は天気も良く、10時に2台の車に分乗して出かける。国道8号線を加賀市の松山交差点で左折し、県道 39号線を南下する。塔尾町で山中温泉へ行く道をやり過ごして、県民の森への表示に従い直進する。道は山間に入り、動橋川に沿い荒谷 (あらたに) 町、今立 (いまだち) 町を過ぎると山道になる。さらに大土 (おおづち) 町への分岐を過ぎると更に高度が上がり、やがて分水嶺を越えて大聖寺川の上流に入る。そして県民の森、ここはこれから行くそば工房・権兵衛の杉水 (すぎのみず) 町と同じ地内にある。そしてこれらの4町は「加賀東谷」(山中温泉ひがしたに地区) として、国の重要伝統的建造物保存地区に指定されている。このような地区は全国で 98 地区あるという。
県民の森から更に下がると、やがて左手にそばの幟が見え、杉ノ水川の橋を渡り、そば工房「権兵衛」に着いた。ここまで出発してから1時間半、左手に本屋、向かいの高みに2棟、右手に即売の掛け小屋、母屋の前に車を停める。この地区はかつては炭焼きで栄えたという。でも今は過疎が進み、自然そのものの静かな山村、でも豊かな自然が一杯の郷である。このような集落を「超限界集落」というのだそうだ。
築 60 年という古民家の店へ入る。私たち 12 人には、2区画3卓が用意されていた。床の間には軸が掛かり、山野草が活けられている。初めにそば茶、欅の木彫りの茶飲みに入っている。そして置かれている箸も山中塗り、聞けば販売もしているという。それで今回は個々に注文することに。私は「おろしそば」と「天ぷら」、それに酒のつまみに菜山葵の小鉢、お酒は地酒 (獅子の里) を頼んだ。かなり混んでいて暫し待たされる。初めに付出し (野沢菜?) と燗酒、暫しこれで喉を潤す。ややあっておろしそばが届く。先ずは寺田会長にお見せする。今回はカメラマン役を任じられていて、箸をつける前に写真を撮らせてほしいとの要望に応えたものだ。二八のやや細打ちのそばは、欅の生地に漆をかけた山中塗の鉢に盛られ、上に辛味大根のおろし、削り鰹、刻み葱が乗っかっている。汁は澄んでいてやや甘め、典型的なおろしそばだ。噛み応えもあり、かつ喉越しもよく、あっという間に胃の腑に納まった。その間にも次々とそばが運ばれてくる。そしてそれが終わって漸く天ぷらの出番になった。天ぷらは山菜オンリー、縁が赤く塗られた浅めの桶、これも山中塗なのだろうか、それに天ぷら敷紙を敷き、それに盛られている。この期に及んで天ぷらをむしゃむしゃ食べるわけにもゆかず、もう1本所望する。しかし前の1本ではお燗に時間がかかったこともあって、冷やで頂戴した。山菜は次のようであった。
ドクダミ (じゅうやく) の葉、ユキノシタの葉、ミョウガの花序、みずぶきの茎、ヤマノイモの多肉根の紫蘇卷きと海苔巻き、まいたけ、ヨモギの葉 の七種。
終わって外へ出る。主人の霜下照夫さんも出ておいでて、いろいろ説明を聞いた。その折に、百笑 (ひゃくしょう) の郷 (さと) のパンフレットを頂く。一般社団法人 (非営利法人) で会員も募集しているとか。パンフを開くと、そば打ち体験もできる「そば工房 権兵衛」、1日1組限定1棟丸ごと貸切りの「蔵やど 与平」「古民家の宿 忠平」、純地産地消の食を提供する「山カフェ でくのぼう」の紹介が、また杉水 (すぎのみず) 町と市谷 (いちのたに) 町の見どころの紹介もされている。この辺りの家は赤瓦や煙出しが特徴で、下屋の下り棟には、恵比寿様と大黒様が付いているという。そう言われて見上げると、大屋根の切り妻屋根の下屋の屋根の際に、向かって右に大黒様、左に恵比寿様が安置されていた。その後ご主人にも入ってもらって皆で写真を撮った。
帰りは山中温泉へ下ることに。我谷ダムの上流に新たに九谷ダムが建設され、その流域の集落は一部立ち退きを余儀なくされたようだ。でも道路はきれいになった。枯淵町を過ぎて、我谷ダムの堰堤で国道 364 号線と合流する。山中温泉から四十九院トンネルを抜けて、塔尾町で往きに通った道に出て、出発点の「和泉」に戻った。お疲れさまでした。
この日「和泉」の向かいにあるギャラリー「ノア」で、会員の大滝由希生さんの水彩画の個展が開かれていて、皆で鑑賞した。水彩画といっても不透明な絵具を用いたもので、油彩の感覚もある絵になっている。奥さんもおいでだった。でも号6万円はするとあって、そう簡単に手軽に買うわけには行かない。個展は 23日までとかだった。
〔そば工房 権兵衛の資料〕
住所: 〒 922-0136 石川県加賀市山中温泉杉水町ハ33
電話: 権兵衛 0761-78-1853 自宅 0761-77-1371 (開業してない時の申込み)
営業: 土・日・祝祭日のみ営業 但し5名以上で予約すれば平日でも可。
開業: 4月上旬から 11 月末まで (平成7年9月に開業)
蕎麦; 地元での収穫量は極めて少ないので、他産地のものを用いている。
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