2018年5月7日月曜日

トロッコ電車での新緑の黒部峡谷

 横浜に住む長男が4月28日に帰郷して5月5日まで滞在した。帰郷した折の常として、1日は何処かへ出かけるのが常態化している。それで今年は「のとじま水族館」が大水槽をリニューアルしたとかで出かけようかと算段していたが、本人は黒部峡谷へ行きたいということで出かけることにした。行けるのは5月1日のみとか、私も万障繰り合わせて同行することにした。天気は上々、翌2日からは天気は下り坂という。
 家を朝7時に出た。白山 IC で北陸自動車道に入り、有磯海 SA で食事し、その後黒部 IC で下り、県道を宇奈月温泉へ向かう。天気は晴れ、暖かい日射しが注ぐ絶好の行楽日和だ。街に入り、富山地方鉄道の宇奈月温泉駅を過ぎると、黒部峡谷鉄道の宇奈月駅が見えてくる。係員の指示に従い、駅前近くの有料駐車場に車を停める。乗用車の利用料金は 900 円、約 350 台停められるという。駅で切符を求めると、今日は鐘釣までしか行かないとか、料金は 1,410 円、終点の欅平までは5月5日に開業の予定とか、やむを得まい。それにしても駅構内にはマスコットキャラクターの2体はともかく、正装した面々が大勢いて、聞けば今日は開通を祝ってのセレモニーが駅ホームで行われるとか。来賓の中には、富山出身の女優の室生滋さんも居て出席されるという。鉄道は4月20日に宇奈月〜笹平間が開通してはいたが、晴れのセレモニーとしては5月1日が相応しいのだろう。
 10時10分頃にセレモニー出席者が会場の駅ホームへと移動、その後暫くして改札が始まった。黒部峡谷鉄道会社の社長と宇奈月駅の駅長、続いて地元宇奈月温泉観光協会の会長、来賓の黒部市の市長らが挨拶、最後に室井滋さんの挨拶があり、セレモニーは終了した。沢山の観光客もこの珍しくも出くわしたセレモニーに聴き入っていた。
 出発は 10:44 、私達が乗った客車は有蓋でオープン型の普通客車、1〜7号車があり、私達が乗ったのは7号車、ほかに通常の客車タイプのリラックス客車 (窓付き) が6輛連結されている。天気が良くて
峡谷を満喫するにはトロッコタイプの通常客車が相応しいと思う。後での説明で分かったことだが、牽引する電気機関車は ED 型2輛、1台で客車7輛を引くことができるとかで、機関車2輛での重連だった。今日の終点の鐘釣までは約1時間、私にとっては久しぶりの乗車だった。
 駅を出発して間もなく、この鉄道のシンボルにもなっている深紅の鉄橋の新山彦橋を渡る。乗っている客からよりも、旧鉄橋の山彦橋からの眺めが秀逸だ。山々は新緑一色、電車は橋を渡って黒部川右岸を進む。左手には平行して冬季歩道が見え隠れしている。そして眼下には黒部の流れ、電車は徐々に標高を上げ、柳橋、森石を通過して黒薙に至る。ここまで25分。この駅から20分歩いたところにある黒薙温泉はこの峡谷最古の温泉で、下流にある宇奈月温泉の源泉ともなっている。
 黒薙川に架かる後曵橋を渡り、再び本流右岸を進む。出し平ダムはコバルト色に染まって見え、対岸には新緑の出し六峯が見える。笹平、出平、猫又を過ぎ、本流に架かる鐘釣橋を渡ると鐘釣駅だ。ここまで約1時間の乗車、復路の電車出発まで45分間あり、駅周辺をブラつく。駅の山手には黒部川の氾濫を防ぎ、洪水から守るために安置されたという鐘釣三尊像が祀られている (片道1分)。またホームの上流側の階段を川に向かって下りると、黒部万年雪展望台があり、ここからは対岸の百貫山に積もった雪が百貫谷の谷筋に落ちて堆積し、夏でも溶けずに残る黒部万年雪を本流対岸に見ることができる展望台 (片道3分) がある。またここからは下流にある鐘釣美山荘と上流にある鐘釣温泉旅館を見渡せる。また更に上流には片道15分で本流の露天風呂のある河原に降り立つこともできる。時間が来て、私達はここから宇奈月に引き返した。往きにも帰りにも随所で案内があったが、アナウンスしていたのは室井さんとのことだった。5日には終点欅平まで全線開通するという。資料を見ると、標高は宇奈月 224m、鐘釣 443m、欅平 599m 、距離は宇奈月から鐘釣までが 14.3 km、欅平まで 20.1 km 、所要時間は終点までは約 80 分とある。
 振り返って、私がこのトロッコ電車を多用したのは約60年前、まだ大学生の頃、欅平から祖母谷温泉を経由しての白馬岳への登下行や、欅平から業務用エレベーターで 400 m 上り、更に高熱隧道を抜けて阿曽原温泉に至り、ここを拠点にして黒部川本流の下廊下を探訪したり、裏劔の遊んだことを思い出す。現在は阿曽原温泉へは山道を歩いてしか行けず、片道6時間を要する1日コースとなっている。当時はまだ黒部ダムはなく、上廊下入り口の平の渡しまで川筋を遡行することができた。また私達が便乗していたトロッコは関西電力の専用鉄道、無蓋で正にトロッコそのもの、安全保障のない営業形態だった。今は正に至れり尽くせり、隔世の感がある。現在は正に観光スポットそのものだ。

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