2009年8月13日木曜日

小林よしのり編「日本を貶めた10人の売国政治家」を読んで

 この本の発刊は7月10日で、25日に第三刷が発行されている。前田書店のブログ「めくれない日めくり日記」に、主の秀典氏が8月2日と3日にこの本の紹介をしている。興味をもって読んだが、偶然か当の秀典氏からの勧めでこの本を読むことになった。表題の本は幻冬舎新書である。「売国」とは大げさなとは思ったが、読むにつれて正にそれに該当する御仁がいて、しかも今ものうのうと、秀典氏の言を借りれば、売国奴呼ばわりされた位では蛙の面にナントカで、屁とも思わず平然としているのを見ていると、この程度ではまだまだ手ぬるいのではと思ったりもする。この本では、20人の学者・言論人に登場してもらって、断罪すべき政治家5人を理由を付して挙げてもらい、1位に5点、2位に4点と順に点を振って集計している。持ち点は一人15点になるから、総点数は300点になる。さて、「売国」とは何か、本では広辞苑ほかを引用しているが、自国に不利益、敵国に利益は分かるが、その中に「私利のため」とか「私利をはかる」とあるが、この部分はどうもしっくりしない。

 でははじめに、その集計結果(順位・点数)と『売国政治家名』、その〔検証者〕と標榜するタイトル、それと文章の小節の頭の見出しを書き出して紹介する。これを見れば罪状の凡その見当はつくというものだ。その後で私の選んだ不届きな輩を書き出してみようと思う。
 第1位:単なる談話で日本を「性犯罪国家」に貶めた『河野洋平』52点.〔八木秀次〕:(1)証拠もないのに慰安婦問題を内外に謝罪した河野談話.(2)「河野談話」に先立つ「加藤談話」.(3)天皇訪中という宮澤内閣の大罪.(4)そもそもフィクションから生まれた慰安婦強制連行説.(5)一貫して軸足が日本にない政治家.(6)巨悪にすらなれない最悪の売国奴。
 第2位:万死に値する「国民見殺し」「自国冒涜」の罪『村山富市』45点.〔高森明勅〕:(1)大震災でも緊急災害対策本部を設置せず.(2)政治信条のために国民を見殺し.(3)「国民見殺し」の背景にあった歴史認識.(4)理性があれば出せない「村山談話」.(5)万死に値する売国奴政治家。
 第3位:「改革」で日本の富と生命を米国に差し出した『小泉純一郎』36点.〔関岡英之〕:(1)政治家小泉純一郎の本質.(2)大蔵族としての小泉純一郎.(3)保険族としての小泉純一郎.(4)どうしても総括されなければならない前回選挙の本質.(5)そして日本の医療が崩壊した.(6)小泉構造改革の本質は「朝日新聞」が喝采する日本崩壊。
 第4位:「ねじれ現象」を生んだ無節操な国賊『小沢一郎』29点.〔西尾幹二〕:(1)何も変わっていない民主党,三つのグループの正体.(2)小沢が権力維持のために手離さない人事とカネ.(3)ねじれ現象をつくった張本人.(4)もはや国連中心主義にリアリティはない.(5)外国人の地方参政権を認める愚。
 第5位:靖国問題をこじらせた元凶『中曽根康弘』22点.〔大原康男〕:(1)「公式参拝」を復活させるも方式に重大な問題.(2)中国に抗議され安易に中止する.(3)純然たる国内問題を外交の犠牲に供した不見識さ.(4)A級戦犯の合祀取下げを密かに画策.(5)国立戦没者追悼施設のルーツも中曽根.(6)戦犯の処遇は講和条約とは何の関係もない.(7)国家の威信を損ね,国内にも不思議な亀裂。
 第6位:自虐外交の嚆矢となった「不戦決議」『野中広務』16点.〔潮 匡人〕:(1)根拠をベールに隠して攻撃する.(2)中国・朝鮮への歪んだ歴史認識.(3)最悪の「村山談話」を生んだ野中の「不戦決議」.(4)引退後もメディア露出を続けるダーティーな輩。
 第7位:日本国を構造破壊し共和制に導く経済マフィア『竹中平蔵』12点.〔木村三浩〕:(1)カジノ資本主義の推進者.(2)国富,国益,社会を「献米」する代理人.(3)共和主義者として構造破壊に奔走する仕掛け人。
 第8位:無為,無内容,無感情『福田康男』11点.〔潮 匡人〕:(1)総理になりたくなかった男の空虚な中身.(2)真面目ですらなかった黙殺と放棄の男.(3)軽薄な偽善と売国の所業の数々。
 第9位:保守を絶滅に追い込んだ背後霊『森 喜朗』10点.〔勝谷誠彦〕:(1)国柄を貶めた売国奴ウイルス.(2)「横入り」の男が上りつめた首相の座.(3)密室での談合で決定した後継首相.(4)事欠かない「サメ並の頭脳」の証拠。
 第10位:戦後レジームの滑稽なゾンビ『加藤紘一』10点.〔西村幸祐〕:(1)はずかしき「自民党リベラル」.(2)戦後レジームのゾンビ.(3)二つの大罪ーご訪中と加藤談話.(3)北朝鮮を利する発言を繰り返す。
 なお、次点は『土井たか子』の9点だった。そのほかに19人(5点~1点)がいる。

 次に、点数でなく、20人が選んだ人を多い順に羅列してみた。すると、1位は15人が選んだ『河野洋平』、2位は12人が選んだ『村山富市』、3位は9人の『小沢一郎』、4位は8人の『小泉純一郎』、5位は6人の『中曽根康弘』『加藤紘一』『野中広務』、8位は5人の『福田康夫』と『土井たか子』、10位は3人が選んだ『森 喜朗』と『竹中平蔵』だった。そのほか、2票が3人、1票が16人いた。

 さて、私ならどうしようか。先ず挙げたいのは、小泉ー竹中ラインによる小泉改革路線の推進に功のあった『小泉純一郎』(第1位)と『竹中平蔵』(第5位)である。先ず「郵政民営化」であるが、これは小泉がまだ一匹狼の頃からの20年来の念願だった。大蔵族でもあった小泉は、日本の金融界と大蔵省の悲願でもあった郵政民営化を遂に実現した。郵便貯金と簡易保険は目の上のタンコブだったわけだ。しかし、一見国内問題にみえる民営化の根底には、米国保険業界の強力な要望と後押しがあったことは表に出てはいない。郵政民営化選挙では、民営化だけが先走りして、民営化イエスかノーかで、国民の代表として暫し塾考をと待ったをかけた良心的な議員に「抵抗勢力」「守旧派」「族議員」のレッテルを貼り、選挙では落下傘で刺客を送り、多くの有能な人材が議席を奪われた。マスメディアは小泉劇場と囃し立て、ニセ改革の旗手小泉へ忠誠をつくす小泉チルドレンに代表される操り馬鹿人形ばかりが当選した。国民は「改革」という迷い言に乗せられ、完全に騙されたわけである。衆議院で3分の2を確保し、小泉の人気最後の1年は、参議院でも過半数を占めている状態が続き、何でも好き放題にできた。こうして郵政民営化は小泉ー竹中の二人三脚で押し通された。刺客に敗れた城内実氏は郵政民営化をこう説明している。「魚を三枚に下ろして、骨の部分(郵便事業)は捨ててしまい、美味しい切り身の部分、つまり郵貯と簡保を米国金融業界に『どうぞ』と差し出す。これが小泉ー竹中のやり方だ。」と。この二人は我が国を巧妙に支配する二つの見えざる権力、すなわち米国と旧大蔵省の『忠実なポチ』にしか過ぎないと。
 もう一つの大罪は後期高齢者医療制度の導入である。衆議院でも参議院でも過半数を占めた時期に、米国保険業界の強い外圧で、米国追随の医療制度改革を行った。高齢者の財政負担を重くし、国の負担を軽くし、病気は自己負担で解決しなさいと迫り、不安なら米国資本の民間保険会社の医療保険に入りなさい、出来ない人は早く死んでしまいなさいという内容だ。今の野党三党は郵政民営化の見直しと後期高齢者医療制度の廃止を訴えて選挙を戦っている。正しい国民の審判が下ることを臨む。
 第2位には「村山富市」を挙げよう。社会党委員長で、本来なら万年野党で到底与党にはなれないのに、自民党のお御輿に乗せられ、総理大臣に祭り上げられてしまった。当然のことながら、党是の自衛隊違憲、日米安保反対は後退してしまい、この無節制は社会党の凋落につながることになる。そして国賊として逃れられない罪の一つは、あの阪神・淡路大震災での対応の馬鹿さ加減である。首相というのは、国民の生命・財産を守るべき最高責任者なのに、おかしな潜在意識から、自衛隊の出動要請をせず、また米軍の援助も断わり、あたら時間を浪費し、結果として多くの人命・財産が失われ、多くの国民を見殺しにした。災害対策基本法では甚大な被害が見込まれるときは、災害緊急事態を布告し、総力を挙げてこれに対応することになっていて、それには警察・自衛隊の出動も含まれる。でも意識下にはこれが戦前の戒厳令的なものと認識していたと。第一義的には当時の貝原兵庫県知事の信じがたい無為無策であるが、村山首相が官邸に入ったのは地震発生後1時間半後、自衛隊出動要請は4時間後、それも数の制限をしたという。5時間半後には非常災害対策本部ができたものの、これは国務大臣がトップで、首相がトップの緊急災害対策本部とは権限もスケールも違う。初の緊急閣議が開かれたのは28時間後、緊急災害対策本部はとうとう設置されなかった。私もテレビの画面を見ていたが、はじめは神戸市の2箇所でのみ火災が起きていただけだったのに、みるみるうちに火は広がっていった。病気でも早期発見、火事では初期消火が肝心なのに、なんとしたことか。それで3日後には緊急対策本部が設置されたが、「災害」が抜けた本部は何をしたのだろうか。この大震災の死者は6千5百人、負傷者は4万4千人、被害総額は9兆6千億円、発生後1時間以内に対応しておれば、この数字はずっと小さなものになっていたろう。村山首相の釈明では、「ナニブン初メテノ経験デスシ、早朝ノ出来事デシタカラ」と信じられない能天気、恐るべき危機管理意識欠如である。この大震災の犠牲の大部分は天災ではなく、村山首相本人の確信犯的な救助放棄による人災だったと言える。
 今一つは売国奴的な「村山談話」である。閣議決定されたというこの総理談話は、後々の今日でも生きていて、誤字があるのも問題だが、それより日本にとっては大きな足かせ、中国、韓国、北朝鮮にとっては格好の大歓迎談話である。正に売国奴面目躍如というべきか。妙な文章の一部を引用する。「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を進んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべきもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここに改めて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明します」。
 第3位は「河野洋平」、第4位は加藤紘一」である。河野は衆議院議長を憲政史上最長の在任期間務めあげた。売国罪状の最たるものは、、宮澤喜一改造内閣での官房長官として発表した「慰安婦関係調査結果に関する河野官房長官談話」で、証拠もないのに日本が性犯罪国家であることを印象付けた、いわゆる「河野談話」である。この伏線となったのが、前任の官房長官である加藤紘一の「加藤談話」である。ここで加藤は、「従軍慰安婦の募集や慰安所の経営等に旧日本軍が何らかの形で関与していたことは否定できず、衷心よりお詫びと反省の気持ちを申し上げたい」とした。そして韓国の小説「修羅道」の中で、当時の『赤紙』と『女子挺身隊』、それに日本兵の『慰安婦』をゴッチャにして、あたかも慰安婦の強制連行があったかのごときストーリーを真に受け、「河野談話」がでっち上げされた。少なくとも政府が調べた資料の中には強制連行を示す記録は全くなく、歴史的事実はないとしているのにである。談話では、「官憲等が慰安婦の強制連行に直接加担したことを歴史の事実として認め、全面謝罪したばかりか、歴史教育を通じて永久に国民の記憶にとどめる」とした。この両談話は今日もなお外務省のHPに掲げられている。
 河野はこんな思想の持ち主であるから、靖国神社への参拝には一貫して反対している。それどころか、歴代の総理大臣には電話であるいは公邸に呼んで、参拝自重をお願いしているというが、これは越権行為だろう。そして毎年の全国戦没者追悼式では、「河野談話」と同じ感覚で、日本軍の加害について述べ、謝罪とお見舞いを言っているが、戦没者の霊に向かって言うのは礼を失しているのではないか。「河野洋平」は「江(沢民)の傭兵」とも言われる所以である。
 私見では、この本での10人のうち私が挙げた5人は正に売国奴と言える。そのほかには「中曽根康弘」と「野中広務」も臭い。でも、「小沢一郎」、「森 喜朗」、「福田康夫」は国賊とは言えても売国奴ではないと思う。

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