2016年6月8日水曜日

平成28年5月のあれこれ(その5)

16.魯山人寓居跡「いろは草庵」訪問
 子うし会での傘寿の祝宴を山代温泉の「ゆのくに天祥」で行なった折に、同じ山代温泉の旧吉野屋別荘の「いろは草庵」で、「燕台ー魯山人を支えた文人」という企画展が開かれていることを知った。この企画展は「魯山人の美の原点を探る」という一連のシリーズの一つで、3ヵ月毎にテーマを換えて行なっていて、今回は第44回だという。北大路魯山人は今ではつとに有名で、誰一人として知らぬ者はいない程の有名人であるが、しかし彼が本来持っていた書家や篆刻家としての才能の上に、中でも料理人兼美食家/陶芸家として花開いたのは、細野燕台との邂逅があったからこそで、でなければ彼の才能がこれほどまでに発揮できたかどうかは疑問である。
 私がこの企画展に興味を持ったのは魯山人ではなくて、燕台の名が出ていたからで、今まで一度も「いろは草庵」には足を運んだことがなかったこともあって、尚更興味が沸いた。細野燕台については、金沢市下本多町にある金沢ふるさと偉人館にかなりの資料があり、何度か訪れたことがある。また常設展示はしていないが、伊東深水が描いた晩年の細野燕台の全身像が、金沢市出羽町にある石川県立美術館に収蔵されている。
 細野燕台は本名は申三といい、金沢の商家細野家の長男として生まれた。次男は生二といい、私の母の父親 (母方の祖父) である。そして長女は玉といい、私の父の母親、即ち私の祖母である。であるからして、私の父と母はいとこ添いということになる。こういう近い縁であるからして、燕台は野々市の家にもよく来てお出でで、私も会った記憶がある。そんなこともあって、私の家には燕台が書いた筆跡や上絵付けした器などが残っている。
 5月31日の火曜日に車で山代温泉の「いろは草庵」へ出かけた。場所は山代温泉総湯の近くにある。燕台に伴われて山代温泉に来た魯山人 (当時は福田大観といった) は、吉野屋旅館の食客になり、篆刻家としてこの吉野屋別荘で刻字看板の制作を始め、当時の山代の温泉旅館のほとんどの看板を彫ったとされる。いろは草庵の中には、当時の篆刻をしていた作業場が再現されていて、彫りかけの作品も置かれていた。その後燕台や吉野屋の紹介で初代の須田菁華の窯に入ることが叶い、上絵付けを体験することになる。
 展示室には、燕台が彫った「吉野屋」という刻字看板と、福田大観 (魯山人) が彫った「吉野屋」という刻字看板が並べて置いてあった。また二人が書いた書や扁額、それに鉢や花入れ、皿や向付け等が置かれていた。また燕台が魯山人に宛てた書簡も展示されていた。中でも一際目をひいたのは、燕台の長男の結婚式に当たって魯山人が作陶したという「乾山風梅椿手付鉢」で、魯山人の大胆な形状の器と構図には目を見張った。これは初めて目にした作品だった。この庵の展示スペースは広くはなく、それで何回にも分けて展示するのだろう。私は小一時間ばかりいて辞した。

付.庭に出た孟宗竹の筍を食す
 私の家がある地所は、旧北國街道沿いで、南北に長い矩形状をしている。そして地所のやや東寄りに、用水が南から北へ流れていて、後半は曲水になっている。用水の西側の通りに面した方は約390坪、用水の東側は約110坪ある。後者の南端は竹薮で、以前は孟宗竹と真竹の薮だったが、真竹は花が咲いて枯れて無くなった。もう50年前のことである。今は此処には孟宗竹と矢竹が繁っている。ところで真竹が無くなって以降は、孟宗竹が勢いを増して、至る所に根を張り巡らすようになり、とんでもない所に筍が出るようになった。特に築山に置かれている台石や飛び石を持ち上げたり、植木の間に出たり、もう3日も回らないとアッという間に大きく成長する。
 以前母が元気だった頃は、まだ竹薮の範囲が今ほど広がっておらず、薮以外に出た筍は丹念に掘って捨てていた。というのは、こんな庭に出てくる筍など、多分えぐみがあって食べられないと思っていたからである。母が亡くなって、筍退治の役目は私に回ってきた。今竹が生えて薮になっている面積は、往時の2倍にもなっていよう。それで薮以外に生えてきた筍は総て取って捨てていた。ところで3年前、私の妹が一度食べてみたいと言うので渡したところ、食べられるとのこと、それではと持ち帰ってもらうことにした。でも量が多い時は家でも食してみた。ところが思っていたえぐみは全くなく食べられた。ところで昨年は裏年で数はそれ程多くはなかったが、今年は表年、丹念に取った。その数50本以上、大きなものは径が15㎝ もあり、私と妹とでは処分しきれず、知人にも引き取ってもらった。それでも取り残しが大きくなり、伐って捨てたものも20本はあった。ところで食した方からは、市販の筍よりも美味しかったというお世辞もあり、これには目尻が下がった。薮の50本ばかりは今は大きく成長している。

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