2016年7月25日月曜日

オーケストラアンサンブル金沢の今シーズン (2015ー2016) 最後の公演(2)

 このシーズン中このシリーズは10回あり、10回目の第379回定期公演は7月23日にあった。この回のテーマは「現代ヨーロッパの潮流 多才ヴィトマンの世界」。この日の立役者は、クラリネット奏者であり、作曲家であり、指揮者でもあるイェルク・ヴィトマン、現在フライブルク音楽院のクラリネット科の教授と作曲科の教授を兼任しているという。私にとっては初めて耳にする人だった。今日のプログラムはヴィトマンのクラリネット演奏が2曲、ヴィトマン作曲の小品が2曲、指揮が1曲という構成だった。
 初めに演奏されたのはウェーバーの「クラリネット小協奏曲 変ホ長調 op.26」で、この曲は初演の後、バイエルン王の委嘱で作曲された2曲のクラリネット協奏曲の端緒となった曲とか、ヴィトマンは導入部こそ手振りで指揮をしたが、後は演奏に専念、コンサートマスターのヤングが曲をリードした。演奏はさすがクラリネットの名手と言われるだけあって、感動の演奏であった。
 次いでヴィトマン作曲の「セイレーンの島 (1997)」。セイレーンとはギリシャ神話に出てくるあの上半身は女、下半身は鳥の姿をした海の魔物で、人魚伝説の原型とされている。オーケストラアンサンブル金沢のコンサートマスターのヤングの独奏ヴァイオリンと19の弦楽器による演奏、弦楽器の多様な奏法を高度に駆使した正に現代の弦楽曲で、ヤングのリードが実に素晴らしかった。この演奏にヴィトマンは指揮をせず、終わってヴィトマンがヤングに言葉をかけたのがすごく印象的だった。聴いて見て感激した演奏だった。
 前半の最後はロッシーニの「クラリネットと管弦楽のための序奏、主題と変奏曲」、ロッシーニの数少ない器楽曲の一つで、この曲はとあるクラリネット奏者から依頼を受けて作られたという小品で、この曲でのヴィトマンのクラリネット演奏は、さながらオペラやバレーでの主役のような役割をしていて、序奏から主題の提示、そして5つの変奏を順に駆け巡る華やかな構成で、ここでも曲はヤングがリードしていた。
 休憩を挟んで、初めにヴィトマン作曲の「180ビーツ・パー・ミニット (1993)」という弦楽六重奏曲、構成はヴァイオリン2、ヴィオラ1、チェロ3で、1分間180拍という激しさ、しかも拍子が目まぐるしく変わるという難曲。演奏が終わってヴィトマンはヤングと抱き合っていたが、よくぞこなしたという印象、聴衆の拍手が凄かった。
 最後はメンデルスゾーンの「交響曲第1番ハ短調 op.11」、この曲はメンデルスゾーンが12歳から14歳にかけて作曲した12曲の「弦楽のための交響曲」に続いて15歳の時に作曲され、当初は13番とされていたが、出版時に「交響曲第1番」とされた経緯がある。ヴィトマンの指揮に初めて接したが、情熱的で的確な指揮は聴衆を魅了した。拍手が鳴り止まない素晴らしい名指揮だった。
 次の新しいシーズンは2016年9月から始まる。

0 件のコメント:

コメントを投稿