2010年3月5日金曜日

探蕎会総会での寺田会長の講演「水・三題」 その3

[3] 資源としての水
1.淡水の存在割合
 地球上に存在する水の総量は、算定する人によって若干の出入りはあるが、資料の数字に従えば、総量は約13.9億立方kmということになる。このうち海洋の水(海水)が占める割合は97.2%、13.51億立方kmである。したがって全体から海水を引いた陸水の割合は2.8%、3900万立方kmとなる。陸水のうち、氷床、氷河、氷山等の氷に貯えられた水は全体の2.15%に当たる3000万立方kmで、陸水の76.9%を占める。陸水で次に多いのは地下水で0.62%の862万立方kmで、陸水の22.1%を占める。このうち伏流水のように浅い部分にある地下水が半分の0.31%の431立方km、地下の深部に貯えられた地下水も0.31%の431立方kmで、以上で陸水の99.0%となる。
 残り1.0%を占めるのは、淡水湖・池が全体の0.01%の140千立方kmで陸水の0.36%、次いで塩水湖で全体の0.008%の110千立方kmで陸水の0.29%、次は土壌水(地下水面より上にある土壌の水)で全体の0.005%の70千立方kmで陸水の0.18%、そして大気中に貯えられた水(水蒸気)が全体の0.001%の14千立方kmで陸水の0.04%、最後は河川水で全体の0.0001%の1.4千立方kmで陸水の0.004%である。
 以上のうち、人が直接利用できるのは浅い地下水の伏流水、淡水湖の水と河川水で、総量の0.32%にしか過ぎない。ここでいう淡水とは、塩分濃度が0.05%未満の水を指す。なお汽水は0.05~3.5%、塩水とは5.0%超を指す。

2.日本の水資源 賦存量と年間使用量
 国土交通省土地・水資源局水資源部は、毎年水の日(8月1日)に合わせて、年次報告書「日本の水資源」を取りまとめている。ここでは平成21年版から日本の水資源について概観する。以下の数字には報告書の数字を用いた。したがって資料の数字とは若干差異がある。
 地球上に存在する水の量はおよそ14億立方kmといわれている。そのうちの約97.47%は海水等であり、淡水は2.53%である。この淡水の大部分(1.76%)は南・北極の氷や氷河として存在しており、地下水や河川・湖沼の水として存在する淡水の量は、地球上の水の約0.77%で、そのうちの0.76%は地下水で、人が利用できる淡水の量は地球上に存在する水のわずか約0.01%、約10万立方kmでしかない(この数字は2003年資料を基に水資源部が作成したもので、この数字には南極大陸の地下水は含まれていない)。
 日本は世界でも有数の多雨地帯である。モンスーンアジアの東端に位置し、年平均降水量は1690mm(昭和51年~平成17年の平均)で、世界の年平均降水量(約810mm)の約2倍となっている。しかしこれに国土面積(378千平方km)を乗じ、全人口(1278百万人)で除した一人当たり年降水量でみると、日本は約5000立方mとなり、世界の約16400立方mの3分の1程度となっている。
 日本での昭和51年(1976)から平成17年(2005)の30年間の水資源賦存量(水資源として、理論上人が最大限利用可能な量であって、年間降水量から蒸発総量を引いたものに当該地域の面積を乗じて求めた値)の平均水資源賦存量は約4100億立方kmである。また10年に一度程度の割合で発生する少雨時の渇水年水資源賦存量は約2700億立方kmで、平年の67%となっている。
 [算定の基礎となった数字:日本の国土面積=前出、年間平均降雨・水量=前出、日本の年間総降雨・水量=6400億立方km,年間蒸発量=609mm、年間総蒸発量=2300億立方km、平水年水資源賦存量=前出]
 一人当たりの水資源賦存量を海外と比較すると、世界平均である約8400立方m/人・年に対して日本は約3200立方m/人・年と2分の1以下である。また日本の地形は急峻で、河川の流路延長が短く、しかも降雨が梅雨期や台風期に集中するため、水資源賦存量のかなりの部分が洪水となり、水資源として利用されないまま海へ流出する。
 水資源賦存量4100億トン/年のうち、平成18年(2006)に人が利用した水資源使用量は、水資源賦存量の約20%に相当する831億トンで、うち河川水が727億トン、地下水が104億トンで、約80%は洪水などで海に流出したり、地下水として貯えられたりしている。用途別にみると、農業用水547億トン(河川水514+地下水33)、工業用水127億トン(90+37)、生活用水157億トン(123+34)となっている。

3.バーチャル水(仮想水・間接水)
 バーチャル水とは、食料の輸入国(消費国)において、もしその輸入食料を生産するとしたら、どの程度の水が必要かを推定したもので、ロンドン大学名誉教授のアンソニー・アラン氏が初めて紹介した概念である。そして農産物・畜産物の生産に要した水の量を農産物・畜産物の輸出入に伴って売買されていると捉えたものである。東京大学の沖大幹は、同じ産品を輸入国側で生産した時に必要な水の量を「間接水」、輸出国側で実際に投入された水を「直接水」としていて、これは農産物の場合には気候等の条件によって水の所要量が異なるため、一致するとは限らないからである。
(1)食品を生産するのに必要なバーチャル水の量
 農作物のバーチャル水は、主に灌漑で使った水で、天水(雨水)は同じ量を使っても影響はほとんどない。また降雨の豊富な地方で生産すれば、バーチャル水は少なくなる。畜産物はとりわけ使用する飼料により大きく変わり、穀物飼料を用いる場合は非常に高くなる。牛肉は牛の飼育期間が長いこと、飼料に穀物を使うことから高い数値となる。食品1トンを生産するのに必要なバーチャル水の量(トン)は、穀物の米3300、小麦2000、大麦1900、トウモロコシ1900、豆類の大豆2500、畜産物の牛肉20700、豚肉5900、鶏肉4500、鶏卵3200(1個当たり190ℓ)である。
(2)日本のバーチャル水輸入
 輸入品目別内訳をみると、多い順に牛肉45.3%、小麦18.6%、大豆16.0%、トウモロコシ12.4%、豚肉4.3%、その他3.4%となっている。
 輸入国の内訳と量(億トン/年)は、アメリカ 389、オーストラリア 89、カナダ 49、ブラジルとアルゼンチン 25、中国 22、デンマーク 14、タイ 13、南アフリカ 3、その他 36で、総輸入量は640億トン/年である。
 この数字は2000年のデータを基に算出されたものだが、2005年には約800億トンともいわれ、この数字は日本国内で使用される年間水資源使用量に匹敵するもので、自国で使用する水により生産される分と同じ量の食料を輸入していることになる。

0 件のコメント:

コメントを投稿