2013年5月16日木曜日

五月晴れの信州探蕎〔第2日〕

 午前5時少し前、風呂へ行く。東の空が茜色に染まり、やがて高峰高原の一角から朝日が昇る。こういう風呂に浸って朝日を拝むのは生まれて初めてのこと、これもご来光を拝むというのだろうか。塩田平は朝靄に包まれている。今日も快晴、菅平高原の方に雲はあるものの、空はすっきり晴れている。しばし至福の時を過ごす。
 浴衣を着て外へ出る。先ずは北向観音堂へ向かう。宿からは至近の距離にある。放射冷却で外は寒い。後で聞いたが、この日の朝の最低気温は4.5℃とかだった。ここの本尊は千手観音菩薩、長野の善光寺と一対の厄除観音として広く信仰を集めているという。既に数人の方がお参りに来ている。北向きのいわれは、ここは観音堂も観音様も北向きで、南を向く善光寺と向かい合うように建てられていることに由来するからという。本堂に並んで、崖の中腹に温泉薬師瑠璃殿が建っている。また境内の愛染堂近くには、川口松太郎縁の愛染カツラという樹齢1200年の桂の老樹があり、長野県の天然記念物・上田市指定文化財になっている。石段を下り、湯川に沿って上流へ、臨泉楼柏屋別荘に至る。ここは木造4階建ての宿、文人に愛された湯宿、以前に探蕎会で宿泊したことがある。外湯の「石湯」はもう朝から賑わっている。その前には池波正太郎揮毫の「真田幸村の隠し湯」の碑がある。宿の方へ少し戻ると慈覚大師縁の「大師湯」、ここでも中から笑い声が外へ届いて来る。共同湯にはもう一つ「葵の湯」とも言われる「大湯」があり、ここは木曾義仲縁の湯である。これらは信州最古の古湯とされる。
 宿へ戻ったのが7時過ぎ、朝食は8時半とか、テレビを見ながら時間を稼ぐ。今日の予定は、上田城址を訪れ、古い街並の柳町を歩き、池波正太郎が度々足を運んだという蕎麦屋の「刀屋」で「そば」を食べて帰るという段取りにする。時間になって食事処へ、空き腹に冷たいビールがしみわたる。凝った工夫が施された豪華な朝食、十分に堪能した。
 宿を出たのは10時20分、店の前で女将さんに集合写真を撮ってもらう。上田城址公園にナビをセットして出発する。ずっと下り道、千曲川を渡って左折して坂を上がると目的地、駐車場に車を停め、散策する。はじめこの城址公園に併設されている市立博物館や記念館や櫓に入る予定にしていたのだが、連休明けで残念ながら休館だった。公園の入口に真田十勇士の記念写真用のパネルが置かれている。私など半分位しか知らないが、懐かしい感じがした。二の丸跡の道を歩み、本丸堀の橋を渡ると、正面に平成6年に復元された本丸入口の東虎口櫓門があり、左右には既に移築復元された南櫓と北櫓が建っている。博物館が開いていれば中へ入れたのに残念だった。また城門右手の石垣には、真田石という城内一の大石がある。なおも進むと、正面に真田神社がある。参拝した後、本丸跡を散策する。ここには遠足の子供達も沢山訪れている。ここからは西の方に西櫓も望める。
 公園を出て柳町に向かう。柳町は旧北國街道の狭い通りで、駐車場はないのではと思い、近くの原町通りにある上田市ふれあい福祉センターに車を止めさせてもらって出かける。上田市内を鍵形に通じている北國街道は、今でも柳町にその面影を最もよく残していて、石畳で整備された街道には、三百年も続く岡崎酒造を筆頭に、格子戸を生かした茶房の森文やパン屋のルヴァン上田店、繭問屋を利用した蕎麦屋の手打百藝おお西、また北國街道を往き来するする人々に利用されたという保命水、白壁の味噌蔵がある菱屋などがある。タイムスリップした印象を受ける。これらの古い家の屋根には「うだつ」が上がっている。

● 「刀屋そば店」 上田市中央 2ー13ー23  TEL 0268ー22ー2948
 ナビで刀屋へ向かう。難なく見つかる。駐車は8台可とある。時に午後0時半、程よい腹のすき加減、ここは池波正太郎が度々足を運んだという店である。お昼時とあって、1階(30席)は一杯で2階(20席)へ通される。2階は座敷、相席となるので詰めて座ってほしいと言われる。お品書きを見て、季節限定の「おろしそば」(900円)と「ちらし」(700円)(天ぷらの盛り合わせのこと)を2つ、御酒(450円)を2本もらうことにする。姐さんが来たので注文すると、「おろしそば900円は食べられないのでは」とのこと。「残してもらっては困るので、中盛りにして足りなかったらもう一人前(小盛り)追加したらどうですか」と。指図された通りにする。因みに「もりそば」の小は550円、中は600円、並(普通)は650円、大は850円、「ざるそば」は刻み焼海苔がついて50円高、「おろしそば」は更に200円高くなる寸法で、私達が頼んだのは最終的には「おろしそば」の中盛りで850円ということ、中で二人前だという。ややあって、赤の角盆に赤い丸蒸籠に入った「ざるそば」と青首大根のおろしに花鰹と鶉の玉子が載った器、それに刻み葱と生山葵の入った小皿、そして蕎麦汁、そばは二八、太さは中、量はこれで二人前、姐さんの言うことを聞いて正解だった。並の普通盛は三人前とか、だと食べられなかったかも知れない。ここには「真田そば」というのが名物、信州味噌を出汁でのばし、隠し味にそば汁を加えてそばを食べるもので、この店のオリジナルとか、値段は「おろしそば」と同じである。暫く経った頃、若衆3人が相席となり、「もり」と「ざる」の大盛りを頼んだ。姐さんは注文を聞きにきて念を押したが、若衆はそれでよいと言う。しかし持ってきた「大盛り」なる代物は、驚く勿れ、正にうず高いてんこ盛り、正に初見、かき氷やもっそう飯を連想、とにかくびっくりした。しかし彼らはそれを全て平らげてしまった。これには二度仰天した。本当に驚いた。こちらはやっと収めたのにである。約1時間程いて出た。漸く店も空いてきたのか、先の姐さんが私達の集合写真を撮ってくれた。
〔営業時間:午前11時〜午後6時、LO5時30分.定休日:毎週日曜日〕

 午後1時半過ぎに店を出て帰途につく。上田菅平ICから高速道へ、途中小布施辺りで、千曲川の土手に植えられた満開の八重の桜並木が印象的だった。新井PAで休憩し買い物、流杉PAでは休憩し雪の立山連峰を眺める。ここは立山・剣岳のビュースポット、北は僧ヶ岳から南は薬師岳まで見渡せる。午後の陽を受けて輝いていた。こうして午後6時には出発した「和泉」へ戻り、無事信州探蕎を終えた。2日間運転をして頂いた松川さんに深謝します。全走行キロ数は670kmであった。

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