毎年一度は、家内が勤めているF病院の仲良し有志に私も混じって、近くの温泉へ一泊で出かけることにしている。近くとはいっても大概は何故か湯涌温泉になってしまう。ただ昨年は3月11日に東北太平洋沖地震が起き、何となくそういう雰囲気ではなく、行きそびれてしまった。だが今年は行こうと張り切っていた。メンバーは独身女性二人と子持ち女性とその娘さん、それに家内と私の総勢6名である。この温泉行きに私が口を挟む余地はなく、皆さんに混ぜてもらうという立場にある。ところで今年はたまたま病院に出入りしている男性の方が、私の実家の宿へ来てくれませんかということで、即決で決まったとのこと、宿は湯涌温泉の秀峰閣である。それで家内からこの宿はどうかと言われて、私は新地に出来て2年目に、県にいた前の職場で行ったことがあるのを思い出したが、印象としては良かったという感じが残っていると話した。
予定日は3月31日と4月1日の土日、病院は土曜は午後3時に終わるので、3時半か4時頃に車2台で行こうということになった。ところが家内は食べ合わせなのか、木曜の午前0時頃に、身体全体に蕁麻疹のような痒みが出て、病院へ行って痒み止めの注射をしてもらったものの、一向に良くならず、朝方には不整脈も出て、早朝に病院へ入院する破目になった。点滴でもすれば簡単に本復すると思っていたが、夕方様子を訊くと、最高血圧が70~80とかで、とても退院できないとか。ここへ来て、ひょっとして温泉行きはボツになるのではと思った。でも家内は気を利かし、私は無理だが、後の皆さんは行ってきたらという算段をしてくれた。弱ったのは私で、家内が居てこそ付録の私は気遣いせずに居られるのに、居ないとどうなるのか極めて不安だった。家内では、彼女らは私が居ても一向に差し支えないとか、こうなればもう清水の舞台である。総勢5名なので、私の車でと思っていたが、若い女性が運転するとかで、甘えることにした。病院から2人、私は自宅で拾ってもらい、休みだった子連れ女性を自宅で乗せ、そして湯涌へ向かった。私は全くの手ぶら、家内はお金は主任の方に預けてあるとかで、あんたはただ皆さんと仲良くやっていけるように腐心してもらえばよいと。宿には午後5時少し前に着いた。
部屋は4階の角部屋、大きい部屋と中部屋が二間、ゆったりとしている。食事はこの部屋でとのこと、今日は込み合っていると言われる。食べ物、飲み物、景品等々、沢山の持ち込み、女性の皆さんのお世話である。私は早々にお風呂へ、そして先に上って持参の神の河で早速一献、彼女らはやがて小一時間ばかりのごゆっくりだった。夕食は6時半、早々と部屋にセットされる。白一点、内心心配したが、少々酔って気が和み、何とか溶けこめそうだ。運ばれた料理を見ると、金額の割には中々豪華な感じ、量も食べ尽くせない程だ。家内も彼女らも、ここが実家という男性にちゃんとサービスするように言ったとか、そのせいなのか、品数も多いような気がする。ともあれ女将さんも挨拶に来られ、また料理の質も量も申し分なかった。ついこの前、この温泉の料理を売りにしている宿に泊まったが、料理は細工過剰で、素材が生かされず、高いばかりであれは戴けない。やはり料理は素材が生かされてこそ食欲も沸こうというものだ。その点では満足いくものだった。食後はビンゴやブロック遊びで時を過ごした。お酒も充分戴いて、実に楽しい一晩となった。
翌朝、5時の一番風呂に入り、運転しなくてもよいのにつけ込み、朝酒を戴く。食事は8時、朝も清々しい料理、美味しくゆっくり戴く。10時半に宿を出る。雨が落ちてきた。宿の裏手にある湯涌江戸村へ廻る。懐かしい田舎家の間取り、また農機具等の展示の品々、もう今ではそのほとんどは目にすることは出来ない貴重な財産だ。全部見るのにやがて小一時間、まだ昼には時間があるが、「きよみず」でそばでも食べないかと提案する。もし一杯だったら、その斜め向かいにある「銭がめ」にでもしようか。賛同され、板ヶ谷へ向かう。
「きよみず」は土日は予約しないと入れないことが多いが、この日は珍しく誰も居なかった。この家は清水さん自作の家、彼女らはびっくりしたことだろう。ここの鴨は美味しいのだが、冷凍してあるので、予約でないと無理だとか。そばなら出来るとかで5人前お願いする。それとお酒、青竹の筒に入った燗酒、一合と思ったがもう一合となった。ツマは朝山で採って来たセンナ、カンゾウ、フキノトウ、新鮮で香りが良い。容器はみな青竹、そばは田舎の二八の中太、美味しかったので、小学3年の娘さんも全部平らげてしまった。主人が言うには、もうこの店を閉めようかと思っているとか、ずっと此処に住んでいて、住民票も此処へ移したと言っていたのに。でも町にも家はあると言う。清水さんの信条は「人生万事塞翁が馬」だが、まさか今日が4月1日と知っての発言だったのだろうか。4月中にもう一度訪ねて真意をお聞きしたいものだ。
2012年4月4日水曜日
登録:
投稿 (Atom)