2013年7月29日月曜日

信州の秘湯:角間温泉と七味温泉(その1)

 4月のとある日、家内から7月14日(日)と15日(海の日・7月の第3月曜日)の連休にもう1日年休をとって3日間、信州の温泉にでも行かないかと提案があった。私は毎日サンデーなので問題はなく、早速手配した。私が選んだ候補は、上田市の奥の真田地区角間渓谷にある角間温泉の岩屋館と、かたや高山村の松川渓谷にある七味温泉渓山亭である。2軒とも「日本秘湯を守る会」の会員宿で、申込みは3ヵ月前ということもあって、すんなり予約ができた。宿泊料金はいずれの宿も16〜24千円である。それで初日は角間温泉に、2日目は七味温泉に投宿することにした。

 7月14日(日)朝、突然の客人があり、家を出たのは午前10時近くになった。森本ICで高速道に入り、有磯海、名立谷浜、妙高、坂城の各SAやPAで休憩しながら、上田菅平ICで高速道を下りた。時間は午後2時半近く、昼食に上田の刀屋でそばでもと思ったが、生憎と休み、宿のチェックインタイムは午後3時なので、そのまま宿へ向かうことに。国道144号線を北上し、真田交差点を右折し角間渓谷に入り、山道を6kmばかり進むと、真田家の隠し湯と言われる角間温泉岩屋館に着く。先着が1組、宿の前の駐車場には8台停められるスペースがある。周りは岩盤に囲まれた渓谷の猫の額ほどの土地に建つ一軒家、入り口は古ぼけた隠れ家風、でも奥には鉄筋の建物も見える。
 案内されたのは、鉄筋の建物を通り抜け、斜面に沿って付けられた屋根のある階段を上って行き着いた最上部の帰鳥庵という離れ、案内してくれた女将によると、ここはこの宿では最もとびきりの部屋とか、玄関から部屋へ上がると、内装も調度も素晴らしいが古めかしい趣きの部屋、でもあまり使われていないような印象を受ける。離れは階段の途中にもう一つあり、渓勝庵という。案内では全体で18室あるとのことだ。
 階段を更に10段ばかり上がると、暖簾の向こうに瀟洒な露天風呂がある。お湯は2槽あり、大きな石で組まれた透明で湯温がやや高い湯槽とやや小さく木枠で組まれた茶褐色で温めの湯槽とがある。泉質は前者がナトリウムー塩化物・炭酸水素塩泉、後者は含鉄・炭酸水素塩泉で、後者の源泉は透明なのだが、空気に触れると酸化されて鉄錆色になるとかで、前者よりは温度が低いとかだった。早速入りにいったが、すでに2組の夫婦が入浴していた。ここは原則として混浴だが、女性のみの入浴も1時間ずつ2回設けられている。ところで入浴できるのは日中のみ、夜間は覆いがかけられ、入浴はできない。周りは鬱蒼とした樹々に囲まれ、渓谷や岩峰が眺められる素晴らしいスポットになっている。
 2組の夫婦は温い茶色の湯に入っているが、のぼせることもなく、長い間浸かっておいでである。一方私の方は温度が高く、10分も浸かっているとのぼせそうになる。それでそこそこに退散する。離れは鍵がかかったまま、家内は内湯からまだ上がって来ていないので、階段を下り、新館を抜け、本館のフロントまで行き、スペアキーをもらう。この頃にはお客はぞくぞく、案内は女将のみなので、てんてこ舞い。ビールの追加をお願いしたが、とうとう夕食まで届かなかった。漸く家内も戻って、2本しかないビールを分け合って飲む。私は仕方なく持参の神の河で喉を潤す。客への気配りが今一である。
 夕食は本館1階の個室、座机にはもう既に八品が並べられている。お品書きは付いていないので、献立の詳細は記すことはできないが、中々豪華である。飲み物は家内はアサヒビール、私は地の冷酒「本泉菊」を貰う。先付け、前菜5品目、瓜の漬物、煮物、蒸し物、ジュンサイの酢の物、鮎の塩焼き、鯉の唐揚げに続いて、順に茄子の田楽、岩魚の造り、蓼科牛と菅平の野菜のすき焼き、海老と地元野菜の天ぷら、もり蕎麦、五穀米とお汁、デザートに甘柑と桃、中でも牛肉と岩魚は絶品だった。
 満腹になり、部屋へ戻って寛ぐ。ここは山奥とかで、テレビはBSしか見られない。早々に就寝する。夜は寒く、足袋を履かねばならなかった。家内はいつも朝までに2回は小用に起きるのに、この日は朝までグッスリ、温泉の効能の素晴らしさに驚嘆した。朝5時に、私は内湯へ行く。まだ誰もいない。やはり湯槽は二つあって、茶色の湯は温く、透明な方は熱い。湯冷ましに外を散歩する。渓谷の右岸には豪壮な岸壁が連なっている。谷沿いに歩き、ぐるっと回って駐車場へ、都合8台の車は、東京、横浜、名古屋、大阪、石川からの車、地元の車はいなかった。
 離れへ戻り、午前7時半の露天風呂の開湯時間を見計らって、すぐ上にある風呂へ行くと、何と8人ばかりの若い女の子が既に入っているではないか。いくら混浴可とはいっても、これには暖簾から顔を出しただけで、一旦離れへ戻った。食事は朝8時半、8時まで待ち、上へ行くと、まだ2人が入っていたが、入ることに。私が湯に入ろうとすると、彼女らは湯槽から上がった。すれ違ったときに元気な朝の挨拶、清々しかった。彼女らが浴衣を着てカメラを構えて、私の入浴シーンを写したいと、どうぞと言った。今朝の女の内湯からは岩場が間近に見えるので入られたらと話したが、後で入られたようだった。
 翌15日朝の朝食は二階とか、皆さんも二階なので彼女たちに会えるのではと楽しみにしていたが、私たち離れの二組はダイニングルーム隣りの特別ルームだった。今朝も15品目、これはとても平らげられない。ご飯は軽く一杯、なます、紅白、きんぴら、海苔佃煮、長芋おろし、イクラ大根おろし和え、紅葉子、梅干し、紅鱒甘露煮、卵巻き、豆腐、サラダ、牛乳、果物ジュース、西瓜と林檎、そしてお汁。本当に満腹になった。
 午前10時少し前に清算をして宿を後にする。今日の予定は真田の里を巡り、上田城と記念館を見てから七味温泉へ入ることに。始めに真田家の菩提寺でもある長谷寺へ。ここは真田幸村(信繁)の父の昌幸や祖父母の幸隆夫妻の墓がある。境内には沢山のシダレザクラが植わっていて、春の満開時にはさぞや見事だろうと思われる。お参りを済ませて、次に真田氏歴史館へ向かう。長谷寺からは遠くはないものの、一旦国道144号線まで出たので、大回りになった。駐車場には十数台の車、人気があるようだ。建物はそんなに大きくはないが、ここには真田三代の資料がぎっしりと詰まっている。中でも天正13年(1585)に豊臣秀吉が真田昌幸に宛てた書状や大阪夏の陣之屏風(複製)、NHK時代劇「真田太平記」で着用された真田親子の鎧・兜などはさすがに圧巻である。そしてこの日は休日、真田の赤い甲冑を着けた兄さんが、真田父子の二度にわたる上田城での攻防を、自製の絵巻物を使って講談風に語っていたが、中々堂に入っていて、つい終わりまで聞いてしまった。

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