2015年9月14日月曜日

シンリョウのジュッカイ(9)「山の唄」の思い出(続)

(承前)
 この唄は、北原白秋作詞、中山晋平作曲と覚えていたので、この線でインターネットで検索したところ、見つけることが出来た。それによると、大正4年に設立された慶応山岳会の三周年記念に、会の歌を作ることになり、会に中山晋平が小学校で唱歌を教えていた時の教え子がいて、彼を通じて頼んだようで、曲が先にできて、その作詞を中山晋平が北原白秋に依頼して出来上がったとかであった。歌の題名は「山の唄」で、作詞者の註では、慶応山岳会の委嘱を受けて、登山歌として作ったと記されているという。出来上がったのは依頼された翌年である。しかしその後、慶応山岳会では、歌の題名を「山の唄」から「守れ権現」に変えて使用していたとある。それで今日では、正式な歌の名称は「山の唄」、そして括弧書きで(守れ権現)となっているようである。以下に、作曲した中山晋平が大正8年に刊行した楽譜付きの本「新作小唄」に載っている北原白秋の歌の詩句を紹介する。

「山の唄」  北原白秋 作歌  中山晋平 作曲

  守れ、権現、夜明けよ、霧よ、 山は命の禊場所。
     行けよ、荒れくれ、どんどと登れ、 夏は男の度胸だめし。

  何を奥山、道こそなけれ、 水も流るる、鳥も啼く。
     馬子は追分、山樵は木遣、 朝は裾野の放し駒。

  風よ、吹け吹け、笠吹きとばせ、 笠は紅緒の荒むすび。
     雨よ降れ降れ、ざんざとかかれ、 肩の着筵も伊達じゃない。

  山は百萬石、木萱の波よ、 木萱越ゆれば、お花畑。
     雪の御殿に、氷の岩窟、 瀧は千丈の逆おとし。

  さあさ、火を焚け、ごろりとままよ、 木の根枕に嶺の月。
     夢にゃ鈴蘭、谷間の小百合、酒の肴にゃ山鯨。

  守れ、権現、鎮まれ山よ、 山は男の禊場所。
     雲か空かと眺めた峰も、今じゃわしらが眠り床。

 私が習った曲の節は、各行とも同じで、どちらかというと民謡調である。
 そして私が聴いて覚えた歌では、二行一節の終わりに「六根清浄 六根清浄」と付け加えて歌われていたが、元歌にはそれがない。でもあった方が格調が高いように想われるが、誰がそのようにしたのかは不明である。
 また中山晋平作曲の楽譜を読むと、私が習った節は、一節目はほぼ似ているが、二節目は異なっている。

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