2018年8月8日水曜日

OEKの新芸術監督にマルク・ミンコフスキ氏就任(1)

 2018 年7月 30 日の OEK (オーケストラ・アンサンブル金沢)の第 405 回定期公演に、9月から OEK の次期芸術監督に就任する世界的指揮者のマルク・ミンコフスキ氏が指揮して、クロード・ドビュッシー作曲の歌劇「ペレアスとメリザンド」が石川県立音楽堂コンサートホールで上演された。これまでもこの会場で数回オペラが上演されたが、今回は次期芸術監督に就任するとあってか、観ていても指揮者の素晴らしいまでの意欲が感じられ、期待以上の充実感と満足感で酔いしれた。私はこれまでミンコフスキ氏の指揮の演奏を過去4回聴いているが、今回の演奏ではこれまでにない新しい切り口での、またこれまで接したことのない新しい感覚での演奏や演出を見せてくれたような気がする。
 私がマルク・ミンコフスキ氏の名を知ったのは 2012 年の7月である。初来日は 2009 年 11 月で、この時は自ら創設した「ルーブル宮音楽隊」を率いて来日し、この時は音楽雑誌での来日海外オーケストラの第1位に輝き、日本音楽界の話題をさらったという。そして次に来日したのが 2012 年7月、この時日本国内のオーケストラとの初共演が OEK とだった。私が初に聴いたのはこの時で、第 325 回定期公演でだった。その時の演奏曲目は「20 世紀前半フランス・プログラム」と銘打たれ、曲目はヴァイルの交響曲第2番、プーランクの2台のピアノのための協奏曲ニ短調、ラヴェルのマ・メール・ロア ( バレー版 )の3曲、正にテーマ通りの本場の音楽に酔いしれたものだ。そして翌 2013 年2月には再びレ・ミュジシャン・デュ・ルーブル・グルノーブルを率いて来日し、金沢での第 332 回定期公演では、シューベルトの交響曲第7番 (旧8) 番ロ短調 D.759「未完成」とモーツアルトのミサ曲ハ短調 KV427 が演奏された。二人の天才のいずれも未完の作品、いろんな方がその経緯について述べられているが、それはともかく、今は現在あるがままを素直に聴き入れて下されば、それで十分ですとのことだった。
 2014 年9月 10 日の第 354 回定期公演、この時の演奏曲目は、フォーレの「ペレアスとメリザンド」組曲、ラヴェルのピアノ協奏曲ト長調 ( ピアノ 辻井伸行 )、同じく「亡き王女のためのパヴァーヌ」、ビゼーの交響曲ハ長調、というフランスの作曲家の音楽だった。これはミンコフスキ氏がこの年の9月から OEK のプリンシパル・ゲスト・コンダクターに就任することもあっての定期公演だったが、残念なことに急病で来日できず、代わって指揮をしたのは、フランス国立ロワール管弦楽団音楽監督のパスカル・ロフェだった。この方は欧州の名だたる管弦楽団の客演指揮を定期的に数多くされており、NHK 交響楽団にも定期的に客演指揮されているとかで、この時は東京と高崎でもツアーが行われたという。
 次にミンコフスキ氏がタクトを振ったのは 2015 年 12 月 10 日 ( 第1夜 ) と翌 11 日 ( 第2夜 ) での第 370 回定期公演、シューマンの交響曲全4曲の演奏、この年の9月にミンコフスキ氏は国立ボルドー歌劇場総支配人兼芸術監督に就任している。演奏曲目は、初日が交響曲第1番変ロ長調「春」作品 38 と交響曲第2番ハ長調 作品61 、2日目は交響曲第3番変ホ長調「ライン」作品 97 と交響曲第4番ニ短調 作品 120 。第1番と第3番は比較的よく聴く曲だが、第2番と第4番は余り聴くことはない。この作品番号は出版順で、実際作曲された年を辿ると、1、4、2、3だという。そしてこれら交響曲を書くきっかけになったのは、シューベルトの交響曲第8番の楽譜を目にし、その演奏をメンデルスゾーンに依頼し、それを聴いて希望に燃えたからだったという。そして最初に第1番を完成させ、初演をメンデルスゾーン指揮のライプチッヒゲヴァントハウス管弦楽団にお願いしたという。春の喜びを表した素晴らしい曲だ。2夜連続での演奏、凄い意欲を感じずにはおられなかったのを覚えている。

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