2010年12月14日火曜日

ペースメーカーのバッテリー交換

 徐脈と不整脈が著しいということで、ペースメーカー植え込みを勧められたのは平成15年の2月上旬のこと、念のためホルターの心電計を24時間つけて観察すると、長い時は40秒も心臓が止まっていることがあることも分かった。以前から脈拍数は40程度だったのだが、何かの折に目まいを起こして内科に受診した際、その先生が金沢医科大学病院から派遣されてきていたこともあって、精密検査は金沢医科大学病院の胸部心臓血管外科へお願いすることになった。主治医の先生では、自動車を運転していて、ふっと気を失ったりすると大変なことになるから、ぜひペースメーカーを装着しなさいとのことで、お願いすることにした。診断された病名は「洞結節不全症候群」ということで、ペースメーカーの植え込み以外に改善はないとのこと、十分主治医から説明を聞いての手術だった。
 手術の担当医は若い方二人、麻酔は局部麻酔、ペースメーカーを入れるポケットの作成とリード線の心房と心室の所定の場所への設置で、すべてモニターを見ながらの手術、鼠けい部からも導線を入れられ、この一部始終は私も観察できた。難渋したのはリード線の先端が所定の場所に届かないことで、これには随分苦労していた。指導医がいてあれこれ指示するのだが、リード線の先端が丸まっていて、先ずこれを解消しないといけないのだが、遠隔操作とて思うようには行かない。施術されている私も段々心細くなっていた。とそのとき、突然大きなくしゃみが出た。するとリード線の先端が2本ともピッと真っ直ぐになったのにはびっくり、思わずヤッタと嬉しい叫び、私も安堵した。
 でも手術が終わってからが大変で、丸一日ベッドに固定された。植え込んだペースメーカーがずれないように固定させるためとか。それにしても丸一日動けないと腰が病めて、これには往生した。術後数日間は抗生物質の点滴、固定されている間の栄養補給は経静脈点滴、排尿の方はカテーテルでの導尿、何故か便意はなかった。そして3日目にはカテーテルも外され、食事もできるようになり、トイレにも行けるようになったが、便秘がひどく、これには実につらい思いをした。
 ペースメーカーのチェックは定期的に半年に一度行われる。ところで電池の寿命はまだ半年はもつとのことだったが、この10月のチェックでは、もう残りは少なく今月中に電池交換の手術をする必要があるとのこと、もし電池が切れると大変なことになるらしい。最初の埋め込みから7年半が経過していた。それで月末に入院することにする。今回は前の轍を踏まないように、特に入院前には食事を細くして、便秘にならないように、また腰痛対策には鎮痛消炎添付薬を用意し、また手術に備え入院1週間前からは常用している血液サラサラ薬も控えた。朝入院手続きを済ませ、所定の検査を済ませ、手術の説明を受け、同意書に署名する。医師の説明では午後にも手術するという。時間は約1時間、ただリード線に問題があると新しくする必要があること、また交換時に自分の脈拍が少なくて血圧を維持できないときは鼠けい部から一時的に対外式のペースメーカーを挿入する必要があることだったが、結果的にはこの両方ともクリアでき、手術は正味1時間弱、都合2時間で手術を終えられた。初めての本館での手術は、印象としては雑然とした雰囲気の手術室での手術という印象があったが、今回の新館の手術室は空調も感染症対策も万全で、実に素晴らしい環境と設備、そんな手術室がずらっと並んでいるのには驚かされた。
 今回は尿カテーテルの挿入もなく、術後3時間はベッドで安静にしていて下さいと言われたものの、固定されることもなく、3時間後には飲水も可とのこと、栄養点滴と朝夕2回の抗生物質の点滴で、体の動きを制限されるようなことはなく、この前のときに遭遇した数々の心配は杞憂に終わった。当初入院は1週間とのことだったが、ペースメーカーのチェックは専門の業者が行っていることもあって、9日目の退院となった。

[病院でのあれこれ]
・「病室からの眺望」:病室は新館10階の西病棟、窓からは晴れた日には、南側には白山から富士写ヶ岳に至る山並み、西側には眼下に能登有料道路を挟んで日本海が開け、晴れていれば夕日が海に沈むのを居ながらにして見ることができる。夜は街灯や家の明かり、それに車の灯でかなり明るく退屈しない。でも明かりで星はほとんど見ることはできない。
・「日の出」:西病棟のダイニングルームからは海しか見えないが、東病棟のダイニングルームからは北から東を見渡せ、宝達山から北アルプスも後立山から乗鞍岳までを俯瞰でき、特に快晴の日の日の出は素晴らしい。日の出は6時50分近く、座って見てても飽きない。特に夜明け寸前の山並みのシルエットは実に鮮やかで圧巻、特定してはいないが、後立山は朝日岳辺りまでも見通せるのではなかろうか。朝日は乗鞍岳辺りから昇る。夕日は太陽が真っ赤に染まって大きくゆっくり沈むのに対して、朝日は小さいが珠玉のような光でもって目を射る力がある。陽が上がると辺りが靄ってしまい、山並みは薄れて見えなくなる。今は使用されていない本館からだと、東から南へ医王山から白山、三ノ峰までも眺められるが、東側には12階建ての本館があるので両白山地を見ることは出来ない。
・「食事」:入院の際に食事は1500Calとのこと、飯は全粥、食塩は5gとのこと、1週間の辛抱、もちろん禁酒である。それにしても基礎代謝量とは恐れ入った。といって別段つまみ食いもせず、若干お茶を飲んだ程度、あまり動かないからこれでいいのかも知れない。
・「運動」:手術後5日には、院内歩行がOKとなった。そこで階段の昇降をすることを思い付いた。非常階段の場所は入院時に担当の看護師から説明されていた。西病棟の非常階段で通行できるのは上は12階まで、下は地下1階までである。この間に段数は298あり、高低差は50mある。そこで食後に10Fから12Fへ上り、次いでB1Fまで下り、その後10Fまで戻るということを試みた。時計の高度計機能を確かにするため、12FとB1Fでは10秒立ち止まるが、後はノンストップで昇り降りする。ただ手術後から退院するまで心電計を着用させられていて、昇降時もつけたまま、これはスタッフステーションでモニターされているのだが、特に昇降の影響はなかったのか、別段注意はなかった。この昇降には10分を要するが、それでもこれだけ歩くと汗が出る。ただこの正式には階段室という非常階段は、通常は関係者以外立入禁止なのだが、スタッフと会っても別に咎められたことはない。
・「看護師」:西病棟には24人の看護師(うち男性1人)がいて、日勤、夜勤、その中間の勤務の体制で常にローテートしている。したがって1日のうち3回も係りの看護師が代わるので慌ただしい。私には一応担当の看護師はいるものの、私にかかりきりではない。この階は整形外科、呼吸器外科、胸部心臓血管外科の患者が多く、患者数は50人である。それにしても診療科がいろいろなのに、それぞれの診療科の専門知識も持ち合わせている必要もあろうに、看護師のレベルはかなり高いように思えた。また感心したのは言葉遣いで、血圧測定、採血、点滴、聴診、検脈等にあたっては、皆さん「~してもらっていいですか」という言い回しをするし、終わった後には大概「ありがとうございます」と言うが、少し過剰なのではと思ったりする。でも近頃は「お客様は神様」的な考えが敷衍しているから、これ位は当然のことなのだろうか。7年前の入院ではこんな現象は全くなかった。

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