2014年9月24日水曜日

八方尾根とそば処「常念」(その2)

3.そば処「常念」
 朝起きると、高曇りながら山の稜線がくっきりと見渡せ、白馬三山や五竜岳が間近に見えている。朝風呂に入った後、近くを散歩する。小鳥が樅の木の梢のてっぺんに止まって囀っている。何という鳥だろう。宿へ戻って7時半に朝食をとる。このホテル、昨晩の夕食にしても、今朝の朝食にしても、なかなかセンスが良い。十分に満足できた。
 山の稜線が綺麗なので、松川を渡り、国道へ出て、村外れの山々が見渡せる場所へ移動する。ここからは小蓮華岳、白馬岳、杓子岳、白馬鑓ヶ岳、不帰ノ嶮、唐松岳、五竜岳、鹿島槍ヶ岳を見渡すことができる。手前には岩岳、八方尾根、遠見尾根、バックが青空ならば最高なのだが、それでも満喫できた。ここでナビを入れ、安曇野にあるそば処「常念」へ。
 国道 148 号線を南下する。青木湖、中綱湖、木崎湖を過ぎ、木崎湖入口交差点を右折し、県道 306 有明大町線に入る。この道は安曇野アートラインの山麓線で、沿線には沢山の美術館や博物館がある。その後安曇野広域農道に入り、田中西交差点を東進すると、目指す「常念」に着けた。大きな駐車場が3カ所、車は 40 台、バスも5台駐車可能という。着いたのは 10時半少し前、開店は 11時だと思っていたが、案内ではもう開店の看板が上がっている。草原に車を停め、表示に従って庭へ入る。ここは裏になるようだ。丁度庭師が入り庭木の剪定がされている。表の方に回る。庭は千坪はあろうか。広大である。表に店の方がおいでて、どうか中で休んで下さいとのこと、この前の「みさと」とは雲泥の差である。礼を言って付属する美術館へ、入場は無料とのこと、早速中へ入る。
 ここは飯沼美術館といい、この店が所有する個人の美術館らしい。土蔵の2階がそうであって、誰でもフリーに入れ、しかも収蔵品は手で触れることもでき、盗難の心配はないのだろうか。入口左側には、真田六文銭の紋が付いた長持ち、刀剣入れ箱、御膳、小物入れ、長持ち、陣笠等が置かれている。同じ並びには、薩摩島津藩の丸に十の字の紋が入った簞笥と小簞笥、目を見張る。他には絵画や軸、多くの陶磁器や鉄瓶、地元画家の征矢野久の水彩画、中に与謝野晶子の真筆もあった。すべて個人の収蔵品のようだ。
 11時少し前、表から店に入る。店は江戸時代からの典型的な安曇野の農家の造りだとか、部屋の仕切りの戸は大方外されていて、中からは表と裏の庭を見渡すことが出来る。洋間もある。この時間になり客が次々集まるが、広いので苦にならない。部屋にも書画、骨董、扁額、屏風、掛け軸等々、これらを見てるだけでも楽しい。注文は天ざる、おろしそば、とろろそば、飲み物は、私はノンアルコールビール、彼女らはグラスビール、つまみに砂肝と馬もつ煮をもらう。そばは二八、蕎麦は自家栽培の地元産とか、この店は安曇野でも草分けだと聞いたことがある。それにしても客のあしらいが良いのが何よりだ。そばの方は中の上程度。それにしてもメニューが豊富、一品料理には、天ぷら、岩魚の塩焼き、刺身、たたき、蜂の子、かじか唐揚げ、馬刺し、茸、そばがき等々。松茸料理には、土瓶蒸し、吸い物、茶碗蒸し、焼き松茸等。飲み物も地酒、ビール、ワイン、ジュースのほかに、かじかや岩魚の骨酒も、とにかくバラエティーに富んでいる。また来たい店だ。

4.安曇野アートライン
 「常念」を出て「安曇野の里」へと向かう。ここには家内が前回行きそびれた「あづみ野ガラス工房」や「田淵行男記念館」がある。プラザ安曇野の駐車場に車を停める。かなり広く、敷地には名水が自噴していて、それでそばも打たれている。ところで家内が本当に行きたかったのはこのガラス工房ではなく、実は「安曇野アートヒルズミュージアム」というガラス製品を陳列・販売している場所だということが後で判明した。工房を出て、隣接する田淵行男記念館へ。この建物、周囲はワサビ田に囲まれた山小屋風の佇まいで、流れの所々で清らかな水が自噴している。この日は山岳写真家・高山蝶の生態研究家としての氏の作品や愛用の品々の展示のほか、この時期「燕岳と安曇野 四季の心象」というテーマでの赤沼淳夫の写真展が開かれていた。氏は燕山荘の2代目オーナーで現相談役の人、氏が描かれた油彩の「新雪の燕岳」は中々秀逸だった。帰りにここで信州の雪形なろマップを求めた。満山荘のオーナーも奥山田温泉から一望できる奥穂高岳から白馬岳の北に位置する小蓮華岳までの東面の雪形を観察しておいでだったが、氏が観察した新雪形も収載されているのだろうか。古から際立って有名なのは、白馬岳の「代掻き馬」や五竜岳の「武田菱」、爺ヶ岳の「種蒔き爺さん」等である。ニューフェイスも多い。
 ここを出て、再び東進し、山麓にある「安曇野アートヒルズミュージアム」へと取って返す。場所は安曇野アートライン山麓線の延長上にある。広大な敷地に大きな建物。そう言えば何かの折に来たことがあるのを思い出した。中へ入ると、フロアにはガラス作品やガラス製品が所狭しと並べられている。あのエミール・ガレの作品も陳列されている。どうしてガラスであのような作品ができるのか不思議だ。魔術師だ。いつか家内がここで求めてくれたワイングラスを洗っている時に割ってしまったが、家内の勧めでイタリアングラスの少し厚めのワイングラスを求めた。こうして満足して帰途についた。

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