2015年9月10日木曜日

Yさんの雨の日の白山行き

 はやかわクリニックの院長の早川康浩さんは、山と医療の本音トークという副題で、「YASUHIRO の独り言」というブログで、毎日の出来事を書き綴っておいでる。私はそれを毎日拝見している。はやかわクリニックは、胃腸科、内科、肛門科を標榜していて、私は年に一度はここで胃と大腸の内視鏡検査を受けている。多くの医院や病院では、これらの検査は予約して受診することになっているが、このクリニックでは一切の予約は受付しないで、その日に受診した人は、余程の事情がない限りは、その日のうちに検査を済ませている。また予約がある機関でも、通常扱う人数は1日 10 人位なのではと思うが、はやかわクリニックではその数が 50 〜 60 人が通常というから、半端な人数ではない。補助の方がいるにしても、内視鏡を扱うのは院長一人だから、その忙しさは想像を絶する。しかしそれをこなすというのが信条であるからして、もう凄いというほかない。これは内視鏡の卓越した技術もさることながら、強靭な体力と精神力が備わっていないと出来るものではない。正に超人的である。このことはブログの人気とも相まって、全国に知れ渡っている。アクセス数は 728 万に達している。
 はやかわクリニックの休日は日曜日と水曜日である。この日はワンデーと称して、積雪期にはスキーを駆使しての山行、それも常人では思いも付かないようなルートをファインディングして挑戦されている。山スキーは自身で会得されたというが、その技術たるや正に超人の域である。その踏破範囲は、地元の白山山域は勿論、北アルプス全域、頸城山塊にも及んでいる。また無雪期には、白山、立山・剣岳、朝日岳周辺を巡るほか、沢にも興味を持って挑んでおいでる。これらの山行・スキー行は単独のこともあるが、技術も体力も相似た仲間と一緒なことも多い。しかも1日の診療を終えてからの出発で、しかも次の日にはまた診療があるわけだから、深夜から行動を起こすことが多く、こんな行動は常人には思いもつかず、正にスーパーマンそのものである。このほか車を使用できない所へのアプローチにはチャリ (自転車) を有力な武器として愛用している。行動範囲の拡大と時間の短縮には、スキーもチャリも大いに役立つという。特に下山時にはその差は歴然としている。したがって無雪期にはチャリでの登坂や長距離ロードもかかさない。一方長期の休暇は、正月、ゴールデンウイーク、お盆、シルバーウイークで、積雪期にはよく北海道へ遠征されているし、無雪期には長距離ロードで温泉巡りなどで楽しんでおいでる。それにしてもブログを読むと、とても私たちが真似できる行動ではない。
 さてこの9月、梅雨前線が停滞して天気が芳しくない。早川さんはこの夏から白山の谷筋に入っておいでて、恐らくまだ誰も足跡を残していない沢にも挑戦されていることが予想される。でも沢筋に入っていて最も怖いのは急激な増水で、雨が降っている時に沢に入るのは厳禁である。ところで休日の日・水は雨が多いこともあってか、雨の白山への体力トレーニングを思い付かれたようだ。白山は夏山シーズンは終わったものの、秋山にはまだかなりの登山者がいる。でも秋雨の中、求めて白山へ登る酔狂な人は少ないというよりないはずだ。そこで9月2日の水曜日、日の出時に白山頂上に立つ計画で、酔狂にもクリニックの婦長の Y さんにどうですかと話をかけたと言う。ジムでのトレーニングもいいが、こんな実践トレーニングも良いからどうかとのこと、話かけた院長も院長だが、受けた婦長も婦長で、雨中の白山登山を実行することになった。
 Yさんは、はやかわクリニックが開院した時からのメンバーで、それ以前は私の家内が務めている野々市の舩木病院 (現舩木医院) に勤務していた。家内では、大変優秀な看護婦さんで、気丈で責任感が強く、真面目で几帳面な方とのこと。舩木病院の院長も登山やスキーが大好きで、よく病院で休日には職員と山に出かけたり、スキーに行ったりしていて、私もよく参加させてもらっていた。でも彼女と一緒になったことはなく、彼女はその頃はそんなことに余り興味を持っていなかったのかも知れない。ところが今では厳冬期の白山は別として、残雪期や無雪期の白山ならば、単独でも行動できる能力を彼女は持ち合わせている。舩木病院の院長の山行やスキー行は、どちらかと言えば娯楽的な要素があったのに対し、はやかわクリニックの院長の行動は物凄く先鋭的で、彼女の負けん気がそれに触発されて、今の山好きになったのだろうか。
 院長が婦長を誘ったといっても、同行するのではなく、トレーニングにどうですかということだった。院長の予定では、降雨だが頂上の御前峰で日の出の時間に到着するように別当出合を出発するとのこと、院長は午前3時に歩き出している。彼女は降雨での夜間登山の経験の有無について私は知らないが、後から出発した院長が中飯場辺りで追いついた時に、彼女はご主人と一緒だったと書いていた。院長の予定は登り2時間、下り1時間半だという。院長は室堂で少し時間待ちをして、日の出時刻の9時 15 分には頂上にいたと書いている。そして下山時には、婦長とは弥陀ヶ原で会ったとも書いていた。院長はブログには快適な体力トレーニングだったと述懐していたが、果たして彼女はどうだったのだろうか。

 このブログの記述を読んでいて、彼女を思い、ある唄を想い出し、口ずさんだ。
「雨よ、降れ振れ、ざんざとかかれ、肩の着莚も伊達じゃない。六根清浄、六根清浄」。

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