2009年8月18日火曜日

東北の秘湯:乳頭温泉郷(1)

 私が住んでいる石川県石川郡野々市町本町二丁目西地区(旧町名は新町)では、還暦を過ぎた男衆を中心に壮年部を結成し、毎年3月初めには温泉の1泊旅行、また湯治と称して、有志が4泊5日で秋田の玉川温泉もしくは新玉川温泉へ毎年出かけている。私も都合がつけば出来るだけ参加することにしている。玉川温泉というのは、西洋医学治療で見放された病人でも、何故か此処で湯治していて本当に治ったという例もあって、人気の湯治場である。この温泉の特徴は、一つは強酸性(pH1.2)の熱泉ともう一つは北投石に代表される低レベル放射線で、これが様々に相互影響しあって良い効果をもたらすようである。この効果を科学的に解明するために、「玉川温泉研究会」なる組織が昭和18年(1943)に東北大学をコアにして設立され、今日に至っている。岩盤浴で放射能を浴び、強酸性のお湯に浸かって湯治をするのだが、どちらも長く浴びたり浸かったりすると、かえって副作用が出て、湯中りがひどい。したがって、その間は休まねばならないが、そこでこの昼間の空き時間を利用して、近郷の温泉巡りをすることにしている。先ずは2年にわたって巡った乳頭温泉郷について書いてみたい。
1.鶴の湯温泉 (秋田県仙北市田沢湖田沢先達沢国有林50)
 傷ついた鶴が湯浴みをしているのを勘助というマタギが見付けたことから、「鶴の湯」と名付けられたといわれている。開湯は江戸時代初期といわれ、元禄時代には湯守がいて、農家の人達の湯治場として賑わったとある。ここへは秋田新幹線の田沢湖駅へ向かうバスで田沢湖畔もしくは田沢湖駅で降り、タクシーに乗り継いで行くことになる。バスで行く場合は、乳頭温泉行きのバスに乗車し、鶴の湯温泉旧道口で下車し、山道を30分ばかり歩かねばならない。バスの本数は少なく、バスも数社乗り入れのため、乗り継ぎはスムースではない。
 鶴の湯温泉と他の乳頭温泉郷の温泉とは若干離れていて、鶴の湯以外の温泉相互間の距離は徒歩で5~20分程度だが、鶴の湯へは約1時間はかかる。したがって、鶴の湯も含めて全湯を一巡するには、日帰りは到底無理で、二つは別に企画するか、もしくはどこかに1泊する必要がある。林道は鶴の湯までついているが、自家用車で入ることは出来ないようで、その場合は別館の「山の宿」まで車で入り、奥の鶴の湯温泉へはブナ林の遊歩道を30分位さらに歩く必要がある。
 鶴の湯温泉は、この温泉郷の中では最も人気があるお湯で、現在では春夏秋冬利用できる。以前は冬は閉鎖されていたが、今は冬でも営業している。ただ昨年には裏山で雪崩が発生して、露天風呂で入浴していた女性が亡くなったことがあった。車を降りて砂利道を進むと、江戸の町の木戸を思わせる門があって、本陣「鶴の湯」と大きく墨書してある。江戸時代を思わせる本陣と呼ばれる宿舎と湯治棟の間を通って行くと、奥に男女別の木造の湯小屋が3棟あり、なおも進むと、その先に白濁した少し青みを帯びた乳白色の大きな混浴露天風呂とその奥に女性専用の露天風呂が見えてくる。湯小屋や露天風呂は一見無造作な配置、しかも湯小屋の屋根はすべて杉皮で葺かれていて、実に風情がある。
 私達が訪れたのは初夏の一日、駐車場にはマイクロバスが1台いたきりで、混んではいなかった。入湯料を払って混浴の露天風呂を目指す。乳白色のお湯が庭一杯に広がっていて、溢れている。周りは深い森、今は一面緑だが、秋の紅葉も、冬の雪景色も、また夜の満天の星も素晴らしいだろう。私達が入っていたら、奥の女性専用の露天風呂から、妙齢の女性が「お邪魔しても宜しいですか」と言って入って来られた。簾で囲った風呂よりこちらの方が開放的で素晴らしいと仰る。旦那さんも交えて暫し談笑する。ツアーでの参加で、泊まりは此処ではないとか。お湯は他にも内湯の黒湯、白湯、中の湯があるが、露天風呂とは離れていて、泊り客ならば浴衣姿で回れるが、日帰り客だと回り辛い。件のご婦人では、この湯が最高、四方板で囲われた湯小屋は、湯治の方ならともかく、日帰り観光でおいでたのなら、ここで十分ですとのご託宣、ここで終いにする。此処は人は多いというものの、正に秘湯である。聞けば鶴の湯は「日本秘湯を守る会」の会員であるとか。因みに石川県にも4湯あるという。
2.鶴の湯別館 (秋田県仙北市田沢湖田沢先達沢湯の岱1-1)
 鶴の湯の下流2kmのところに、鶴の湯本館のお湯を引いて営業する鶴の湯別館「山の宿」がある。でもこの湯は泊り客しか利用できず、乳頭温泉郷で唯一日帰り入浴ができない宿となっている。まだ開館して10年たったばかりという。

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