2018年5月13日日曜日

いしかわ・金沢「風と緑の楽都音楽祭」

 オーケストラ・アンサンブル金沢 (OEK) の前音楽監督の井上道義氏が、10年前に、5月の3〜5日をメインに、通常の定期演奏会のほかに、金沢をメイン会場とする「ラ・フォル・ジュルネ金沢」なる音楽祭を、フランスでの金沢市の姉妹都市のナンシー市と提携して発足させた。毎年テーマを設定して、内外の多くのアーティストを呼び、田舎の都市としてはかなり反響を呼んだ催しとなった。しかしエージェントとの契約が一昨年終わったこともあって、独自の企画で音楽祭を継続しようという機運が高まり、昨年に表題の新生音楽祭が誕生した。一昨年まで9回続いた「ラ・フォル・ジュルネ金沢」は主に井上前音楽監督がリーダーとなって牽引してきたが、これからは独自で新生音楽祭を企画しようということになり、昨年から発足した。このような意見の相違もあってか、昨年の音楽祭には井上音楽監督は一切棒を振らなかったし、これが誘因だったかどうかは分からないが、彼は今年3月には OEK を去った。
 さて昨年はベートーベンを特集して、交響曲全9曲を演奏するなど、全 178 公演が挙行されたが、第2回となる今年は、モーツアルトをメインテーマに 177 公演が企画された。発表によると、来場者数は 112,960 人で、昨年の 111,840 人を上回ったとのことだった。会場は石川県立音楽堂のコンサートホール (1560 席)、邦楽ホール (720 席)、交流ホール、金沢市アートホール (304 席)、北國新聞赤羽ホール (504 席)をメインに開催され、オーケストラ8団体、指揮者9人、演奏者 50 人、その他8人が招聘された。
 この音楽祭の各有料公演には入場券を求める必要があるが、0EK の会員には予め公演の2ヵ月前に先行予約の特権があり、予約できるシステムになっている。しかしこの予約では座席を指定することは出来ず、自動抽選となる。だからもし席を選ぶのであれば、先行予約後の残り席の中から、一般発売後に指定して購入する必要がある。私は1日3公演、3日で9公演を先行予約した。
 私が聴いた公演は次のようであった。オーケストラと指揮者は、ザルツブルグ・モーツアルテウム管弦楽団 (リッカルド・ミナーシ指揮 ) の3公演、アマデウス室内オーケストラ (創設者のアグニエシュカ・ドウチマル指揮) 1公演、紀尾井ホール室内管弦楽団 (広上淳一指揮)2公演、オーケストラ・アンサンブル金沢 (OEK)(ウラディミール・アシュケナージ、ヘンリク・シェーファー、ライナー・キュッヒルが指揮)が3公演の計9公演。演奏者は、ヴァイオリンは、ライナー・キュッヒル2公演、シン・ヒョンス1公演、坂口晶優 (地元金沢辰巳丘高校講師)1公演、ハープ (吉野直子) とフルート (高木優子) のデュオ1公演、ピアノはペーター・レーゼル1公演、モナ・飛鳥 1公演、辻井伸行 1公演、菊池洋子 1公演、田島睦子 (石川出身) 1公演、声楽は山口安紀子、鳥木弥生 (石川出身)と高橋洋介とでの1公演である。
 以下に私が聴いた公演で印象深かったものを記してみる。
1.ライナー・キュッヒル弾き振りの2公演
 この人はウィーン・フィルのコンサートマスターを 45 年も勤めた大御所、OEK とも何回か共演しており、私も聴いたことがある。とにかくヴァイオリンでのリードもさることながら、その音の色調や力強さと繊細さは抜きん出ていて、モーツアルト作曲のヴァイオリン協奏曲第5番イ長調「トルコ風」では、OEK がバックアップして素晴らしい雰囲気を醸し出していた。正に乾坤一擲の演奏だった。またOEK の弦楽アンサンブルとの共演では、モーツアルトの弦楽四重奏ともいえる3曲のディベルティメントの中では最も有名なニ長調が演奏されたが、その音色は実に際立って光っていた。次いで弦楽四重奏用に編曲された「アダージョとフーガ  ハ短調」が演奏された。次にモーツアルトを離れて、レハールの「メリー・ウィドウ」より「行こうマキシムへ」と有名な「ヴィリアの唄」、そしてシュトラウス2世の「南国のバラ」と「美しく青きドナウ」が演奏されたが、よく敷衍されて誰でも知っている曲だが、キュッヒルのリードで、管弦楽での演奏とは一味違った新鮮味が感じられ、聴衆を魅了した。

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