2013年10月31日木曜日

シンリョウのツブヤキ(3)

● キチジョウソウ
 今年も例年の如く沢初造園さんに庭の手入れをお願いした。以前は1日4人で3日かけて庭木の剪定をお願いしていたが、私も勤務を辞めて年金生活に入ったことから、延べ人数を半分の6人にしてもらった。それでも支払う費用は年金月額の半分を優に超えてしまう。庭木は放っておけないのが難である。ところで庭木ではないが、隣の敷地にまで枝を延ばしていたヨノキの枝を払ってもらい、その際藤棚のヤマフジも選定しようと言われお願いした。フジは蔓を四方八方に延ばしていたので、少し離れて生えているハゼノキやケンポナシにもまつわりついていた。ところで親方の言うには、ハゼは紅葉するから残せばいいが、ケンポナシは雑木だから元から伐ってしまった方がよいとのこと、お言葉に従って伐ってもらった。ところで伐って貰った後の木の根元を見ると、何か今まで見たことがない花が目に入った。早速図鑑で調べてみると、それはキチジョウソウの花だということが分かった。
 キチジョウソウはユリ科キチジョウソウ属の植物で、山地のやや湿り気のある日陰に群生する多年草とある。家の裏庭にはずっと以前から2カ所に群生していて、半陰の場所にある群落は毎年広がり、私が以前山から採ってきて植栽したツルボの一画をも取り込む勢いである。でも期待はしているものの、花が咲いた試しがない。何故花の咲くのを待ち望んだかというと、この花が咲くと吉事があるという言い伝えがあるからで、それで吉祥草と名が付いたという。私はこれまで見たことがなかったから、これには驚いた。記述では、「晩秋、葉の間から高さ 10 ~ 13 cm の花茎を出し、淡紅色の花を穂状につける。花被はやや肉質で、長さ 8 - 13 mm 。液果は球形で紅紫色。花期は9−10月」とある。今その周囲にはコムラサキシキブが紅紫色の実を付けているが、同じような実が付くのだろうか。楽しみだ。
 この草の記述を松村明の大辞泉に求めると、「ユリ科の常緑多年草。陰地に生え、茎は地表にはい、ひげ根を出す。葉は広線形。秋の終わりに、淡紫色の小花を穂状につけ、実は紅紫色。植えている家の吉事のときに花が開くという俗信がある。観音草。吉祥蘭」とある。

● アキチョウジ
 いつか家内とドライブした時に、どこかの道の駅で求めた山野草の一つで、1株だったので消えたと思っていたのに、いつの間にか数株に増えて、可愛い紫色の唇形花が茂みの中に咲いていた。先に家内が咲いているのを見つけ、玄関の花生けにコムラサキシキブと一緒のに生けてあった。清楚な紫色と鮮やかな紅紫色の対比が面白い。
 アキチョウジはシソ科ヤマハッカ属の植物で、図鑑の記述によると、「山地の木陰に生える 60 - 90 cm の多年草。葉は対生し柄があり狭卵形、まばらに毛があって先端は鋭く尖る。茎の先や葉の脇から花穂を出し、細毛のある短い花柄の先に青紫色の唇形花をつける。花冠の長さは 1.7 - 2 cm 。蕚の上唇は3裂し、裂片の先は鋭い。下唇は2裂する。和名は秋丁字で、秋に丁字形の花を開くことに由来する。花期は8−10月」とある。同属には、ヤマハッカ、ヒキオコシがあり、白山特産のハクサンカメバヒキオコシもこの属に入る。

● イヌカタヒバ
 3年前のシンリョウのツブヤキで、『庭に昔はなかった草木が生えた(続き)」で、向かいの家の庭の岩に生えているイワヒバが私の家の前庭に飛んできて、岩ではなくて露地に生え出したと記したが、どうも形態に差があるように思えてならなかった。あれから3年、この羊歯は今や前庭のあちこちに繁茂していて、どんどん増えている。あるとき池畑怜伸著の「写真で見るシダ図鑑」(トンボ出版)を求め見ると、私がイワヒバと誤認していた羊歯は、同じイワヒバ科イワヒバ属のイヌカタヒバであることが判明した。記述によると、「イワヒバは暖地の日当りのよい岸壁に群生する・・とは言ってもよく人に採られて、今では人の手が届かない絶壁にしかその群生は見られない。和名のヒバはヒノキの葉に似ていることから。秋田・岩手辺から鹿児島に分布。これに対しカタヒバは、イワヒバが放射状に広がるのに対して、これは片側に垂れるからの和名で、少し湿り気のある岸壁に垂れ下がって群生し、その姿はなかなか美しい。分布は茨城・隠岐から屋久島」とある。そして参考としてイヌカタヒバが載っていた。それによると、「カタヒバによく似ており、本来は石垣島辺りの危急種だそうであるが、近頃サツキの鉢に付くなどして庭に広がり雑草化している。カタヒバとの区別点は、肉眼で見える範囲では、葉面にツヤがないほか、カタヒバは葉の背葉列が盛り上がり、葉に鋸歯がないのに対し、イヌカタヒバは葉の背葉列が平面的で、葉に鋸歯がある」とある。

2013年10月10日木曜日

ALS (アマロスシンドローム) になった私(その2)

(承前)
 このドラマは約5年間の出来事を語っているが、この間にあまちゃんは年をとったにせよ、この間に格別進化したとは思えない。しかし本人自身が天野アキを演じられたこと自体、本当に幸せだったと思っているとコメントしているように、観ている私たちも、透明感があって、キラキラ輝いて見える彼女から何か元気をもらえたように思っている。思うに東京へ出て、もしアイドルになってしまう筋書きだったら、ここまで私も共感しなかったのではと思ったりする。この従来の朝ドラとは違う宮藤のシナリオが、このドラマが大勢の視聴者を引きつけた原動力になったに違いないと思っている。
 この時期視聴率が高かったのは、NHKの連続テレビ小説「あまちゃん」と,TBS系列の日曜劇場「半沢直樹」で、ビデオリサーチの調査では後者が前者を上回っていた。後者では「やられたらやり返す。倍返しだ!」が決めゼリフで、これが視聴者の共感を呼んだという。週刊朝日での全国男女500人のアンケートによる調査では、どちらも観ていない人がほぼ半数、残りの3分の1ずつを、どちらも観たことがある、「あまちゃん」だけ観たことがある、「半沢直樹」だけ観たことがある、が同じように占め、男女ともほぼ同じ傾向だった。またどちらの作品により元気をもらえましたか?では、60代ではほぼ同数、50代以下では、前者が後者を上回っていた。
 NHKの連続テレビ小説の放送は月〜土にあり、NHK総合では午前8:00 と再放送が午後0:45 にあり、前者を「朝あま」、後者を「昼あま」というそうだ。その後 BS でも放送していると言われ、以降は BS プレミアムで午前7:30 からの放送はかかさず観ることに、そして最終週にはその再放送の午後11:00 にも観る羽目になった。因みに通称は、前者が「早あま」、後者が「夜あま」というそうだ。また番組が済んでから知ったことだが、土曜日の午前9:00 からは1週間分をまとめて観られたというが、これは済んでから知ったので、後の祭りだった。ところで9月28日の最終回を見終えて、何となく喪失感を抱いているが、このような症状を「『あまちゃん』ロス症候群」というのだそうだ。週刊誌にはそのロス度を調べるチェックリストも載っていて、私が試みたところでは、『あまちゃん』ロス度は、最も軽い j1だった。その対処法としては、録画や DVD やブルーレイを観るというのが多く、ほかには起きがけにサウンドトラックを聴くとか、いずれにしてもそのうち時間が解決してくれるだろうというものだ。しかし全部が収録されている完全版は、DVD で税込み 51,870 円、ブルーレイだと 58,695 円と高価だ。そこで私が今計画しているのは、10月14日に放送される総集編の録画で、これには経験がないのと不在なので、息子の嫁はんにお願いしようと思っている。後は時間の経過を待とう。
 彼女の過去を辿ると、2006年に雑誌「nicola」のモデルオーディションに応募して見事グランプリを獲得し、誌面デビューをしている。13歳だったという。2010年には映画「告白」で女優としてデビュー、その後数々のドラマに出演し、2012年には「カラスの親指」で第37回報知映画賞新人賞を受賞している。そして2013年には NHK 連続テレビ小説「あまちゃん」のヒロインに抜擢された。そして好評のうちに終わった今、今後はアクションものをやりたいとか、コメディエンヌになりたいとか話しているようだが、外野席からは今のままがよいとか、お色気路線がいいとか、ほかにもいろんな要望めいたこともあるようだが、あの子は何でも吸収できるキャパシティーを内に秘めているような気がしてならない。今後の成長に期待をしたい。

 「あまちゃん」の最終週が始まる9月23日の前日の9月22日に、岩手県のとある会館で「あまちゃんファン感謝祭じぇじぇじぇ祭り!」が開催され、翌日の午前に40分にわたって NHK で放映された。3千人を超える観客を前にして、夏ばっぱの宮本信子、あまちゃんの能年玲奈、ベンさんこと塩見三省、その他の人達が撮影秘話などを披露し、会場は爆笑の渦だった。あまちゃん効果は絶大で、東北に33億円もの経済効果をもたらしたという。

ALS(アマロスシンドローム)になった私(その1)

 NHK連続テレビ小説の「あまちゃん」は9月28日の土曜日が最終回、惜しまれて視聴者の前から姿を消してしまった。平成25年4月1日に第1回が始まって以来、日曜を除く週6回、26週156回にわたって放映された。私はあまりテレビドラマを観る方ではないのだが、昨年 (1922) 6月末に勤務を辞めてサンデー毎日になってからは、朝の連ドラを観ようと思えば観られるようになった。石川県や予防医学協会へ勤務していた頃は、大概7時過ぎには家を出ていたから、連ドラなど全く縁がなかったに等しい。でも辞めてからは観る気があれば観られるわけで、現に前作の朝ドラは当初はテンポの良い快活な女の子が主役で、この女の子の役にもこのドラマの筋にも興味があり観ていたが、中途からはつまらなくなり、あまり観なくなった。
 ところで次の朝ドラの「あまちゃん」は、前評判もさることながら、東北大震災を受けた岩手県の北三陸市(久慈市)が舞台になるということで、震災復興の応援のためにも観てやらねばと思うに至った。話はアイドルを夢見て24年前に上京した天野春子が、大向大吉の一計で母の天野夏が病気で入院したとの報を受けて、一人娘の天野アキを連れて24年ぶりに帰郷したところからドラマは始まる。
 このドラマの企画がまとまって、脚本担当の宮藤官九郎 (くどう・かんくろう) や音楽担当の大友良英 (おおとも・よしひで) が、NHKの担当らと岩手県の久慈市を中心に取材したとき、彼らも当初は暗いイメージを抱いていたのに、現地での取材を進めているうちに、何とも明るいイメージが湧いてきたと、二人ともそれぞれが新聞や雑誌やテレビでその印象を語っていた。宮城県出身である宮藤さんは、現地取材をしていている間に、すんなり全26週のシナリオの大枠が出来上がったという。また大友さんも、三陸鉄道北リアス線 (北三陸鉄道 )に乗り、また北三陸の自然に接し、あのオープニングテーマのメロディーがすっと出来上がったと語っていた。あのメロディー、何とも軽快で、赤ちゃんから猫まで画面にかじりつくと聞いて、さもありなんと思った。夏の甲子園の高校野球選手権大会で、3校が応援歌に使っていたが、これには作曲者も本当にびっくりしていた。私もどうしてこんなにも早く取り入れられたのかと、本当に驚いた。それも決勝戦にまで鳴り響いたのだから何とも素晴らしい。彼はこのドラマで300を超す劇中曲を作り上げたという。
 主役の「あまちゃん」こと天野アキを演じたのは能年玲奈 (のうねん・れな )、オーディションで1937人の中から抜擢されたという。封筒を手渡されて、中に入っていた紙に、「2013年の連続テレビ小説『あまちゃん』のヒロインは、能年玲奈さんに決定しました」と書かれていたのに、それは次のテストのセリフだとばっかり思って、覚えようと懸命になっていたというから可愛い大物だ。1993年の生まれというが、設定の高校生であっても全くの違和感がないかわゆい女の子である。生まれは兵庫県の山の中の出とか、それなのに海女として潜水に果敢に挑戦したのは凄い根性だ。それと凄くインパクトがあったのは、あの驚きの表現の「じぇ」という言葉、その程度に応じて「じぇじぇ」「じぇじぇじぇ」とエスカレートするのが何とも合理的で、さらに加えることで驚きをグレードアップできるのが素晴らしく、流行語になったというが、むべなるかなである。
 ドラマの設定は2008年から震災を挟んだ2012年まで、ヒロインはあまちゃんなのだろうが、出演している皆さんがその場面々々で主役を共軛していて、ドラマを盛り上げていた。だからあまちゃんが上京して、本来なら東京が主舞台になるはずなのだが、随所に北三陸の舞台が現れ、両方同時進行する手法を用いたので、NHKのセットでは大変だったらしい。これも主役一辺倒になっていない気配りがあってこそで、大変良かったと思う。
 さて、「あまちゃん」こと、ヒロインの天野アキを演じた能年玲奈についてだが、沢山の方が彼女について語っている。私が見たり聞いたりしたのは、NHK総合の午後1時半少し前から始まる「スタパ」(スタジオパークからこんにちわ)、ここにはかなりの共演者が出演したし、また同じくNHK総合の朝の番組「あさイチ」にも本人を始め何人かが出演した。また私が定期購読している朝日新聞や北國新聞、また週刊朝日でも、演出者や共演者が対談だったりインタビューだったりで彼女のことを述べている。そこで何故か共通して語られるのは、「彼女は天才だ」という言葉である。今まで多くの人がこの朝ドラのヒロインを演じてきたのに、これまでこんな評価のされ方があったのかと考えさせられた。その一端が「あさイチ」で、「あまちゃん」が終了した後に出演した際にそれを垣間見たような気がした。というのは、あの海千山千の有働アナが、ドラマ以外について質問をした時で、ドラマについては歯切れのよい答えが返るのに、その時は言葉選びもあってか返事に時間を要することがしばしばで、失礼にも待てずに話題を中断したり変えたりした。その後に出てきた共演の渡辺えりは逆にポンポン喋るので、時に質問をしているのはあなたではなくて能年さんですとか、自身はアメリカへ特派された実績もある才媛だが、今をときめくヒロインをギャフンと言わせたいような、あるいは変な顔つきを要求するような言動は見ていて噴飯ものだった。こんなに慎重で反応が遅いと思われる彼女なのに、一旦シナリオを手に取り演技をする段になると、途端に変身して信じられない変貌を遂げて、その場に最も相応しいキャストになるとのこと、このことが彼女を天才だと言わしめたのではと思った。(続く)