2017年3月10日金曜日

久々に感動した OEK 演奏会

 4月7日の晩に OEK 第388回定期公演があった。近頃は指揮者にしても演奏者にしても、私が過去に聴いたことがあるとか、名前を知っているとかという方の演奏会は少なくなってきたような気がする。また昨年まで行われてきて人気があったゴールデンウイーク中に行われてきた音楽祭のラ・フォル・ジュルネ金沢も、今年からは「いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭2017」として、金沢独自の催しに変身することになった。昨年までの人気がどうなるかが気掛かりである。
 さて当日の開演は午後7時、指揮&チェンバロ演奏が鈴木優人さん、ヴァイオリンが木嶋真優さん、私にとってはお二方とも初めての人だった。プロフィールを見ると、鈴木さんはオランダ生まれの56歳、東京芸大大学院修了、オランダ・ハーグ王立音楽院修了という経歴で、現在は NHK FM の「古楽の楽しみ」のレギュラーだとか、鍵盤 (チェンバロ、オルガン、ピアノ) の奏者で指揮者、バロックから現代音楽までこなし、舞台演出から作曲までこなす寵児とか。一方の木嶋 (きしま) さんはまだ30歳そこそこの綺麗な方、ケルン音楽大学大学院を首席で卒業、昨年のアイザック・スターン国際ヴァイオリン・コンクールで優勝されたとある。そして使用している楽器は貸与されているストラディバリウス1700 製の Ex Petri とある。
 最初は大バッハの管弦楽組曲第3番ニ長調、この第2曲目にはよく知られる「G 線上のアリア」の「エール」が入っている曲である。鈴木さんはチェンバロを弾きながらの指揮だったのと、オーケストラの音響が大きかったこともあって、聴いていてどちらつかずの演奏になったような気がした。だからこの演奏会もこの時点までは、予想通り今回は余り期待できないのではと思っていた。チェンバロの演奏が入るのなら、管弦楽の規模をもっと小さくすればよいのではと思った。ただフルメンバーの3分の2ではあったのだが。
 さて次いでは木嶋さんの独奏でモーツアルトのヴァイオリン協奏曲第5番イ長調「トルコ風」、よく知られている曲だ。モーツアルトには確実に彼自身の作とされるヴァイオリン協奏曲が5曲あるが、何故か5曲とも19歳の1775年に作曲されていて、それ以降には全く作曲されていないのも謎の一つになっている。そしてこの曲の通称名は、第3楽章に出てくるトルコ行進曲の特徴的なリズムによっていることもよく知られている。さて曲が始まった。颯爽とした力強さと細やかさ、それにストラディバリウスが醸し出す優雅なホール一杯に響き渡る素晴らしい音色に度肝を抜かれた。正直言って実に驚いた。こんなに素晴らしい演奏は久しぶりだった。それと若々しい清純なお色気、凡そ30分ばかりの演奏だったが、実に素晴らしく感動した。正に万雷の拍手、スタンディングオベーションをしている人も数十人、私は立ち上がらなかったが、それでも力一杯の拍手を続けた。そして何回かの挨拶の後、これに応えてアンコールをしますという。でも私独りではできないので、指揮者のピアノ伴奏で行いますという。前が広く空けられ、ピアノが運び込まれた。曲はグラズノフ作曲の瞑想曲、ピアノ伴奏のヴァイオリン曲、5分ばかりの優雅な曲、実に素晴らしく、再び万雷の拍手、本当に惜しみない拍手が会場一杯に鳴り響いた。素晴らしかった。
 20分間の休憩の後は、OEK フルメンバーによるベートーベンの交響曲第2番ニ長調、指揮者の鈴木さんはこの曲の指揮で正に真価を発揮されたような気がした。9曲ある交響曲の中では比較的演奏機会が少ないとはいえ、ベートーベンが難聴の進行に気付き「遺書」を書いた時期に作曲されたことで知られる。4楽章を通して、鈴木さんの素晴らしい迫力ある演奏は聴衆を完全に虜にしてしまったようだ。これが鈴木さんの真価なんだと聴衆が納得させられた演奏だった。演奏に酔いしれた後は素晴らしい拍手の嵐、またもスタンディングオベーションが起きた。鳴り止まない惜しみない拍手の嵐、35分ばかりの演奏の一瞬一瞬に、本当に心が揺さぶられる感動を味わった。ありがとう。本当に有り難う。
 鳴り止まない拍手に応えてのアンコール曲は、モーツアルト作曲の「フィガロの結婚序曲」、皆さん周知の優雅な流れるような楽しい曲、興奮を鎮める清涼剤とでも言える演奏に皆さん聴き入っていた。再び万雷の惜しみない拍手の嵐、指揮者の鈴木さんは何回も何回も挨拶に出て来られた。そして最後にスタッフ全員で挨拶され、素晴らしい演奏会は幕を閉じた。いつもは終わると皆さん出口へ殺到されるのに、この日はこの感動に酔いしれたのだろうか、席に座ったままの方が多く見受けられた。本当に素晴らしかった。
 追記:この日のコンサートマスターはゲストの水谷 晃さん、特にベートーベンの交響曲第2番では、指揮者の鈴木さんに呼応して、実にオーバーとも思える弾き振りが実に印象的だった。これぞコンサートマスターのお手本ともいうべきか。

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