2015年8月10日月曜日

白山の三馬場めぐり(その2)

(承前)
2.平泉寺白山神社と天台宗霊王山平泉寺  福井県勝山市平泉寺町平泉寺
 白山比口羊神社を出て、鶴来山手バイパスから国道 157 号線に出て南下する。途中で道の駅「瀬女」へ寄ってから再び国道に戻り南下する。手取ダム堰堤近く、東二口第一隧道の一時通行止めになっていた崖崩れ現場は、現在は片側交互通行になっているが、一時は白山登山の基地市ノ瀬に入るのに、福井県勝山市を経由しなければならなかった。車は手取湖左岸のトンネル群を抜けて白峰へ、更に谷峠を越えて勝山市に入る。更に国道を進み、左に越前大仏が見えると程なく道路に標識があり、左折すると平泉寺白山神社に着いた。
 駐車場には大型観光バスが停まっていた。今日は日射しが強く、家内は日傘を持ってきたが、それでもアスファルト道路の照り返しは半端ではない。以前に波田野先生と訪れたのはもう随分昔なので、当時とは辺りの雰囲気は随分と変わっている。元あった広い駐車場の半分には、新しく白山平泉寺歴史探遊館「まほろば」が出来ていて、ここは国史跡である平泉寺旧境内の総合案内施設とのこと。勝山市が運営していて、入館は無料とのことだった。暑さを逃れて「まほろば」に入る。
 館内はエアコンが効いていて実に快適、映像やパネルで平泉寺の歴史や越前禅定道のこと、また平成元年 (1989) から始まった発掘調査で出土した品々の展示など、資料は実に豊富だ。開山は養老元年 (717) 、弟子と共に白山へ向かう泰澄は、この地の美しい泉 (境内にある御手洗池 ) の辺りで白山女神 (イザナミノミコト) から白山の頂上に来るよう告げられたという。その後登拝に成功した泰澄が、下山後にこの泉の辺りに構えた庵が後に平泉寺になったとかで、ここより白山室堂への道が越前禅定道である。
 白山平泉寺は白山御前峰を本社、白山大汝峰を越南知 (おおなんじ) 社、白山別山を別山社とし、これを白山三社といい、ここでは神仏習合が見られた。すなわち本社の垂迹神は伊◯◯尊 (イザナミノミコト)、本地仏は十一面観音菩薩、越南知社の垂迹神は大己貴尊 (オオナムチノミコト)、本地仏は阿弥陀如来、別山社の垂迹神は天忍穂耳尊 (アメノオシホミミノミコト)、本地仏は聖観音菩薩である。〔註〕ここでいう本地垂迹とは、仏・菩薩が衆生を救うためにその本身を仮に種々の姿に変えて現れることで、日本の神々も印度の仏・菩薩が仮に姿を表したものとして説かれる ( 維摩経序 )。こうして白山平泉寺は最盛期には 48 社、36 堂 6千坊、僧兵 約8千人の巨大な宗教都市であったという。しかし天正2年    (1574) には一向一揆の焼き討ちにより全山焼亡してしまった。後に一部再建されたものの、明治の神仏分離令によって、名称は平泉寺白山神社となり、祭神は垂迹神のみとなった。また廃寺となった天台宗霊応山平泉寺はその後村民らによって境内に復活されたとのことだ。
 バスツアーの方々は約1時間かけて境内を巡るという。どこからどこまでが境内なのかが分からない位、とにかく広大である。現在は南谷三千六百坊跡、北谷二千四百坊跡の発掘が進められているという。そして一部復元された門や土塀、それに中世の石畳道、大門や堂宇や道場の跡、平泉寺焼亡の折にも焼けずに残ったという大杉などが見られるという。しかしこれらをまだ私は目にしたことはない。でも今日は牛王印巡りということで、またの機会にゆっくり訪れようと思う。ところで牛王印は社務所で頂くのだが、その場所が分からず、改めて探遊館で教えてもらった。奥にある拝殿への参道を辿り、精進坂の石段を上り、一の鳥居をくぐると左手にあるとか。進むと標柱があり、門をくぐって少し歩むと古ぼけた社務所があった。人が居るような気配はなく、牛王印とスタンプ台が式台に置いているのみ。裏の旧玄成院庭園を拝観したい人は拝観料を納めて鑑賞して下さいとある。北陸最古の庭園であると。
 以前に来た時は参道を更に奥まで進み、二の鳥居をくぐり拝殿に参拝し、さらに奥にある三の宮まで上がった。これより上は越前禅定道になっていて、禅定道は平泉寺の背後にある三頭山、法恩寺山、経ヶ岳を経て、小原峠から三ツ谷へ下り、一ノ瀬に達し、ここから旧道尾根 (現白山禅定道 )に上って、更に現在の観光新道を経て室堂に達していた。ただ法恩寺山から小原峠までの道筋は未だもって確定されていない。でもこのように現在の市ノ瀬から先の旧道は白山禅定道として復活し、真砂坂分岐より上は観光新道として利用されている。翻って現在白山への登山には、旧越前禅定道が最もよく利用されていると言っても過言ではない。ただ平泉寺から市ノ瀬に至るまでの道は特定されていないこともあって、この区間は一部がハイカーの対象となっているに過ぎない。ただ福井県では最もよく登られるという赤兎山の登山で、最もよく利用されるのがこの小原峠である。

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