2013年4月25日木曜日

春の探蕎は飛騨高山の蕎麦処「せと」へ

 平成25年の探蕎会総会で、今年前半の行事で、3月はかほく市白尾の「龜屋」、4月は高山市の「ざる蕎麦 せと」と決定していた。4月は18日の月曜日、ここを選んだのは、野々市の「敬蔵」の店主の推薦とかだった。このところ探蕎会の蕎麦屋巡りは平日ということもあって、参加する方はどうしても限定されてしまう。この日も参加者は8名で、5名(大滝、寺田、早川夫妻、木村)は前田さんの好意で車に便乗させてもらい、集合場所の白山市番匠の「和泉」へ向かった。今回も和泉さんの車(8人乗り)で行くことに、出発は9時予定だったが、揃ったので15分前に出た。
 天候は晴れ、でも今日の天気予報は曇り後雨、用心して折り畳みの傘を持参した。白山ICから北陸自動車道へ入る。砺波平野へ入ると、靄なのか霞なのか、視界は2kmばかり、立山連峰は全く見えない。東海北陸自動車道に入ると、前に袴腰山が見え、中腹以下が靄か霞で白く隠れている。袴腰トンネルを抜けると五箇山、さらにいくつかトンネルを抜けると白川郷、次に長大な10.7kmの飛騨トンネルを抜けてすぐの飛騨河合PAで少し長めの休憩をとる。天気は良く温かい。蕗の薹が咲いている。再び高速道へ、トンネルと高架橋が交互に、よくぞ作ったものだ。清見ICから中部縦貫自動車道に入り、高山ICで下りる。正面には真っ白な乗鞍岳が見えている。連絡道から国道41号線に入ると、程なく左側に目指す「手打ちそば処 せと」の看板が見えた。到着は10時45分近く、休憩時間を入れて約2時間弱の乗車だった。この店は私のリストでは「蕎麦正 せと」となっていたので、どうしたのかと思ってその看板をよく見ると、「せと」と書いてある看板の上部の蕎麦正の文字は白ペンキで塗りつぶされていた。この店は蕎麦正グループから離脱したのだろう。
 11時半開店なので、少々付近をブラつく。店は国道41号線に面した平屋建て、車は8台駐車可能である。店の前にはミニ水車が回り、手回しで風を送り穀粒を重さで分別する、昔の農家では必需品だった「とうみ」が置かれ、何故か行灯?も飾ってある。開店時間前だったが、「お待たせしました」と女御に言われ、暖簾をくぐる。当初は奥の畳敷きの部屋と思ったが6人しか入れず、土間の6人テーブルに4人ずつ腰を下ろす。でも少々窮屈だ。席数は6人テーブルが3卓、カウンターに15席、それと奥の小間、ざっと40人は入れそうだ。
 テーブルにはチラシが置いてあり、店主の瀬戸靖史さんの「そば」に対する想いが述べられている。曰く「そばが好きで蕎麦屋を始めました。毎日蕎麦と取り組んでいると、蕎麦のいろんな味の表情に出会います。そのいろんな蕎麦の味をお客さんにも楽しんで貰おうと4種用意しました。いろんなそばの特徴を楽しんで下さい」と。ということもあって、皆さん「四種盛」(1500円)を注文する。注文は半皿単位で注文でき、この四種盛の一盛りは半皿相当ということである。蕎麦前のお酒は一種のみ、「神代」という飛騨神岡の大坪酒造の酒、先ず1合で3本、後で2合を1本追加した。冷やといっても常温、でも飲みやすい酒だった。つまに「山菜・野菜の天ぷら」をテーブルに2皿ずつ注文する。でもこの天ぷら、出初めと最後とでは大変な時間差があり、またテーブルでも差があり、私と寺田会長に運ばれたのは、そばの4番目が出る少し前、もう1杯お酒が欲しくなる頃でもあった。
 今日の四種盛は、4月10日〜5月中旬限定で、チラシの順では「奈川在来」「白川郷」「丸岡在来」「大野完熟」とあったが、出された順はこの順ではなく、また前田さんの「めくれない日めくり日記」に書かれた順と私達のテーブルの順も一部異なっていた。この四種を混同しないように、小さな色付きのタグを容器に載せて運んでいたが、訊くとこれは間違えないための智慧とか。テーブルには生山葵と鮫皮下ろし。「そば」は出汁徳利と蕎麦猪口、白磁の皿に刻み葱、青色の小さな壺に砕いた湖塩と小匙が載った角盆に載せられて出てきた。以下に私達のテーブルに運ばれた順に、能書等を記す。
(1)大野完熟・大野在来(福井県大野市)玄そば挽きぐるみ、二八、細打ち
「在来種の多い福井県の品種の中でも、地元の消費率が高い。『落ち着いた味わい、馴染みやすいソバ』。蕎麦にとって好条件の地形や気候の整っている大野市でこそなし得る刈り取り時の黒化率97%という数値、その完熟の味わいをお楽しみ下さい。どちらかというと、温かいメニューやおろしそば・とろろそばにお勧めです」。そばは朱塗りの長方形のせいろの簾の上に盛られていた。目印は黄色。そばの色はやや黒い。初めは塩で頂く。程よい硬さ、細打ちということもあって、のどごしも良い。標準品だ。つゆはどちらかというとあっさりした甘味のある淡い色で、辛味は感じない。
(2)奈川在来(北海道・黒松内町)丸ヌキ、手臼挽き、十割、平打ち
「飛騨と信濃をつなぐ〔ブリ街道〕の宿場でもあった旧奈川村に伝わる味の濃い品種で、北海道で栽培。『超粗挽きーソバの甘さを知る蕎麦』。ソバの実の香りは実はココナッツのような香りです。その香りの最も強いのがこの奈川在来の特徴です。ソバの実から可能な限り雑味を取り除き、また極端な大粒に挽くことで、鼻腔を刺激し、甘味を感じやすくするよう工夫しました。最初の一口は、つゆもワサビも付けずにソバの甘さを体験して下さい」。そばは厚手の角皿の中央部が丸く平らに窪んで黒い釉薬がかけられた皿に盛られて出てきた。目印は緑色。色はやや白っぽい。平打ちだが幅は2mmばかり、でも厚さは薄く、一寸見た目には細打ちに見える。しかしとても超粗挽きには見えない。超粗挽きと銘打つなら、むしろ太打ちにして噛んで食べるようにすれば、確実に甘味を感ずるだろうにと思う。それにしても信州の奈川在来の蕎麦が、北海道で栽培されているとは知らなかった。驚いた。
(3)白川郷/信濃1号(岐阜県白川村)玄そば挽きぐるみ、十割、太打ち
「そばは『田舎のお婆ちゃんちで食べたそば』。飛騨地方で多く栽培されている品種。白川郷の個人の農家さんが手がけた、自然に恵まれた深い香りと甘味が特徴」。そばは波形菊紋の平皿に盛られて出てきた。目印は赤色。見た目には黒っぽく、太打ちとあったが、中打ち程の太さ、ただいけないのは麺がキレギレなことだ。これは昔の田舎の婆さんが打ったそばのようで、正に素人さんの出来としか言いようがない。信濃1号は長野県で改良された品種で、現在日本では最もよく栽培されている蕎麦の品種でもある。
(4)丸岡粗挽・丸岡在来(福井県坂井市)挽きぐるみ、十割
「〔一筆啓上〕でお馴染みの丸岡のそばです。今や全国で引っ張りだこのブランド品です。『奥深い甘味・ボリュームあるソバ』。蕎麦の実を、甘味が強く色がよい直径3.8mm以上の粒と、それ未満の香りと味わいの深い粒に選別し、前者は殻をむいて粗挽きにし、後者は殻付きのまま石臼で挽き、ブレンドしました」。そばは薄い焦げ茶色をした、白っぽい細打ちのそば。片方を折り曲げた四角な陶板に載って出てきた。目印は青色。味はそこそこだが、丸岡の海道さんのところで食したあの「そば」に比べると、正に香りは雲泥の差だ。またここでは2種類に分別していたが、海道さんのところでは、多いときは7種類にも分別するとかだった。味や香りをより先鋭化するためとかである。
 ところでこの4種、色や太さ加減では鑑別できそうだが、ブラインドで食べた場合、果たして鑑別は可能だろうか。この中で田舎そばは何とか分かっても、後の3品はそう思って食べているのであって、私にはとても見分ける自信がない。いつか京都の「じん六」で、異なる3産地の「そば」を出され食したことがあったが、食べた時は、ああ前のとは味や香りが違うなあと思っても、後でどう違ったかを口にするのは、実に至難の技だった。もっとも近頃はソムリエならぬソバリエという人がいて、品種や産地までも鑑別できる人もいるようだが、前田さんもブログに書いていたが、せいぜい二種盛りくらいが私達には妥当なのかも知れない。
(5)山菜や野草、旬野菜の天ぷら(八品ほどの盛り合わせ)
 黒縁の丸皿に半紙を敷いて、その上に砕いた湖塩と盛り合わせの天ぷらが載っていた。リストには、蕗の薹、蕗の葉、コンテツ、浅葱、タラの芽、こごみ、金時草、新牛蒡、姫竹、嫁菜、蓮根、蓬、蕨、独活、野日草、雪の下などが書かれていたが、出てきたのは、蓬、こごみ、縦割りの牛蒡、姫竹、ほかに店主に教えてもらったアズキナとナンテンハギの葉があったが、これで6品、もう2品は失念した。

 終わって今日の会費を徴収、一人5000円。残金は車を提供して頂いた和泉さんへ。ところで店の前で待ったいると、和泉さんから皆さんに頂き物、品は「チベットの華雪(はなゆき)」Tibet plateau Lake salt、店で出ていたあの湖塩だと思う。有り難く頂戴した。この後集合写真を撮った。

「ざる蕎麦 せと」:岐阜県高山市下岡本町 1650-5  TEL (0677) 35-5756
 開店11時 閉店16時(LO 15:30) 定休日 毎週水曜日(祝日営業)
・おしながき:(1)そばがき、炊き込みご飯 (2)飲み物(ビール、ノンアルコールビール、地酒、焼酎蕎麦湯割り) (3)冷たい蕎麦(ざるそば、ざるおろし、ざるとろろ、四種盛、二種盛、薬味三種盛) (4)温かい蕎麦(かけそば、かけおろし、かけとろろ) (5)天ぷら(山菜・野草・旬野菜、孟宗竹の竹の子、タラの芽、半熟玉子) 蕎麦の注文は半皿単位。      

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