2010年7月7日水曜日

マチャ(三男誠孝)が夢見た幻の新会社

 誠孝の通夜での挨拶か、あるいは通夜の振る舞いの時かは定かではないが、フリークスの福岡社長が、誠孝から新しい会社を立ち上げたいという相談を受けたという話を聞いた。社長は独立してやるのは大変だろうから、じゃフリークスの中で新しい事業として始めたらどうかということで話がまとまったとかであった。誠孝の新会社構想では、誠孝が社長になり、妻千晶が役員になり、社長が亡くなったら妻が社長になり、そうすれば生活設計も家計も何とかなるだろうという思惑もあってのことだったのだろう。これまで誠孝の給与は人への投資に使い、いわゆる貯金はしていないとのことだった。誠孝が目指していた構想というのは何だったのだろうか。ここに誠孝が入院していたときに見せてくれた構想のメモがある。
 フリークスは福岡社長が起こした会社、平成15年には株式会社となり、誠孝が参画した頃からは店舗数も飛躍的に伸びた。しかし平成17年以降になると直営店の新規開店はなく、新規フランチャイズ加盟店が1店のみという状況、このネットカフェ業界を全国的な視野でみても、進出競争は一段落しつつある状況だという。このような状況の下、経営に参画していて誠孝が考えたことは、無駄を省いて経費を削減することによって、利益の積み増しを図ろうとしたことは想像に難くない。
 先ず初めに手掛けたのは直営店15店舗での経費削減への取組み、どんな手立てを使い、どう対応したのかは定かではないが、あちこちにある個々の店舗での個々の対応を、フリークスが提携している企業に一本化することで経費削減を図ったのではないかと思われる。当然省エネにも取り組んだであろう。こうして経費削減プロジェクトを立ち上げ、取り組んで1ヵ月余りの削減活動の結果、年に換算して5千万円を削減できたとか、この金額は従前の必要経費の3割に相当するという。それもサービスを落とさないでの削減、金額や割合からして余程の無駄がない限り難しいと思うが、それが出来たらしい。しかしこれは現場に足を運んでのチェックがないと、とても書類の提出だけでは無理だろうし、加えて卓越したコンサルティング能力がないと出来るものではない。誠孝が入院しているときにチラッと「マチャにそれを見極める能力があるとして、そのノウハウを受け継いでくれる後継者はいるのか」と聞いたが、「そんな人は今のところいない」とのこと、とするとアシスタントになる人は別として、フリークスでこの仕事をやるとすれば、誠孝しかいないのではと思った。
 年換算削減成功額5,000万円の内訳は、最も大きいのは人件費で2,500万円(50%)、以下ゲーム・DVDソフト600万円(12%)、ネット回線500万円(10%)、家賃400万円(8%)、食材400万円(8%)、動画配信200万円(4%)、コミック・雑誌150万円(3%)、光熱水費100万円(2%)、有料放送70万円(1.4%)、運送会社40万円(0.8%)、携帯電話40万円(0.8%)となっている。(これらは公開資料である) 
 誠孝はこれら自社直営店での成績を基に、新たに始めようとする経費削減の事業は、社長の慰留もあり、フリークスの事業として行うことにしたようだ。早速数社と接触し、経費削減のためのコンサルティングを始めた企業もあったようだ。ここにメモがあり、相手側のクライアント企業との間に契約を締結する場合の約束が書かれている。(1)相手方には情報を開示していただくことが必要なので、秘密保持のための契約を結ぶ。(2)どういう経費項目を削減したいのかを確認する。そしてその項目に関係する取引先、取引上の問題点を明らかにする。(3)業務委託が締結したら削減可能な項目から経費削減交渉に入る。その際必要なデータは提供して頂く。(4)交渉結果については、その都度報告する。(5)完全成功報酬なので、削減できない場合は一切報酬はもらわない。
 しかし誠孝の病状が進行してからは現場へ足を運ぶことが出来なくなり、この事業はまだ緒についたばかりであり、フリークス内にも確たるこのコンサルティング事業を行う部門が確立されていなかったこともあって、計画は中断されることになる。私は誠孝に挫折感はなかったのかと思ったりもするが、少なくとも私には亡くなるまでそのことについて口にすることは一切なかった。

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