2011年2月10日木曜日

「さむらい」というサケ

 私が勤務している石川県予防医学教会の専務理事で事務局長の松川さんが、能登のそば屋を特集している「能登」というローカル雑誌を手に、ブラリと私のところへおいでになった。忙しいので滅多に来られることはないのだが、………。おいでた目的というのは、たまたま丸一日からだが空く日があるので、家内と能登のそば屋巡りでもしようかと話していて、私にどこか好い店を推薦してもらったらということだった。私は能登のそば屋は一通り巡ったのだが、松川さん持参の雑誌を見せてもらうと、知らない店もあった。でも読むと、中には店舗を構えていない青テンのそば屋もあって、中々面白い。松川さんもそこそこ出かけられているから、行くのだったら、今まで行っていない店にするか、今までに行った店でも奥さんに喜んでもらえるそこそこ美味しい店にするか、そのどちらかになる。でも回るとしても時間的制約があるから、最大3軒、遠く離れているとなると、1軒か2軒、また開店は大概午前11時頃、閉店を考慮すると、少なくとも午後4時までには最後の蕎麦屋には入るように段取りしないといけない。そこで、松川さん不参のそば屋を3軒挙げると、柳田の「夢一輪館」、門前の「手仕事屋」、押水の「上杉」ということになろうか。でもこの3軒を1日で回るというのは至難の技だ。珠洲の「さか本」もあるが、あそこは泊まらないとそばは出してもらえないという隘路がある。また既参の3軒を回るとしたら、私だったら、中島の「くき」、七尾国分の「欅庵」、羽咋神子原の「茗荷庵」とするなどと、他愛もない蕎麦談義をした。

 閑話休題
 ところで話は一転して、酒の話になった。松川さんが会議で何処かへ(聞いたが失念してしまった)出張した折、晩に居酒屋で酒を飲んでいると、店主が珍しいお酒を飲んで見ませんかといって出してくれたのが「さむらい」という酒、これは何とアルコール度数が46度とか、表示は清酒ではなくリキュールとなっていたという。酒税法では、日本での醸造酒のアルコール度数は、清酒では20度以下、焼酎では45度が限度、ただ与那国島の3軒の醸造元のみ60度が特別に認可されている。ところで清酒の場合、アルコールを造ってくれる酵母自体、アルコール度数が23度に達するまでに自壊自滅してしまうから、もし清酒原料でアルコール度数が高いとすれば醸造用アルコールを添加するしかないが、この手は許可されているのだろうか。でも松川さんはその「さむらい」という46度の酒を、帰ってから酒造会社から取り寄せたという。蔵元は新潟・魚沼の玉川酒造だという。私が驚いていると、じゃ今度少しおすそ分けしましょうと言われた。どんな酒なのだろう。
 早速インターネットで玉川酒造を検索すると、Tamagawa Sake Brewaryとあり、場所は魚沼市須原、豪雪地帯である。蔵元の歴史は古く、創業は寛文13年(1673)、江戸時代初期(徳川四代将軍家綱の時代)、当時の守門村の庄屋の主、目黒五郎助が時の藩主から清酒醸造のお墨付けを頂いて酒造りを始めたという。爾来340年、伝統の酒「清酒玉風味」を醸してきた。現在この蔵元が行っているユニークな企ては、冬季に天然の雪を特殊な方法で雪蔵に貯蔵し、年間を通してこの雪蔵で大吟醸を醸造し、大吟醸をこの雪蔵で低温貯蔵していることだろう。大吟醸以外の醸造酒は常温保存である。現在醸造している酒は、本醸造の「十八代玉風味」と「越の玉梅」、純米吟醸の「越の雪蔵」、純米大吟醸の「目黒五郎助」、大吟醸の「越後ゆきくら」等である。
 そしてもう一点ユニークなのは、新しい珍しいタイプのサケ造りと、日本酒からの化粧品開発へのチャレンジである。紹介してみよう。 ①スパークリング大吟醸「ゆきくら」:生酒(発泡酒)でアルコール度数は12.5%、冷蔵。 ②越後武士(えちごさむらい)(リキュール):アルコール度数は46%、1年熟成、常温保存。 ③越後武士ナポレオン(リキュール):越後武士をオーク樽に詰めて長い年月寝かせて熟成したもので、アルコール度数は43.7%、常温保存。 ④スーパー舞36:7年貯蔵の古酒。アルコール度数36%、常温保存。 ⑤化粧品:天然化粧酒「ゆきくら美白水」。ほかに「ゆきくら」銘の乳液(モイスチャーミルク)、エッセンスソープ、エッセンスクリームなど。
 私が松川さんから頂いたのは、②の「越後さむらい」で、ポリ容器に入った200mlばかり、早速試飲した。松川さんではオンザロックがよいとかで、ロックグラスにそれ用の氷を入れ、上から全量を注いだ。アルコール度数は46%とはいえ、ベースは清酒なので、当然清酒風味、エキス分があるので、焼酎やウィスキーなどよりははるかに口当たりがよくかつ飲みやすく、もつ煮を肴にあっという間に胃の腑に納まってしまった。46度というと清酒ぬ約3倍のアルコール濃度、換算すれば3合ということになるが、そんな抵抗はまったく感じられず、実にすっきりした飲み口だった。ウィスキーだとこうはゆかない。清酒の水の粒子がアルコールの粒子を包み込んでしまったような印象を受けた。面白いサケだった。現品はインターネットでも申し込めるようだ。

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