(承前)
9月14日(木) 曇り
今日は晴れを期待していたが曇り空、朝湯を頂き、部屋で寛ぐ。朝食は7時半、定刻にセットされる。朝食は「夏の薬膳五色ごはん」、昨晩とは別の仲居さんが膳を運んで来られた。赤、黄、緑、白、黒の器に10品の料理、かなり細かな細工を施されているものもある。中でも「黒米のお粥」というのは初めてだった。またおひつのご飯は米粒が一つ一つ立っていたのには驚いた。これは蒸したのだろうか。何とも豪華な色鮮やかな朝食だった。そして仲居さんに後で北向観音へ行くと言うと、長野市にある善光寺と向き合うように本堂が北に向いていること、善光寺は来世の利益、北向観音は現世の利益をもたらすとされ、両方に参拝しないと片参りになる等々、いろいろ説明をして頂いた。
朝食を終えて、北向観音へ向かう。此処は宿のすぐ近くにある。境内にある御手水は温かい温泉のお湯、こんなのは珍しい。本堂で御朱印をお願いし、参拝する。名の知れた有名な女優が志納した幔幕が掛かっている。回廊を巡り、境内奥にある芭蕉や牧水の歌碑を愛で、「愛染かつら」の名がある桂の古木に想いを馳せる。私は数回来ているが、家内は初めてだという。
9時近く、女将さんに送られ、宿を後にする。初めに前山寺へ行く。別所温泉駅から県道別所丸子線をひたすら東へ走る。右には鋸の刃のような稜線を持つ独鈷山が見えている。暫く走ると、やがて右に前山寺入り口の表示、右に折れ、山の中腹を目指す。程なく駐車場に着いた。ここは弘法大師が開いたと伝えられる真言宗智山派の独股山前山寺、入山料を払い境内に入る。左手には萱葺きの間口十間もの本堂、そして高みには重文の三重塔が見えている。以前来た時は、山道を少し登って上から塔を俯瞰できたが、今は立入禁止になっていた。周りには桜や藤が沢山植わっている。花時は綺麗だろう。入山時に帰りに寄って下さいと言われた休憩所に寄る。ここには野菜や鉢物が販売されている。販売している方の言では、私が朝取りした無農薬の野菜とか、それだからかどれも瑞々しく、その上安い。家内はあれこれ求めていた。そして黄色の花が咲くとかいうホトトギスも求めた。これも功徳か。
再び県道に戻り更に東へ、そして松本への標識がある交差点を右に、方角を南にとり、有料の平井寺トンネル (210円) を抜けると、道は独鈷山の南側を走る国道 254 号線に出る。ここから方角は西へ、鹿教湯温泉を過ぎ、三才山トンネル (510円) 、さらに松本トンネル (200円) を過ぎると松本平に出る。ここから国道 19 号線を北上し、塔の原交差点を左折し、犀川を渡って県道 51 号線 (安曇野アートライン) へ、暫く走ると右手に標識があり、右折して山道を少し走ると目指す「安曇野 翁」に着いた。時刻は丁度開店の 11 時だった。
「安曇野 翁 」 北安曇郡池田町中鵜 3056ー5 ☎ 0261-62-1017
この日は木曜日なのにもう乗用車が4台、真っ先に店に入る。でも先客が1組いた。先客の隣のテーブルへ案内される。ここは、ざるそば (白) 、田舎そば (黒) 、おろしそば、鴨せいろの4つのみ、お酒は大雪渓のみ、あとはビール2種とノンアルコールのみ、シンプルそのものだ。いつもならお酒を頂くのだが、今日はこの後道の駅白馬までは私が運転をするので、この場では飲まないことに。そこで、家内はざるそば、私は鴨せいろを頂く。今日は生憎の曇り空で、後立山の山並みは見えていない。しかし店内は明るく、未だ木の香が残っていそうな佇まいのテーブル席と座敷、ここでは相席はなく、空いていないと後のお客さんは外でお待ちをとのこと。ここの主人はかのそば打ち名人の高橋邦宏さんの一番弟子、素晴らしいそばを出してくれる。さて、家内の評価は。一箸手繰って発した言葉は「素晴らしい」の一言、二八ながらこれこそ「そば」だと絶賛、蕎麦汁も繊細でそばの旨味を引き立たせている。実に満足したと。喜んでもらって本当に良かった。客が次から次へと訪れる。帰りに奥さんと思しき女の方
に、ここへ来られてもう 15 年位経ちますかとお訊きしたら、20 年になりますと言われた。帰り際、ご主人の若月さんと目が合い会釈した。
山を下り、県道 51 号線の安曇野アートラインを北上し大町へ、大町からは通称糸魚川街道といわれる国道 148 号線をひたすら北上、仁科三湖を過ぎ道の駅白馬へ。私はここで地酒を仕入れ、後の運転は家内に任せる。こうして信州蕎麦行を無事終えた。
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