1.はじめに
山岸さんは県を退職された後、独学で蕎麦打ちを会得され、8年前に金沢市此花町のビルの一角に、十割蕎麦を提供する11席の小さな店を持たれた。ところでこの店、金沢駅に近いこと、個性が光る名物蕎麦とあって、地元の客よりも、むしろ金沢に観光に来られた一見の客の方が多いようだった。しかも近頃は初めての方でも、スマホ片手に簡単に店の場所を当ててお出でになる。私は開店された時には所在が分からなくて往生したというのにである。そんな状況であったからして、随分と繁盛していた。営業は午前11時半から午後2時半まで、それも売り切れ次第終了であった。こんな状況だったにもかかわらず、山岸さんは期することがあって、昨年の12月31日午後8時30分をもって閉店してしまった。その後に頂いた案内では、実家のある旧鳥越村の白山市左礫 (ひだりつぶて) 町で、限界集落の創生に一役買いたくて、3月下旬を目処に「蕎麦やまぎし」を再開する予定なので、また宜しくとのことだった。
2.3月26日に再開した「蕎麦やまぎし」へ
金沢から左礫までは凡そ34km、とすると野々市からは約30km、朝9時50分に家を出た。旧鶴来街道を南へ、月橋交差点から鶴来山手バイパスを経て国道157号線の白山町南交差点に出る。此処から国道を横切り、手取川に架かる鳥越大橋を渡り、県道44号線 (小松鳥越鶴来線) をひたすら南下する。旧鳥越村役場のあった別宮で国道360号線を横断し、更に南下すると、別宮から約4kmで左礫に到着する。ここは大日川右岸の河岸段丘にある町、見たところ平地はほとんどなくて、まさに山村そのものである。通りの右手にバス停があり、その向かいに、1字ずつ「蕎」「麦」「や」「ま」「ぎ」「し」と書かれた板片が民家の外壁に貼付けられていて、場所はすぐに分かった。ここまで家から40分ばかり、駐車場がないので案内を乞うて訊ねると、道路に寄せて駐車すればとのこと、道路脇に停めた。まだ時間があるので、村の中をブラつく。緩い斜面に民家が20軒ばかり、中には立派な構えの家も見受けられる。道で5人ばかりに出会った。訊くと数日前に山岸さんに呼ばれて蕎麦を振る舞われたとかだった。
山岸さんの家の前には開店祝いの大きな花輪が、玄関に入ると、左手に券売機、品数は金沢の時とほぼ同じだ。私は金沢の時は「田舎粗挽き」と財宝 (芋焼酎) 2杯が定番だったが、この日は車運転なので、挽きぐるみの「白」と殻つきの「田舎」の並盛り (普通) と新しくメニューに加わった「天ぷら」を 貰うことに。仏壇が置かれている部屋には、お祝いの胡蝶蘭の鉢や祝酒が沢山置かれていた。私も御祝儀を包んだ。入り口の板の間には薪ストーブが2基置かれ、4席と7席座れるテーブルが2脚、4畳の間には4人座れる座机、座敷には5人座れる座机が置かれ、既に2組4人が入っていた。
中には山岸さんのほかに若い女性が1人と、地元の方と見受けられる婆さんが2人、初日とあってか段取りが上手く行かない。特に天ぷらは皆さんが注文するので、小さい鍋では極めて効率が悪く、しかも担当が婆さん一人とあって、5品 ( 茄子、さつま芋、南瓜、蕗の薹、椎茸 ) 付くのだが、一品づつ揚げたのを持って来られるので、誰に何を出したかこんがらかってしまう始末、慣れて軌道に乗るまでには当分時間がかかりそうだ。私は先に「白」を、そして「黒」の時に天ぷらをお願いしたが、これも思うようにはことが運ばなかった。同席の方達との会話では、ここ左礫に常住している人は10人ばかりとか、本当なのだろうか。一見とても限界集落には見えないのだが。
山岸さんはこの生家で店を開くに当たって、無住だった家の改修はすべて本人が自身でなされたとかだった。おえの間の板張りも実にきれいな仕上がり、営業許可を得るには、最低限必要な環境は整えて置かねばならないはずだが、それにしても本当に器用な人だ。
3.メ モ
・お品書き:
〔そばは十割〕田舎、白、粗挽き、田舎太切り、白太切り。 普通盛り800 円、大盛り1000 円。
〔そばがき〕400 円。〔酒肴〕250 円。
〔飲み物〕日本酒 130ml 上 450 円、並 350 円。 焼酎 100ml 200 円。 ジュース 200 円。
ビール 中びん 450 円、小びん 350 円。 ノンアルコール 250 円。
・所在地:〒 920ー2353 白山市左礫町 ニ 55番地。
・営業時間:午前11時から午後3時まで。
・定休日:水曜日、木曜日。
・営業形態:原則として前日までの予約制。予約なしの場合は蕎麦打ち時間 30 分待ち。
・電話、ファックス:076−254−2322
・携帯:080−8997−7714
・交通:ずっと以前には金沢から左礫まで路線バスが1日2本あったが、現在はない。
現在は白山市のコミュニティバスが別宮や釜清水から午前2本 午後2本運行されている。
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